2019年06月10日

奈良女子大学管弦楽団 '19サマーコンサート

日時:2019年6月8日(土) 14:00開演(13:30開場)
場所:奈良女子大学・講堂

曲目:奈良女子高等師範学校校歌 (*)
   シベリウス/フィンランディア
   ドヴォルザーク/「スラヴ舞曲集」より第2番、第10番、第15番
   メンデルスゾーン/交響曲第4番「イタリア」
   (アンコール)メンデルスゾーン/結婚行進曲

合唱:奈良女子大学音楽部 (*)

指揮:木下麻由加(客演)

P6092004
P6092004 posted by (C)fronte360

奈良女子大学創立110周年記念事業関連イベントの一環として開催された演奏会は、大学講堂で立見も出るほどの超満員。 また前回訪れた演奏会では団員の少なさを内心危惧していましたが、新人も20名以上加わったそうで、熱気に満ちた演奏会となりました。

冒頭、音楽部の合唱による現役団員が伴奏をつけた校歌の演奏。 伝統ある女子大らしく柔らかでのびやかな歌声で、格調高さもうまく出ていたように感じました。 校歌っていいのものですね。

団長さんによる挨拶、曲目紹介のあと、仕切り直してシベリウスのフィンランディア。 これがとても素晴らしい演奏でした。 木下さんと奈良女オケは相性が良いのですが、パワフルさには少々弱いところがあるので、巧くまとめてくるのかと思いきや、良い意味で期待を大きく裏切られました。 たっぷりとした冒頭(ここまでは予想どおり)、ティムパニの強打も予想どおりでしたが粘り腰でぐっと引っ張ったのにハッとしました。 続く低弦は3本ながら深くくぐもるような響き、金管管楽器も渋い響きとしてとても立派な演奏。 木下さん、北欧音楽がご専門のとのこと。 時に踏み込んだり、溜めて粘ったり、小技を折り込みながらも、実にスムーズに曲を進めていましたね。 巧い。 オケもまたそれによく応えて、深く沈み込むような低音、木管は朴訥とした響きで割って入るなど、よく耳にする音楽ながら聴きごたえ満点でした。 感動しました。 演奏終了後にブラボーが出たのも納得です。

オケのメンバーチェンジをしてドヴォルザークの「スラヴ舞曲集」。 いずれも朴訥した味わいのある演奏でしたね。 言い方は悪いかもしれませんが、かつてNAXOSのCDで馴染んだ、東欧の田舎オケの雰囲気を感じました。
第2番、たっぷりとして素朴な雰囲気を持ってスタート、木下さんにリードされてとてもバランスよくまとめられていました。 第10番、一番耳馴染みが多い曲かな、でも爽やかさと軽快さを持った演奏。 木下さんがタメをつくったりもしますけれど、臭くならないのが実に魅力的。 よく考えられた演奏だと感心しました。 第15番、軽快ながらもしっとりしてて、木の香りがするような温かみのある演奏で幕としました。 終わってみて、実に素敵な選曲に気づきました。

15分の休憩を挟んでメインのメンデルスゾーンの交響曲「イタリア」。 耳馴染みのある曲ですし、当日朝には偶然バーンスタイン/NYPの演奏を聴いてしまっていて、少々ハードル高めだったので申し訳ないですが、ちょっと雑然とした感じに思ってしまいました。
でもね、第2楽章は秀逸でしたよ。 低弦に芯があって、ヴィオラも奮闘していて、これらがいい味を出していました。 そしてたっぷりと練り込まれた音楽、低弦の縁取りでこの楽章には唸りました。 第3楽章もよかったな。 まずホルンが健闘、やわらかくも張りのある響き、続くフルートもいい味で、じっくりと腰の据わった音楽としていました。 ただ両端楽章はちょっと逸る気持ちが出ていたのかもしれませんね。 ストレートな音楽、といえば聞こえはいいけど、個人的にはもうちょっと練り込みが欲しかったかな・・わっ〜と鳴っていた感じ・・・と、偉そうにすみません。

アンコールは全員が登壇しての結婚行進曲。 ステージ満載となった奏者もさることながら、会場もお馴染みのメロディでヴォルテージが上がって、盛り上がりましたね。 いいお開きとなりました。 皆さんお疲れさまでした。 次回も木下麻由加姉さんの指揮とのこと。 今から楽しみです。


posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月02日

アンサンブル・フリー 第29回演奏会

日時:2019年5月26日(日) 13:30開演(13:00開場)
場所:あましんアルカイックホール

曲目:薮田翔一/歌曲集《小倉百人一首》より「悲歌集」(管弦楽伴奏版、世界初演)*
  (アンコール)薮田翔一/新元号「令和」の由来になった万葉集 梅花の歌 三十二首 序文
   マーラー/交響曲第6番(改訂版)

独唱:藤井玲南(S) *

指揮:浅野亮介

P6012003
P6012003 posted by (C)fronte360

進取の気質に富んだアンサンブル・フリーらしい演奏会。 薮田翔一さんは、Wikipediaによると兵庫県たつの市出身で1983年生、東京音楽大学・大学院にて研鑽を積まれ、世界各国で作品が演奏されている方とのこと。 小倉百人一首の全100首をピアノ伴奏、弦楽四重奏伴奏として作曲されており、今回は作者自らが悲しみに彩られた16首を選んで「悲歌集」とし、世界初演となる管弦楽伴奏版が演奏されました。

有名な小野小町による第1曲目「花の色は うつりにけりな いたずらに・・・」の透明感が高く集中力のある演奏で幕が開きました。 1曲が1分ほどの短い曲こともあってオーケストレーションは幻想的でもあるし、時にダイナミックにも変化していましたが、いかんせん大編成オケなので藤井さんの歌がかき消され気味。 1曲1曲がなかなか沁みてこず、オムニバス的な感じになっていましたけれど、そんな中でも藤井さんはしっかりとしたテクニックの持ち主であることはよく判る落ち着いた歌唱に凛とした魅力を感じました。

後半、パンフレットに書かれた歌詞を見ながら聴くようになり、かき消され気味な歌詞を目で補うことで曲・歌を楽しむ余裕が出てきたようです。 最初からパンフレットを見るべきだったかもしれません(贅沢を言うならばプロンプターで歌詞表示あればまた違った感想になったかもしれません)。 一番心に残った演奏は、点描チックな伴奏が印象的だっだ参議雅経による第15曲目かな。 ピアノ伴奏、弦楽四重奏伴奏とも全く異なる管弦楽伴奏版らしいですが、弦楽四重奏版で改めて聴いてみたくなった曲でありました。

アンコールは、同じく管弦楽伴奏による歌曲。 Wikipedia によると 2019年4月1日、「平成」に次ぐ新元号「令和」発表数時間後に、同名の歌曲を発表し注目を集めている、と書かれた曲の管弦楽伴奏版でしょう。 先の小倉百人一首と同じ作風で、この中の更に一首を歌われたのかと思ったほど違和感ありませんでした。

20分間の休憩を挟んで、マーラーの交響曲第6番。 わざわざ改訂版と書いてありますが、パンフレットには版の違いについての記載はありません。 ただ今回の演奏では、中間楽章を アンダンテ → スケルツォ の順序で演奏していること。 ハンマーの打撃は2回だったこと、これがそれに合致することのようです。 もっとも当方など楽器はおろか譜面も読めないので、知ったかぶりです。

肝心の演奏ですが、オケの若いメンバーの息吹に満ち満ちたアグレッシブな演奏でした。 そして浅野亮介さんの指揮もまた、このオケを始めて聴いた2005年の第5回演奏会(マーラーの交響曲第4番)を彷彿とさせる独特な動きが懐かしかった(最近はそれなりの指揮っぽい動きになったと思っていましたが)。 オーケストラの弦楽器は 13-13-10-11-10 の通常配置。 コントラバス10本、チェロ11本という重量級の編成ではありましたが、意外と重低音が唸るでもなくキレより曲を進めていったような印象。 また、浅野さんの独特な動きが恣意的で煽るようにも見えるのですが、オケは結構冷静で落ち着いて曲を淡々と進めていたようにも感じました。 随分と以前のアンサンブル・フリーの演奏会でやっていましたが、できるだけ浅野さんの指揮を見ないようにして音楽を聴く、そんな昔のことも思い出しながら今回は曲を楽しみました。

第1楽章、キレ良くタイトな響きで曲が進みます。 機械仕掛けの人形のネジがどこか1・2本外れたようなハイテンションな動きの浅野さん、それをものともせずに一糸乱れないオケの巧さに脱帽です。 ただもう少し弦楽器にコクとかタメとか欲しい気もしますが、ここはぐぃぐぃと進む解釈なのでしょう。 ホルンが全般通して巧かったですね。 底鳴りのする見事な存在感を示していました。 あと終結部ではトライアングル4本、4人が立って演奏されていたのが印象に残りました。

第2楽章はアンダンテを演奏、落ち着いたしっとりとした弦アンサンブルに、管楽器のソロが巧く並んで素晴らしかった。 浅野さんもここでは違和感のない動きでしたね。 ただ曲が進むにつれて、スピードは落としてなぞるけれどもぐっと内面より沸き起っているような抑揚感があまり感じられず、年寄りにはチト物足りなかったかな。 でもホルンのソロはここでも滋味ある響きで光ってました。

第3楽章、切れ味鋭いティムパニ、良く揃った低弦による行進。 コントラバス10本、チェロ11本ですが、引き締まっているいるぶん意外と重低音を感じずサクっサクっと進めます。 トンロボーン、チューバもタイトな響きでした。 トリオにうまく入ると伸びやかになって、不安定に感じさせる部分もうまく演出し、集中力を高めての着地。 見事でした。

終楽章、凝縮させたサウンドで疾走、強烈な打音が更に追い打ちをかけて盛り上げます。 一転ホルンのソロがここでも良い味を出してましたね。 急緩をしっかりとつけ、若いメンバーの集中力の高さで乗り越えてゆきます。 爺ぃである当方には、もうちょっとタメを作って欲しいな、と思えなくもありませんが、自信に裏打ちされた音楽なので安心して聴いていられます。 ハンマーは舞台右奥で杭打ち用のハンマーでしょうか、大きかった。 ホルン10本のベルアップも壮観でしたが、4人が立って打つシンバルも迫力ありました。 雄大な音楽として堂々の着地。

浅野さんの腕がまだ下りないうちに拍手が沸き起こりましたが、腕がしばらく上がったままなので拍手は自然消滅。 腕を下ろしてから、パラパラとそして盛大な拍手へと変わってゆきました。 う〜んんん、もうちょっと我慢して欲しかったな、でも焦って拍手したい気持ちもわかる演奏でしたけれど。 とにかく若いメンバー、しかも腕っこきの皆さんによる気持ちのいい演奏会でした。 ちょっと若返った気分。 皆さんお疲れさまでした。



posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月30日

六甲フィルハーモニー管弦楽団 第47回定期演奏会

日時:2019年3月17日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:神戸文化ホール・大ホール

曲目:ドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」
   コダーイ/「孔雀」の主題による変奏曲 *
   ブルックナー/交響曲第3番
(アンコール)ドヴォルザーク/弦楽セレナーデ

指揮:森 康一,高橋茉莉子 *

P3301105
P3301105 posted by (C)fronte360

プログラムに団長さんが書かれている、団内指揮者の指揮のもとで作り上げていく音楽が大事、の言葉どおり指揮者とオケが一体となった意欲的な演奏の数々に感銘を受けました。

とくに今回初めてこのオケの指揮者として登壇された高橋さん、立ち位置をほとんど変えず、動きも腕が主体で曲全体を進めてゆく感じ。 こちらからは見えませんが視線も使って、各パートに指示をあたえているのでしょうね、小気味よい演奏で変奏曲の表情を次々に作ってゆきました。 オケ全体で指揮者を盛り立て、この曲を客席にしっかり届けようとよう、そんな演奏意欲を強く感じた演奏でした。

これに対して森さんの指揮は、指揮台の上で各パートの方を向き、上半身をしなやかに使って曲の表情をつけるもの。 さすがに手慣れた感を覚えますが、それとて指揮者と各パートが一体となって曲を進めて、繋いで、響きを合わせてゆきます。

冒頭の「謝肉祭」序曲、明るい響きを基調に、森さんが各パートに指示を与えながら丁寧にストレートに演奏してゆきました。 フィナーレではギアを上げて覇気を纏った演奏として終了。

ブルックナーの第3番の交響曲。 こちらはとてもよく練られた充実した演奏で、何より美しい演奏にほれぼれとしました。 演奏意欲を感じた素晴らしい演奏に感じ入りました。 練習ではオケ全体で相当話し合われたのかもしれませんね。 なお前曲で指揮されていた高橋さんも第2ヴァイオリン奏者として参加されていました。

第1楽章より堂々とし、かつ美しい演奏に、この曲っていい曲だなぁ、と改めて感じ入りました。 そしてゆったりと呼吸させた第2楽章、抑制のよく効いた金管、落ち着いて充実した弦楽アンサンブルが良かったですね。 回転運動の躍動感が見事だった第3楽章、底力を感じるけれども美しい響きが見事。 中間部での浮遊感もまた素晴らしい演奏でした。 終楽章も勇ましく始まりましたが、パワー一辺倒ではない立体的な演奏としました。 カラフルで何よりここでも美しい演奏に心奪われました。

いずれも指揮者がリードして引っ張ったり、抑え込んだりするのではなく、常に指揮者と各パートが一体になっていて、そして各パート間もまたうまく呼応しあって曲全体を構築し、進めていたのが印象的な演奏会でした。 皆さん素晴らしい演奏を(無料で届けてくださって)ありがとうございます。 そしてお疲れさまでした。


posted by fronte360 at 07:50| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月17日

大阪市民管弦楽団 第89回定期演奏会

日時:2019年3月10日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:J.シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」序曲
   ヒンデミット/組曲「気高き幻想」
   ブラームス(シェーンベルク編曲)/ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番

指揮:藏野雅彦

P3140873
P3140873 posted by (C)fronte360

ヒンデミット、シェーンベルク、意欲的なプログラミングですが、演奏もまた真摯で前向き、とても意欲ある演奏でした。 みなさん聴いたことのない曲だから、ちょっとくらい間違っても、ちょっとくらい手かげんした安全運転の演奏でも・・・なんていう雰囲気は無かったですね。 藏野さんの的確で解りやすい棒によるコントロールが何よりだったと思いますけれど、どの場面でも全力で曲に向き合っていたオーケストラを讃えたいと思いました。

冒頭の「こうもり」序曲、藏野さんのハナ息とともに勢いよく始まりましたが、やわらかなオーボエや弦アンサンブル、たっぷりとさせて優雅に進めてゆきます。 手慣れた藏野さんの棒、抑制かけて軽く抑揚かけて歌わせますが臭くならず、勢い増しても力まずと、琥珀色のアンサンブルを堪能しました。

ヒンデミットの組曲「気高き幻想」、重層的なアンサンブルで始まった「導入部とロンド」。 コントラバスの響きをベースに、第2ヴァイオリンとヴィオラが中核を占めていました。 フルートの落ち着きのある音色も素晴らしいものでした。
「行進曲とパストラール」では、ピッコロの愛らしい響きで始まりました。 ここでも重層的に響かせた弦アンサンブル。 音量を増しても力みなく音圧を感じる落ち着いた響き。 また緊張感を高めてもヒステリックならない。 たっぷりとそしてしっとりとさせた美しい音楽でした。 終曲の「パッサカリア」は音圧を感じさせた低音金管楽器もまた全体に見事に調和していました。 いろいろな楽器が絡んでゆきましたが、藏野さんの見事な交通整理で形式的になることなく、分かりやすく客席に音楽を届けてくださいました。 それに見事に応えたオケ、響きを十分に内包させての充実したフィナーレでした。

20分間の休憩を挟んで、シェーンベルク編曲によるブラームスのピアノ四重奏曲第1番の管弦楽版。 原曲もどのような曲が思い出せないので、シェーンベルク編曲というよりシェーンベルクそのものの音楽を楽しんだ気分。 特に第2・4楽章は打楽器による多彩な響きが完全にブラームスを超越した感じでしたね。 しかしどの楽章でも、上手なソロのメロディも出てきますが、特定の楽器が突出するようなことはありません。 音色が統一され、相当練習を積まれたことでしょう。
腰の座ったサウンドで始まった第1楽章、マッチョな音楽でムキムキのブラームスだったでしょうか。 第2楽章は立体的なサウンド、オーボエが巧かったですね。 あと第2ヴァイオリンも奮闘していました。 粘り強い響きの行進曲とした第3楽章華やかながらも重層的なサウンドを楽しみました。 終楽章はカラフルなアメリカンサウンドだったでしょうか、ノリよくギアを一段上げてのフィニッシュとなりました。
いずれも真摯で覇気を感じる演奏に大きな拍手を送りました。 オケの皆さんもやりきった感のある表情も垣間見えました。

アンコールはお馴染みのハンガリー舞曲。 堂々とした凱旋行進曲のような気分になった演奏でお開き。 充実した演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。





posted by fronte360 at 06:57| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月10日

紫苑交響楽団 第33回定期演奏会

日時:2019年3月3日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:いたみホール(伊丹市立文化会館)・大ホール

曲目:シベリウス/交響詩「フィンランディア」
   シベリウス/交響詩「トゥオネラの白鳥」
   チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」
   シベリウス/交響曲第2番
(アンコール)シベリウス/悲しきワルツ

指揮:牧村邦彦

P3080708
P3080708 posted by (C)fronte360

牧村さんの指揮は多くを語りませんが、要所をしっかりと抑えたリード。 それにオケがしっかりと応え、立体感のある演奏はいずれも覇気に満ち、堂々とした演奏内容に脱帽です。

冒頭の「フィンランディア」、底力のある響きをたっぷりと鳴らして、最初からこんな全開で大丈夫かいな、と余計な心配をさせるほどの迫力満点の演奏。 パワフルなだけでなくオーケストラ全体の響きが琥珀色に輝いているみたい。 耳に馴染んだ曲ですが、見事なオーケストラ・サウンドに聞き惚れました。

「トゥオネラの白鳥」は透明感の高い演奏で、オペラ指揮者の牧村さんの本領発揮でしょうか、物語を知らない人でも白鳥の情景が目に浮かぶよう。 先の曲とは一転、沈んだ表現、透明感の高いやわらかな響き、コールアングレを始めとしてオケの巧さも際立っていました。

「くるみ割り人形」は組曲の8曲を演奏。 スタイリッシュな牧村さんの棒のもと、いずれの曲も特徴をうまく出していて飽きさせません。 最後の「花のワルツ」は華やかさを抑えてしっとり感を出したたっぷりとした演奏が上品でした。 どの曲も華やかだけど落ち着いていて、還暦を迎えた牧村さんの年輪が出ていた、のでしょうか(たしか同い年)。

休憩を挟んでメインの交響曲第2番。 密度の濃い演奏でした。
響きのすき間をきちんと埋めて歌い繋いでいった第1楽章、明るい響きながら密度の濃い演奏に曳き込まれました。 第2楽章では今度は間合いをしっかりととりつつも歌いつないでゆく。 キレの良さもあり、立体的でドラマティックでもありました。 張りのある弦アンサンブルに木管のアンサンブルも響きが絡み合って素敵だった第3楽章より、ゆったりと繋いだ終楽章、雄大な情景が目に浮かびました。 抜けるトランペット、パワフルなホルンやトロンボーンが目立ちすぎることなく、これらを背景にたっぷりとした弦アンサンブルが充実。 ここでも立体感のある演奏に心奪われました。 牧村さんの要所をしっかりと抑えたリードに見事に応えたオーケストラ、全員一丸となった熱い演奏でした。 これほどまでに熱くしかもクールでカッコ良い演奏に出会うとは思ってみませんでした。 うーんん、巧かった。

アンコールは、牧村さんのリードで今度は情感たっぷりな悲しきワルツ。 先ほどまでの真正面から真摯に曲に対峙した演奏とは一味違った感じですね。 さすが関西人、サービス精神も感じて、どっぷりと音楽に浸かった演奏会。 満足しました。 皆さんお疲れさまでした。

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月24日

オーケストラ・ソノリテ 第36回定期演奏会

日時:2019年2月17日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:あましんアルカイックホール

曲目:シューベルト/「ロザムンデ」序曲
   シベリウス/交響曲第7番
   ブラームス/交響曲第1番
(アンコール)モーツァルト/ディヴェルティメント K.138 第2楽章

指揮:白谷 隆

P2170443
P2170443 posted by (C)fronte360

白谷さんのしっかりとした指揮に導かれ、いずれの曲も真正面から作品に対峙した演奏で聴き応えありました。 白谷さんが振られた第31回定期演奏会の感想文に「オーソドックスに曲に向き合ってオーケストラを美しく響かせる演奏に徹していたように感じました」と書いていましたが、今回これに加えて押し出しの強さみたいなものも増したように感じました。 各曲の曲想をうまく描きながらも終始オーケストラ全体を鳴らしていたのが印象に残りました。

そのオケの鳴らし方ですが、オーケストラ全体を等価に鳴らしているように感じました。 白谷さんはホルン奏者でもあって、オーケストラの最上段よりオーケストラ全体を俯瞰されていたからかな、などと勝手に思ったりもしていますが、ソロの旋律を奏でる楽器を際立たせることや、あるパートに力を入れて特に強調させるようなことは無く、淡々と振っていらっしゃいます。 弦楽アンサンブルも、低弦の上に中音弦乗せて更に高音弦を歌わせる(弦楽奏者出身の指揮者に多いように思いますが)のではなく、低弦・中音弦・高音弦が掛け合いをやっているような感じかな(うまく言えませんが)。 常にオーケストラ全体を統率して均等に鳴らしているって感じでしょうか。

これが一番巧くはまっていたのがシベリウスの交響曲第7番と思います。 ちょっと難解で、緻密な音のパッチワークのような曲ですが、きちんと仕切って分かりやすく届けて下さいました。 常に落ち着いた打音のティムパニ、低音金管楽器の渋い響きも全面に出るのではなく全体を彩り、弦のアンサンブルは少々熱っぽくもまたウォーミーな響きでした。 分かりやすく整理した音楽を届けて下さいました。 そして神秘的で厳かなフィニッシュもたっぷりとさせて感動的でした。 ただ、観客席からの拍手がちょっと早かったかな・・・もうちょっと余韻に浸りたかったけれど・・・難しい曲だから、ここで曲が終わったのを知ってるぞ、とばかりの拍手と感じました。

観客席が一番沸いたは、やはりメインのブラームスの交響曲第1番。 一見淡々と曲を進めていました。 第1楽章終結部のホルンを強奏させたり、第2楽章も美しいソロ・ヴァイオリンでしたが、さえも特に際立たせることはありません。 常にオーケストラ全体で包み込むようにして、オケ全体が押し寄せてくる感じ。 終楽章のトロンボーンの厳かな響き、トランペットも突き抜けるのではなく全体の響きの中にうまく溶け込んでいました。 自然な高揚感に満ちていて、またキビキビとした運動性を感じさせた演奏は覇気に満ちていました。 これが客席を刺激したのではないかな。 各ソロもよかったけど全体の勝利みたいな感じ。

ロザムンデ序曲は、シューベルトの歌謡性を交えてキビキビと曲を進めていました。 颯爽として若々しい感じでしたね。 こちらも金管の響きをうまく散りばめたブレンドされたオーケストラ全体の若々しい響きが印象に残りました。

真正面から作品に対峙した演奏はいずれも聴き応えあって満足して会場を後にしました。



posted by fronte360 at 06:32| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月16日

Ensemble Enchantee 〜ルネサンスからバロックへ〜

日時:2019年2月10日(日) 16:00開演(15:30開場)
場所:LA FLUTE ENCHANTEE (ラ フルート アンシャンテ)

曲目:T.スザート/戦いのパヴァーヌ
   G.チーマ/3声によるソナタ
   M.ウッチリーニ/ベルガマスカ
   R.カー/イタリア風グラウンドによるディヴィジョン
   G.チーマ/2声のソナタ
   M.プレトリウス/テレプシコーレより
    (休憩)
   S.ロッシ/3声のシンフォニアより
   G.フォンタナ/ソナタ 2番
   G.ガブリエリ/カンツォン 1番
   J.リュリ/マレのガヴォット
   G.ベルトーリ/ソナタ 1番
   A.ホルボーン/組曲

演奏:ヴァイオリン:三田 哲、椎 健太郎
   リコーダー :柳澤哲哉
   ツィンク  :池田有加、西崎允子
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:田渕陽介
   ドルツィアン:二口晴一
   リュート  :鈴木明彦
   <賛助出演>
   チェンバロ :中田聖子

P2160442
P2160442 posted by (C)fronte360

アマチュアとプロ奏者による古楽器アンサンブルの初めての演奏会。 会場は六甲アイランドにある楽器屋さん(アンティークフルート屋さん)のサロン、天井がとても高く、深い響きに包まれてルネサンスから前期バロック音楽を体験できた貴重な演奏会でした。

配布されたプログラムの曲目は順不同、1曲毎にお話しされる曲をメモって上述のように並べ替えました。 しかし、どの曲を聴いても、どこから聴いても同じように聴こえてしまう・・・時おり楽器間での掛け合いはあるけれど、ユニゾンで色々な楽器が同じ旋律を演奏するのがほとんどなので、バッハやヴィヴァルディなどのバロック音楽に馴染んでいると道に迷った気分でしょうか(同行者はそうだったようです、当方も似たり寄ったりでしたが)。
でも1曲毎に編成を変えて演奏される曲はいずれもしっかりとした通奏低音に乗って、さまざまな表情も見せていました。

第1曲目は全員での演奏、片張り太鼓も交えてスザートの「戦いのパヴァーヌ」。 多分、今回の演目のなかで唯一録音を持っている曲。 冒頭こそ手探り状態かな〜ってな印象を持ちましたがしだいにこなれて(当方の耳が慣れてきたのかも)にぎにぎしい演奏として幕を開けました。
2曲目、チーマの「3声によるソナタ」は、ヴァイオリンとツィンクによるソロのかけあいに通奏低音(ガンバ、リュート、ドルツィアン、チェンバロ)が絡んで真摯な表情での演奏。 ツィンクにとっては少々難しい曲だったのかな。 緊張感も感じた真剣な響きでした。
3曲目、ウッチリーニの「ベルガマスカ」は、ヴァイオリン2本とガンバ、リュート、チェンバロによる編成。 リュートによる開始より、通奏低音に乗せた優雅なヴァイオリンのアンサンブルを楽しみました。
4曲目、カーの「イタリア風グラウンドによるディヴィジョン」、リコーダーとヴァイオリン、ガンバ、チェンバロによる編成、ゆったりとやわらかなリコーダーでしたね。 カーは英国人だそうで、曲を聴いていると「パーセニア」に似ている印象も持ちました。
5曲目、チーマの「2声のソナタ」、リコーダーとガンバ、チェンバロによる演奏、リコーダの軽やかで艶やかな響きとガンバの暖かな響きがよくマッチしていました。
6曲目、プレトリウスの「テレプシコーレ」、チェンバロを除く全員による演奏。 平易な旋律をユニゾン(ホモフォニー?)で進める多彩な響き、後半2曲はスピードアップして熱っぽく前半プログラムを締めました。

20分間の休憩を挟んで後半1曲目はロッシの「3声のシンフォニア」より2曲、ツィンク2本とガンバによる演奏。 柔らかなガンバの上で、華やかなツィンク2本の掛け合いを楽しみました。
後半2曲目、フォンタナの「ソナタ 2番」はヴァイオリン・ソナタ、ガンバとチェンバロが支えます。 伸びやかな響きのヴァイオリン、後半技巧的なフレーズも交え、華やかでとても聴きやすい、というか耳に馴染みやすい曲でした。
後半3曲目、ガブリエリの「カンツォン 1番」、チェンバロを含まない合奏(ただしツィンク1本)ですが、各楽器間での旋律の絡みがなくユニゾン(ホモフォニー?)で進みます(絡んでいたかもしれませんが聞き取れない?)。 リードはリコーダーでしょうが、中央に座ったガンバが全体の演奏の芯になっていた印象を持ちました。
後半4曲目、リュリの「マレのガヴォット」は、ドルツィアンとガンバによる演奏、深い響きのドルツィアンにしみじみと感じ入りました。 ファゴットの原型の楽器ですが、素朴で深い音色に感銘です。
後半5曲目のベルトーリの「ソナタ 1番」もドルツィアンとリュートに加えてカスタネット(タンバリン持ち替え)も参加して、落ち着いた演奏が展開されました。 静かにコツ、コツ・・と間をおいて打つカスタネット、見るからに赤と青の児童用なのに何とも言えない響きの間に感じりました。 もちろんドルツィアンは静かで落ち着いた響き、懐かしさを感じさせるリュートが絡んで素敵でした。
最後の曲は、全員が集まってホルボーンの「組曲」より6曲が演奏、いずれも華やかさの中に真摯な響き、2曲目のツィンクの晴れやかさ、5曲目で明るくノリの良いリズムでは当方も自然と足でリズムをとって楽しく聴かせてもらいました。 そして最後は技巧的で一段と華やかな演奏となって締めました。

リュートとチェンバロはプロ奏者、ガンバとドルツィアンはプロ奏者の方が古楽器を演奏されていたそうです。 でもプロだから、アマだからというよりも、全員が役割を担って真摯に伝えようと演奏されている姿が何より良かったですね。 またヴァイオリンには現代のにはあるあご当てはもちろんなく、肩甲骨あたりに押し付けての演奏。 また弓も湾曲した古楽器のものでした。 当方が学生時代の頃の古楽器演奏では、弓は現代のものを使っている方をよく見かけたものですが、古楽器がより身近になったのでしょうね。 とにかく普段あまり耳にすることのないルネッサンスや初期バロック音楽を紹介し、また新たな魅力を吹き込んでくださることを期待して会場を後にしました。 


posted by fronte360 at 09:08| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする