最近の記事

2019年12月22日

第26回「天理の第九」演奏会

日時:2019年12月15日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館・やまのべホール

曲目:第1部
    フォーレ/ラシーヌ讃歌
    モリコーネ/Nella Fantasia
    ストゥループ/Homeland
   第2部
    ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」
    (アンコール)蛍の光

独唱:内藤里美(S)、堀内優子(Ms)、柏原保典(T)、松岡剛宏(Br)

合唱:天理第九合唱団
管弦楽:天理シティオーケストラ

指揮:河ア 聡(第1部)、安野英之(第2部)

PC221270
PC221270 posted by (C)fronte360

天理の年末の風物詩といっても過言ではない「天理の第九」演奏会も、天理市の財政見直しにともない、今年度より天理市やライオンズクラブからの補助金がなくなって自主運営となったとのこと。 それでも、天理市長が挨拶をし合唱団にも加わり、ライオンズクラブの皆さんも受付や誘導などの対応をされており、みんなで盛り上げていこう、そんな姿勢は全く変わらない演奏会でした。 そして肝心の演奏も、自主運営となって良い演奏で盛り上げいこう、そんな団員さんの想いでしょうか、例年よりもさらにストイックな感じがし、気持ちが前向きに出ていたように感じました。 もちろん天理小学校や二階堂高校の学生も加わった合唱団も、世代を超えて一体となった熱い歌声がホールに響き渡っていました。 いい演奏会でした。

やまのべホールに到着。 いつもならばホール入口の横に受付があり、そこで座席指定を受け、しかも右側か左側か、座席はホールの前か後か、細かく振り分けて座席指定を受けていましたが、今回は前売り指定席以外は自由席でした。 他の演奏会と同じく受付でパンフレットを頂いて即入場となりました。 アンコール曲「蛍の光」で手に持って振っていたルミカライトの配布はなし。 アレっと思いましたが、パンフレットを読んで納得です。 今年から天理市やライオンズクラブからの補助金がなくなり、演奏会が自主運営となったとのことでした。 そういえば、昨年そのようなことが書かれていたのも思い出しました。

前半のプログラムは、天理第九合唱団を指導されている河崎さんの指揮によりフォーレの「ラシーヌ讃歌」、エンリオ・モリコーネの「Nella Fantasia」、ストゥループの「Homeland」が続けて演奏されました。 「ラシーヌ賛歌」以外は初めて聴く曲と思いますが、いずれの懐かしい感じのする曲でしたね。 指揮棒を持たない河崎さん、やわらかく丁寧に曲を進めて、落ち着いた男声と暖かな女声が交錯し響きあって素敵な時間となりました。
「ラシーヌ讃歌」では低弦の響きが基調となり、この上にヴィオラがうまく乗って合唱を支え包み込むようでもありました。
「Nella Fantasia」でも豊かに響く弦アンサンブルが好調でしたが、オブリガート風に吹いていたオーボエの凛とした響きと男声がとっても素敵でした。
「Homeland」は金管ファンファーレが落ち着いていながらも明るく晴れやか、合唱もまたうまく力が抜けていて郷愁を誘います。 アカペラのあと、金管も含めた全奏となっても上品さを損なわない演奏で全体を締めました。

20分間の休憩のあとメインの第九。 コンマス席にはミストレスの相原さんが今年も座り、セカンド・トップに栄島さん、ビオラ・トップには上田さんという布陣は昨年と同じ。 この布陣、落ち着いて進められる相原さんに対し、栄嶋さんと上田さんのコンビがアグレッシブに弾かれて、弦楽器編成は小型の 8-7-6-6-5 の対抗配置ですが、中音弦の厚みがぐっと増して聴きごたえ十分。 けっこう気に入ってます。 合唱団には制服を着た天理小学校と二階堂高校の学生も加わり、男声を凹型に囲むように女声が布陣していました。

第1楽章、集中力の高い開始、キリッとした表情で始まりました。 安野さんらしく手堅く曲を進めますが、フレーズをやや短かめに切ってタイトな音楽造りだったようですね。 栄嶋さんと上田さんのコンビでザクザクと切り込んでいったのが印象に残りました。
第2楽章もまたストイックでしたね。 ティムパニの強烈な打音、迫力ありました。 弦楽器、冷たい響きだと「時計仕掛けのオレンジ」になるのでしょうが、底光りのする熱い音楽でした。
第3楽章の前に独唱者とパーカッションが入場。 全員揃いました。 ここは豊かな響きの弦楽器としっとりとした管楽器が寄り添う有機的なアンサンブル。 とくに第1ヴァイオリンが雄弁でしたね。 存分に楽しみました。
終楽章、タイトな開始のあと、深くえぐるような低弦の響き。 安野さん、重厚な響きをスパスパっと切り捨てるかのように進めます。 ストイックな音楽が全開。 オケも気合入れて前に前にと進めてゆく感じかな。 独唱ではバリトン、声量もあって豊かな響きがが素晴らしかったですね。
力強い響きの合唱団、学生さんの声が混ざり合って多彩で立体的な響きなんですが、例年以上に纏まっていたかなぁ、昨年など「パワー一辺倒ではない素晴しい合唱を」などと書きましたが、今年はさらにパワーアップして奥行きがある合唱を堪能しました。
フィナーレ、ピッコロやトランペットなどが突き抜けてくる華麗な響きは例年どおりで熱くなります。 ピッコロは今年も艶やかでいい音色でしたね。 そして合唱とオーケストラが一丸となった圧巻の演奏での幕切れ。 今年は例年より真摯で前向きな演奏であったように感じました。

今年は緑色のルミカライトを振りながら歌う「蛍の光」ではなく、ちょっと手持無沙汰な感じもしましたが、「蛍の光」を歌ってのお開き。 今年も素晴らしい演奏会にお招きいただき、有難うございました。


posted by fronte360 at 08:55| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月13日

枚方フィルハーモニー管弦楽団 第90回定期演奏会

日時:2019年12月8日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:寝屋川市立市民会館

曲目:シベリウス/交響詩「フィンランディア」(*)
   伊福部昭/SF交響ファンタジー第1番 (*)
   チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
(アンコール)チャイコフスキー/「くるみ割り人形」より

指揮:生島 靖(*)、寺坂隆夫

PC131269
PC131269 posted by (C)fronte360

 伊福部昭のSF交響ファンタジー第1番、渋い枚フィル・サウンドによくマッチしていて秀逸でした。 きっと演奏者の方々の思い入れもたっぷりと入っていたこともあるでしょう。

 かくいう当方も東宝ゴジラ「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964年)「モスラ対ゴジラ」(1964年)は、小学校1年生だったのでドンピシャ。 夏の夜、近所の公園にスクリーン立てた上映会でこれら2作を観たのは小学4〜5年生頃だったでしょうか。 その後、テレビでの再放送、子どもが生まれてからはレンタルビデオで子どものためと称して借りて自分が一番楽しんで観ていたのも懐かしい思い出です。

 そんなバイアスがいっぱいかかっている曲ではありますが、枚フィルの野太いサウンドが土俗的な伊福部昭らしくもあり、また同年代の指揮者・生島さんのもとで腰の据わった演奏、要所で力を込めるポイントなどとても納得度の高いものでした。 銅鑼を短く切ってふん詰まりのようにした強烈な打音(奏者のおじさんも同年代でしょうね、出番でないときも小さく手を動かして演奏を楽しんでおられた様子)、そして古い日本映画っぽくミュートトランペットのザラつかせた響きなどなど、もう感涙もの。 そしてフィナーレにかけて推進力のあるノリの良い音楽に身をただただ委ねて楽しませてもらいました。

 冒頭のフィンランディアもまた冒頭の重厚なサウンドが印象的でした。 弦楽アンサンブルがよくまとまっていましたね。 中間部の賛歌は明るく元気、晴れやかな感じでしたが、少々熱気冷めやらぬ、といった感じもしましたね。 そしてフィナーレは盛り上がりましたが、シンバルが控えめに打っていて上品な仕上げに好感が持てました。

 15分の休憩を挟み、指揮者が寺坂さんに交代してのチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。 寺坂さんらしい、楷書できちんと描かれた演奏でした。 2回ほど、ん? 音が減って止まりそうに思えた場面もありましたが、寺坂さん(見た目には)沈着冷静、オケを的確に纏めて乗り切って ONE TEAM でしたね。

 冒頭、ファゴットの深く渋い響きが素晴らしく、見てみると先ほどまで指揮されていた生島さんでしたね。 じっくりと惹きつけた演奏で、ヴィオラもつや消しのいい響きでしたよ。 寺坂さん、全体のバランスを常に配慮しつつ的確に曲を進めてゆきました。 第2楽章、少々大づかみな感じがしたワルツでしたが、ここでも寺坂さんが腰を落として集中力高めて乗り切り、最後は左腕を回してのフィニッシュを決めました。 第3楽章、徐々に盛り上げてゆきますが、奇をてらわず淡々と要所を決めてゆく着実な演奏。 アッチェランドかけず迫力よりもまとまり感を重視しておられたようです。 危惧していた拍手は起きず、終楽章へと突入。 寺坂さん、膝を使ってふわっとした開始、やや音量が大きかったかな。 生島さんのファゴット、ここにもいい感じでしたね。 悲しみにも句読点をしっかりとつけ、きっちりと進めてゆくのが寺坂流。 正直、この悲愴交響曲って好きじゃないのですよね。 ほとんど聴かないのですけれども、こうしてきちんと説明されると、曲の良さも判るようような気がするから不思議です。 そして落ち着いての着地。 会場より大きな拍手が沸き起こりました。 (個人的にはSF交響ファンタジーでもこのくらいの拍手が欲しかったなぁ)。

 久しぶりの枚方フィルの演奏会、初めての寝屋川市民会館でしたが(2階席だと傾斜が急でステージがけっこう遠く見えるのですね)、枚フィルらしく自分たちの音楽を一所懸命演奏されているの楽しませて頂きました。 皆さんお疲れさまでした、そして有難うございました。


posted by fronte360 at 19:07| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月14日

カンマーフィルフィルハーモニー神戸 第8回定期演奏会

日時:2019年11月10日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:神戸新聞・松方ホール

曲目:モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
   ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15
   (アンコール)ベートヴェン/ピアノソナタ「かっこう」より第3楽章
   ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調 op.60
   (モーツァルト/5つのコントルダンス K.609より第1番」

独奏:法貴彩子(p)

指揮:花崎 薫

PB110497
PB110497 posted by (C)fronte360

規模を求めるのではなく、2管編成のコンパクトな編成でモダン楽器を使用しながら、音楽が作曲された時点の精神に立ち返って、その感動、瑞々しさを表現する。 とプログラムに書かれたとおり、覇気ある演奏の数々でした。 小編成(弦楽器は 7-6-5-4-3 の対向配置)ながらパワフルなサウンドは、前回聴いた第3回定期演奏会と同様、筋を通して頑張っておられるようです。 そして第3回の時と同じくバロック・ティムパニを使用、そして前2曲ではナチュラル・トランペットを用いていました。 まれに他のオケでもナチュラル・トランペットを使っていた例もありましたが、とってつけたように感じることもありますが、このオケでの使用は慣れているのでしょうね、効果的だったと思いました(フィガロの結婚序曲のフィナーレ部分など)。

そのフィガロの結婚序曲、小気味いい演奏でしたね。 快速テンポ、打点を明確にし、大き目の音量でサクサクと進めてゆきました。 どこか即物的な感じもした演奏でした。

そしてペートーヴェンのピアノ協奏曲第1番。 ソリストとして登場された法貴彩子さん、柔らかなトーンながら深い音色としっかりと強い打鍵を駆使、明瞭で明晰な音楽造りに魅了されました。
そして何といっても第1楽章のカデンツァ。 宮尾幹成さんの作品とプログラムにありましたが、ダイナミックな音楽と静かな音楽が交差、静かな音楽の中にどこかで耳にしたフレーズがちりばめられているなぁ、と思って聴いていましたが・・・聴き進むと「今日もいい天気♪」と歌われてピンときました。 サザエさんのテーマ曲だったのですね、ベートーヴェンとサザエさんの邂逅ですか。 現代作品の世界・日本初演も複数手掛けておられるとプログラムに書かれてましたので、その延長線でしょうか、善し悪し・好き嫌いの判断は置きますが、チャレンジ精神は買っておきたいと思います。

15分の休憩を挟んでメインはベートーヴェンの交響曲第4番。 重厚なサウンドは、いかにもベートーヴェン、といった趣き。 曖昧さ感じさせない剛直と言って良いサウンド。 弦アンサンブルにおけるチェロとコントラバスが一体となって芯を形成していたからで、これは指揮者の花崎さんがチェロ奏者によるところが大きいように思いました。 その花崎さんの指揮は、指揮棒を持たない両腕を上下に動かして打点を明確し、淡々と曲を進めてゆくスタイル。 決して煽ったり、タメをつくって抑揚をつけることもあまりなく、曲をリードしてゆきます。
そして弦アンサンブルと呼応する木管、クラリネットやフルートなど美しい音色ながら硬めで端正なサウンドで、オケの響きが統一されていますね。 終始、短いストロークで軽快に叩き出すティムパニとも相まって、ソリッドで小気味よい音楽造りとしていました。 終楽章のフィナーレこそ花崎さんの左腕がくるりと回って若干の抑揚を付けたあと、力強いサウンドで着地を決めました。 正攻法、正面突破といった感じのベートーヴェンでした。

現代に生きる新しい古典演奏することを目的に立ち上げられたアンサンブルらしい音楽でした。 ただ個人的には終始大きな音量で畳みかけてこられる感じで少々疲れました。 強弱が f〜p というよりも ff〜mp で音楽が常に推移していったような印象で、もう少々音量絞って、縦線揃えるストレートな音楽だけでなく、横線を絡ませて繊細なディールも味わいたかったなぁ、というのが正直なところ(エラそうにすみません)。 でも決して下手な演奏ではなかったですよ。 まさに先のカデンツァと同様でした。 とにかくご招待いただき有り難うございました。 そして皆さんお疲れさまでした。

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

アンサンブル・フリー 第30回演奏会 WEST & EAST合同演奏会

日時:2019年10月27日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:京都コンサートホール・大ホール

曲目:R.シュトラウス/祝典前奏曲 - WEST -
   バルトーク/「中国の不思議な役人」組曲 - EAST -
   R.シュトラウス/アルプス交響曲 - WEST & EAST合同 -

指揮:浅野亮介

PA280436
PA280436 posted by (C)fronte360

総勢100名近いメンバーがステージを埋め、心をひとつに曲に取り組まれた演奏は凄まじいまでの迫力と繊細なディティールに縁どられた印象的な演奏会となりました。 そして勿体ないのは、いつもと言っては失礼かもしれませんが、座席の3分の1ほどしか埋まっていないこと。 勿体ないなぁ、と思いつつも贅沢な時間を過ごすことができました。

いずれも20世紀前半の大曲、コントラバスが9本(アルプス交響曲では12本)ものコントラバスが並び、
祝典前奏曲ではクワイア席に12本ものトランペットの別動隊を配し、エンディングではステージ上の10本のトランペットと10本のホルンとともに奏する豪華絢爛たる演奏。

その祝典前奏曲、浅野さんが右手を選手宣誓のように上げると、パイプオルガンの独奏によって開幕。 オケも加わっての演奏は、明るい雰囲気でまさに祝典気分なのですが、単に派手なだけじゃなくヴァイオリンに粘りもあります。 R.シュトラウスらしい色気も感じさせる堂々たる演奏を楽しみました。 そしてエンディングに近づくにつれて金管ファンファーレ、オルガンも絡んで、血沸き肉躍りました。 大団円・大音響でのフィニッシュは感動ものでしたが、浅野さんの動きがぎこちなく途中で止まるのでは、と思ったのはご愛敬。

バルトークの「中国の不思議な役人」組曲、アンサンブル・フリー EAST での演奏と書かれていますが、WEST のメンバーも参加されての演奏だったでしょう(弦の編成は先と同じく 15-14-12-10-9 の通常配置)。 腰のある弦のサウンドによる開始より、緊迫感をともなった弦サンサンブルの迫力、その合間に聴かせるクラリネットやオーボエのソロなど管楽器のソロも巧くこの大オーケストラでありながら全体に溶け込んでの一体感。 圧倒されそうでした。 事前に詳細に書かれたプログラムを読んでいましたが、途中で迷子になったので、あとはただただ届けられるサウンドに身を任せておりました。 呼応する弦楽器、割って入る金管、打楽器。 乱れ打ちみたいでありながらもバルトークらしい緊迫感できちんとコントールされたエンディング。 心意気の通じ合うメンバーだからこそ出来る音楽と感じました。

20分の休憩を挟んでのアルプス交響曲は合同演奏、ざっと弦楽器を数えると 18-18-14-10-12 の編成。 ステージ上は人でいっぱいです。 落ち着いた響きの開始、厳かで低音金管楽器へと引き継がれ、この曲も素晴らしい演奏になるな、との予感。 徐々に光が射し、たっぷりとして雄大な響きへと変わってゆきました。 低弦の引き締まった腰の据わったサウンドで山登りが始まります。 たっぷりとした呼吸で、バンダのホルンも遠近感を巧く出して見事でした。 オケ全体のバランスがいいですね。 行ったことはありませんが、アルプスの光景を感じ、空気も感じるような感じ。 自宅のステレオやヘッドフォンでは決して耳にすることの出来ない演奏が展開されてゆきました。 幸せな時間。 雄大さが徐々に頂点へと向かいます。 しっかりとした構成感、豊穣な響きと抑制された表現ながら音圧さえ感じさせたトロンボーンや艶やかなヴァイオリン。 見事でした。

オルガンの低音とティムパニと大太鼓が絡んできて嵐の予兆、 丁寧に音楽を進めて嵐へと突入。 集中力高く緊迫感の伴う嵐。 迫力ありました。 パイプオルガンの左右のパイプを間にある板壁と思っていたら、飛行機のフラップを縦にしたような構造で開け閉めされるのですね(初めて見ました)。 まるでオルガンが息をしているようなで面白かった。 ウィンドマシーンやサンダーマシーンも面白いけれど、パイプオルガンはまるで生き物(巨神兵?)のようにも思えました。

嵐が過ぎ、夜になると美しい音楽。 トランペットの艶やかな響き、落ち着いた4本のフルート、そしてオルガンの美しい響き、ホルン4本がワーグナーチューバに持ち替えて夜はさらに暗く、そして何より懐かしさを孕んだ美しい弦のアンサンブルで、たっぷりとして厳かな気持ちにさせた終結。 静寂がホールを包み込み、浅野さんの細く長い腕がしっかりと下におりても静寂は続きました。 そしてパラパラとした拍手から盛大な拍手へと変わりました。 この辺りのタメも見事。 感動的な幕切れでした。

カーテンコール、演奏者の方が指名されて立ち、拍手を受けますが、オーケストラの中からも笑顔を伴った盛大な拍手が贈られていて、皆さんそれぞれに会心の演奏だったのでしょうね。 素晴らしい演奏会に立ち会わせていただきました。 ありがとうございました。


posted by fronte360 at 08:00| Comment(1) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月05日

大阪市民管弦楽団 第90回定期演奏会

日時:2019年9月23日(月・祝) 15:00開演(14:00開場)
場所:豊中市立文化芸術センター

曲目:モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
   ビゼー/歌劇「カルメン」第1組曲・第2組曲
   プロコフィエフ/交響曲第5番
   (アンコール)L.アンダーソン/セレナータ

指揮:中井章徳

PA053022
PA053022 posted by (C)fronte360

いつものシンフォニーホールを出て、新しい豊中市立文化芸術センターでの演奏会。 いつもよりも芳醇な響きに思えたのは気のせいでしょうか。 カラフルなカルメン、パワフルなプロコフィエフ。 ともにしっかりとよく纏まった演奏ながらスケールの大きさも感じさせる出来に大いに満足しました。

2D-28、2階席中央でオーケストラを俯瞰できる良い席を引き換えていただきました。 オケの弦の編成は、通常配置で 13-10-9-9-6 だったでしょうか。 自由入場でオケの皆さんが練習を始めると嫌が上でも期待が高まりますね。

冒頭はモーツァルトの「魔笛」序曲、弦の分奏をしっかりと決めた恰幅の良い演奏。 ドンを響くティムパニをアクセントにした開始より、覇気を持って曲を進めてゆきました。 ファンファーレも明るめの響きでしっかりと決め、低弦のよく鳴る弦のアンサンブル。 管楽器との呼応もよかったですね。 そしてティムパニをドコドコと響かせ、弾力のあるサウンドで締めました。 上々の滑り出し、楽しくきかせていただきました。

管楽器メンバーを大幅に入れ替えてのビゼーのカルメン組曲。 お馴染みのナンバーだけにハードルも上がり気味に思えましたが、杞憂でした。 十分にカラフルでいながらも時に濃厚、時に端正、メリハリもつけたしっかりとしたサウンドで全10曲を描き分けて見事でした。
カラフルなサウンドに大太鼓の重低音を芯にし、流麗な流れによる濃厚な「前奏曲」、いきなりカルメンの世界に引きずり込まれました。 軽やかなトランペットとピッコロがチャーミングだった「衛兵の交代」。 チェロの深い響きと落ち着いたヴァイオリン、トランペットも巧かった「ハバネラ」。 ファゴットの滋味ある響きが魅力的だった「アルカラの竜騎兵」などなど、聴かせどころをしっかりと決め、全体のサウンドにメリハリがあって聴きごたえ充分。 お馴染みの旋律が次々に出て進んでゆくような感じで、あっという間に「闘牛士」、明るくしかも弾力のあるサウンドに熱気も込めた密度の濃い演奏で締めました。 変な表現ですが、お得感満載、といった感じに思えました。

20分間の休憩のあとは大曲プロコフィエフの交響曲第5番。 パワフルであるだけでなく時に濃厚なロマンティシズムも感じさせ、スケールを大きくとりつつも要所を締めたよく纏まった演奏に仕上がっていました。
第1楽章、やわらかな木管と低弦でゆったりと呼吸する開始、明るく響く高音弦も絡んで掴みはバッチリ。 大太鼓がドーンドーンと腹に響く音も印象的でした。 スピート上がって緊迫感を持たせたサウンドですが、中井さんはあくまでも流麗にロマンを漂わせるように進めていたようです。 スケールの大きなたっぷりとした演奏をスパッと切って落とした着地も見事でした。
第2楽章、リズミカルな弦の分奏がきちんと揃い、管楽器との連携もバッチリ。 各パートよく纏まってノリも良く、立体的なサウンドが見事でした。 そしてスピードアップ、聴かせ上手な演奏に参りました。
第3楽章、たっぷりとした弦アンサンブルに重量感があります。 木管入ってしなやかに、じっくりと構えた伸びのあるサウンドで全体を歌い上げてゆきました。 中井さん、時にスポットライトを当てたりもしますが、オケ全体をうまく纏めあげていましたね。
終楽章、パワフルながらよく纏まっていましたね。 ゴリ押しのような力みを押さえ、きっちり演奏しているのですが、強いハートを持った怒涛の演奏といっても良いと思いました。 強いて言えば、高音弦の数がちょっと少なかったように感じたのが残念かな(個人的な嗜好もありますけれど)。 緊迫感を持ってきっちりと盛り上げ、全体がよく纏まったエンディング。 大きな拍手に包まれてました。 お疲れさま。 と声をかけるような拍手でしたね。

アンコールはゴキゲンなサウンドに変身、くつろいだ気分にもさせてもらっての帰路となりました。 皆さんお疲れさまでした。 そしてご招待いただきありがとうございました。

posted by fronte360 at 08:25| Comment(2) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月23日

紫苑交響楽団 第34回定期演奏会

日時:2019年9月7日(土) 18:00開演(17:15開場)
場所:京都コンサートホール・大ホール

曲目:ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
   ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
(アンコール)失念
   ドヴォルザーク/交響曲第7番
(アンコール)ドヴォルザーク/スラブ舞曲第14番

独奏:玉井菜採(vn)

指揮:森口真司(首席客演)

P9222697
P9222697 posted by (C)fronte360

常に真摯に前向きに曲に立ち向かった演奏を聴くと心を動かされますが、それがよく訓練されたオケであったなら、演奏時間は至福の時となります。 その至福の時間を過ごすことができました。

いつもながら森口さんが指揮されたこのオケは集中力がさらに高まりますね。 ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲、冒頭より底鳴りのする響きで一気に惹き込まれました。 冒頭のホルンこそ慎重でしたが、弦アンサンブルの重厚でありながらも透明感を失わない響きが腹にズンズンと押し寄せてきていました。 お馴染みの主題も木管の好演もあって充実した独逸音楽の体。 一本に聴こえる見事なコントラバスの響きと落ち着いたチェロを軸にしてキビキビと曲を進め、冷静な盛り上がりによるフィニッシュ。 オケの機動力の良さをうまく引き出した演奏でした。

京都生まれ・滋賀育ちで、東京芸大教授である玉井菜採さんをソリストに迎えたブラームスのヴァイオリン協奏曲、しっとりとして深みのある美しいヴァイオリン(ストラディヴァリウス)の響きが魅力的でした。 ヘルマン・クレバースに師事されたとのこと。 くしくも当方がこの曲を始めて聴いたのがクレバース(伴奏ハイティンク/ACO)のレコード。 美音を前面に出した演奏だったと記憶していますが、玉井さんも同傾向ながらより現代的な表現、さらに森口さん率いる紫苑もシャープな伴奏で一体となって現代的なブラームスといった印象も持ちました。

第1楽章、ヴィオラとチェロの重厚な和音に高音弦と木管が絡んだ素敵な響き、華やぎも感じた印象的な開始。 玉井さん、透明感のある伸びやかながらも深い艶を持った響きで割って入りますと、ソロ・オケともに一体となって落ち着いて曲を進めます。 玉井さんの響きに粘りつくような色気も出て歌い込んでゆきます。 オケだけのなるとぐいぐいと熱気孕んで歌うと、カデンツァではスケール感を持ったソロで応えて、ソロ・オケ一体となり間合いとっての着地もうまく決めました。
第2楽章、オーボエが艶ののった響きが素敵でしたね。 さらにファゴット、クラリネットもしっとりと絡んで上々の滑り出し。 ゆったりとした呼吸で進めますと、玉井さんもそれを受けて艶やかで繊細な響きで丹念に歌い込んでゆきました。
第3楽章、端正なソロにシャープなオケが熱気をもって曲を推進させます。 もうちょっと甘美にと思わなくもありませんが(クレバースの影響?)、メリハリつけた現代的なブラームスを堪能。 ソロとオケの一体感が素晴らしいかった。 徐々に熱気を孕んで力演としての大団円でフィニッシュ。 聴き応えありました。

20分の休憩を挟んでドヴォルザークの交響曲第7番。 洗練されたオケの響きが伸びやかでかつ思い切りよく鳴る充実した演奏に心奪われました。 森口さん、いつもながら奇をてらったり、興に乗って煽ることなく、冷静に曲を進めてゆきますが、メリハリをうまくつけてオケを巧く乗せ、よく訓練されたオケより生き生きとした音楽が迸り出てくるのですね。 とても気持ちのいい演奏でした。 至福の時間でした。

第1楽章、低弦の落ちついたサウンドを軸に弦アンサブルの分奏がビシッと決まって見事な導入。 打点を明確に、キレよく機動的でありながら流麗で伸びもあります。 重軟織り交ぜながら曲を進めてゆきますが、ヴィオラの8名(?)に存在感あってドヴォルザークらしさを醸成。 金管も抑制かけて全体のサウンドに統一感を持たせていたのが魅力的でした。
第2楽章、落ち着いて温かみのあるクラリネットとファゴットに魅了された開始より、弦管が一体となって曲をおおきな呼吸で進める、これまた見事な音楽。 メリハリもしっかりと決め、たっぷりとしながらもしっかりと決める。 オケ全体がひとつにまとまった見事な音楽でした。
第3楽章、快活で流麗かつパワフルさも併せ持ったスケルツォ。 中間部、いつくしむようでありながらも快活さを併せ持った響き、そしてまたパワフルかつ流麗、巧い、よく訓練されたオケでしたね。
第4楽章、ぐっと粘りを効かせてじっくりと進め、徐々にパワーを込めてゆきますが、一筋縄でいかない力の込め方でしたね。 小技が色々と繰り出されているようで、確かに耳馴染みのある旋律だけど、ふっと前に出てきたりもしますね。 それが嫌味とかでなく、ごく自然な流れとして届けられる。 発見のある音楽でとても新鮮な響きでした。 スコアを読める人なら、なるほどと膝を打っているんじゃないかな。 表面、そして裏側、側面などのパーツを浮かびあがらせ、押して引いてオケを十分に鳴らして変幻自在での自信に満ちたエンディング。 感動しました。 素晴らしい演奏に大きな拍手を贈りました。 至福の時間をありがとうございました。

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月07日

ホール・バルティカ 第8回演奏会

日時:2019年8月25日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:リャードフ/魔法にかけれた湖
   エルベルディン/マニフィカート -*
   ワーグナー/タンホイザーより「巡礼の合唱」
   メンデルスゾーン/「真夏の夜の夢」より「夜想曲」
   ラッター/マニフィカート -**
(アンコール)失念

独唱:丸山晃子(S) -*,-**、高原いつか(MS) -*
バンドネオン:仁詩 -*
アルボカ(スペインの角笛):楠元美子 -*
打楽器:深田瑞穂 -*、川向千草 -*

合唱:混声合唱団ホール・バルティカ
管弦楽:セント・マーティン・オーケストラ

指揮:河崎 聡(音楽監督)

P9042606
P9042606 posted by (C)fronte360

スペインのエルベルディンと、イギリスのラターによるマニフィカトをメインにした演奏会。 スペインの民族楽器を交えてエキゾティックなエルベルディ、合唱と独唱が清らかに絡んで癒されるラター、ともに20世紀の宗教音楽とは清澄な祈りを感じさせるとても良い時間を過ごせました。

久しぶりのシンフォニーホールですが、まず驚いたのが自由席だったこと。 1回中央に特別指定席を設けておられましたが、2階席最前列も自由席。 あいにくホールに到着したのが少々遅くなってそこは断念しましたが、左サイドのLG-2を確保。 足元が広くてちょっと得した気分。

オーケストラの編成は 10-8-7-6-5 の対向配置。 自由入場で楽器練習される団員さんが徐々に増えて気分も自然と高揚しますね。

まずは演奏のみの曲でオープニング。 リャードフの「魔法にかけれた湖」ですが、初めて聴く曲ながら、ロシアの平原の夕暮れ時、遠くには影になった山脈が望め、残照の残る空には星が瞬き始めた・・・そんな絵巻物でも見ているような気分となりました。 気づくと舞台の照明もやや落とし、ステージ後方のオルガンの銀色のパイプには薄青い照明を当てるなど、なかなか良い雰囲気を作っていました。

合唱団は女声のみ、独唱者とバンドネオンも加わったエルベルディンのマニフィカート。 聖母マリアへの讃歌ですが、このエルベルディンのは晴れやかな華を持った曲調で、バンドネオン、アルボカという角笛、タンバリンなどの打楽器など随所にスペインそれも片田舎と解説にあるような風情が楽しめる曲ですね。 特に角笛、ツィンクみたいな形でしたがオーボエ奏者が演奏されるだけあってラッパではなく和音の出る笛のような音で魅了していました。 肝心の合唱・演奏ともにやわらかな響きを基調として刺激的な要素は(角笛を除いて)なく、美観を漂わせた演奏に身をゆだねました。

前半最後はワーグナーの「巡礼の合唱」、男声も加わって最後は力強く熱っぽく盛り上げました。 冒頭のホルンや木管など柔らかく落ち着いた響き。 いつもはアグレッシブな演奏のセントマーティンですが、今回はこの他の演奏もそうでしたが、包み込むような落ち着いたサウンドでした。 徐々に熱い演奏として、リリックな女声に力強い男声。 メリハリつけて、最後はトロンボーン、チューバの芯のある響きも交えて歌い上げました。

20分の休憩のあと、まずは演奏のみの曲としてメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」より「夜想曲」。 今度もステージの照明を落としてパイプオルガンに緑色の照明を当てて雰囲気を作っていましたね。 透明感の高い高音弦と落ち着いた低弦によるアンサンブルが印象的でした。 冒頭のホルンちょっと危なっかしい感じもしましたが、後半よく持ち直して包み込むような響きで曲をうまく彩っていました。

独唱のソプラノ歌手とハープが加わってラターのマニフィカート、ミュート・トランペットだったかないきなりバーンスタイン風の賑やかな開始。 合唱も明るい歌声で、合唱・管弦楽が立体的に響いていましたね。 続いて落ち着いた色合いとして、静かな力のこもった合唱。 決して暗くならず、河崎さん緻密に合唱もコントロールされて曲を進めます。 金管・打楽器が入って雄大な音楽なれば、合唱もまた堂々と歌って音対決のような感じとなりましたが、圧巻はそれが退いてからのソプラノ独唱と合唱の絡み。 清楚な独唱に座ったままの合唱もからんで自然なもりあがり。 うっとりとしました。 合唱はこのあと立って力強くミュージカル風となりましたが、またソプラノ独唱と合唱、ハープ、木管、そして弦楽四重奏などとの絡みがゆったりと流れていって癒しの時間。 独唱、ハープと男性合唱がポイントだったでしょうか。 そして最後はまたバーンスタイン風となって輝かしく、かつカッコよく幕となりました。

2曲のマニフィカートを中心に据え、管弦楽曲も配したオムニバス的な演奏会でしたが、曲の配置の妙もあって、各々の演奏、また演奏会全体としても充実した内容に満足しました。
もちろんそこには混声合唱団ホール・バルティカの一本筋が通っていながらも柔らかさを失わない声、いつもの古典派音楽で聴かせる尖ってアグレッシブな演奏とは一線を画し丁寧で柔らかく包み込むようなセント・マーティン・オーケストラの演奏、河崎さんを中心に一つにまとまっていたことが大きかったように感じました。 素敵な時間を過ごすことができました。 ありがとうございました。

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月06日

天理シティオーケストラ 第19回定期演奏会

日時:2019年6月30日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:天理市民会館やまのべホール

曲目:ボロディン/交響詩「中央アジアの草原にて」
   ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
   (アンコール)ショパン/ノクターン第13番 op48-1
   チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」組曲より
      情景、ワルツ、小さな白鳥の踊り、ハンガリーの踊り
   チャイコフスキー/幻想序曲「ロミオとジュリエット」
   (アンコール)チャイコフスキー/バレエ「くるみ割り人形」より「花のワルツ」
   (アンコール)J.シュトラウス/ラデツキー行進曲

独奏:竹内 奏(p)

指揮:安野英之(常任)

P7022322
P7022322 posted by (C)fronte360

ドイツ仕込みの竹内さんの重厚なピアニズムが光っていました。 アンコールを褒めるのは良くないかもしれませんが、ショパンのノクターンがこんなにも深い音楽であったのか、と唸りました。 ピアノ独奏曲はあまり聴かないのですけれど、心にズシンと響くものを感じました。

その竹内さんが独奏をされたラフマニノフのピアノ協奏曲。 冒頭の和音の深い響き、たっぷりとしたオケもまた渋い響きで応えて、ロシア音楽というよりもドイツ音楽のような印象でした。 プレトークで、ピアノが約50年前のものなので、アクションが古いタイプだから速いパッセージへの追随性がイマイチ、そんなお話もありましたが、濃厚なロマンティシズムきらびやかなラフマニノフというよりも、質実としたドイツ風、艶消しを施した黒光りする重厚さがにじみ出ていたように感じました。

第2楽章も強めのタッチで大きな呼吸、気持ちを静かに込めていつくしむような感じ。 アタッカで入った第3楽章、オケとの呼吸もバッチリで一体感を持って進みました。 強めのタッチで重厚に響かせていましたね。 弦の編成が 7-9-8-5-5 の小型のオケですが、スケール感を十分に感じさせる伴奏は端正でありながら雄大さをも感じさせました。 そして両者ががっぷりと組み、しっかりとした着地でのフィニッシュ。 丁寧でとてもよく纏まった演奏という印象。 安野さんの的確なサポートですから当然といえば当然なのでしょうけどね(その分、わくわく感に乏しいのがちょっと残念だったかな)。

そしてこのあとのアンコールが、前述したとおり。 こんな演奏をされるのなら、竹内さんでベートーヴェンのピアノ協奏曲もいいかもしれませんが、個人的にはブラームスのピアノ協奏曲を聴きたかったですね。

これに先立って演奏されたボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」、刺身のツマのような演奏ではなくしっかりとした演奏としたい、安野さんが言われていたように、各パートが落ち着いた響きでよく纏まっていました。 丹念に場面を描き分けていて、聴き応えありました。

休憩のあとはチャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」組曲より4曲、いずれも落ち着いてしっかりとした演奏でしたね。 安野さんの判りやすい指揮のもと、オケが自然と鳴っている感じ。 テンポを揺らす事なく、強弱アクセントでメリハリをつけますが、それもやや控えめだったかな。 対抗配置にした弦楽器より低弦がやわらかく下支えしていたの好感が持てました。

最後のチャイコフスキーの幻想序曲「ロミオとジュリエット」もまた「白鳥の湖」と同様ですね。 恣意的な細工はせず美しく、音楽を自然な高揚感で描いてゆきます。 音量が上がってクライマックスになるとともに安野さんの指揮棒の動きは逆に小さくなって、オケの集中力を高めさせているようでした。 オケもよく訓練されていて、派手にならず落ち着いた雰囲気での纏まり感のある演奏でした。 ここでもしっかりとした着地を決めました。

アンコールは、「白鳥の湖」はチャイコフキーの初期の作品で鳴りが良くないけれど、ということで鳴りの良い「花のワルツ」。 確かに明るく響いた音楽で華麗な感じも出て面白かったですよ。 それにアンコールの気軽さもあってか演奏する愉しさも音楽に含まれていたように感じました。 そして最後はお馴染みのラデツキーマーチ、会場と一体感を持ってのお開きで気持ちよく会場を後にできました。 いつもながら上質な音楽を楽しませていただきました。 皆さんお疲れさまでした。



posted by fronte360 at 09:43| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月28日

オーケストラ千里山 第28回演奏会

日時:2019年6月23日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:豊中市立文化芸術センター・大ホール

曲目:ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」作品55
   チャイコフスキー/交響曲第4番 ヘ短調 作品36
   (アンコール)マスカーニ/カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲

指揮:井村誠貴

P6272228
P6272228 posted by (C)fronte360

気迫に満ち、真摯にベートーヴェンと向き合った素晴らしい「英雄」交響曲でした。 あまりに気迫に満ちた第1楽章が終わったあと、拍手が自然と沸き上がったのも納得です。 井村さんらしく、ダイナミックかつドラマティックな曲の進行ですが、それを見事な音にしたオケにも大きな賛辞を送りたいと思います。
低弦奏者出身の井村さんらしく7本の低弦をしっかり指導、1本に聴こえる太い響きで曲を支え、そして栄嶋さんの薫陶による高音弦は伸びやかで艶とコクのある響き、これらが見事に調和。 よく訓練された弦楽アンサンブルにしばしば耳を奪われました。

そして要所を締めていたのがティムパニ。 先の細いマレットで終始タイトな響きで曲を引き締め、またこれに絡むトランペットはまるで打楽器。 ホルンのような見せ場は無いものの、抑制をしっかりとかけて吹き、控えめな華やかさで彩っていたのも良かったですよ。

いつもなら、メモを取りながら聴いていたりするのですが、メモをとる時間も勿体ないほど、音楽に集中して聴いていました。

20分の休憩のあとチャイコフスキーの交響曲第4番もまた熱演。 ダイナミックで底力のあるサウンドで、緩急を大きくつけていたのも印象的でした。 ベートーヴェンのような深遠さを感じさせないのがチャイコフスキーらしいところでしょうね。

そのぶんアンサンブルがより緻密になったせいか、冒頭の弦アンサンブルでざわついた感じも受けましたが、熱い想いですぐに回復。 起伏を持ったスケールの大きな音楽、要所で井村さんらしい色付けもして聴き応え十分(見応えも十分)。

ソリッドに響く金管ブラスに対して、凛としたオーボエや端正な木管が熱い空気の清涼剤となっていましたね。 ただ楽器の数が少なくなるとアンサンブルの精度が荒く感じたところもありましたが、アタッカで入った終楽章は迫力満点ながらきちんと計算された堂々たる音楽。 押して引いて、メリハリを効か、起伏を作ってフィナーレへとしっかりと導いていったラスト、アッチェランドかけてゴールへと雪崩れ込んだ感動的なラストでした。 ブラボーの嵐。

思い返すと、英雄のフィナーレは最後の最後までしっかりと呼吸、計算された堂々たるゴールがいかにもベートーヴェンらしく共感しましたが、チャイコフスキーならこういったゴールやね、やっぱり。 どちらも納得度の高い演奏に満足しました。

アンコールもまた熱かったですね。 ふだんアンコールの感想は書かないけれど、マスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲もまたよく歌っていて素晴らしかった。 たっぷりとした弦アンサンブルに凛としたオーボエ、オケ全体の響きに芯と花があって聴き惚れました。 そしてアンコールにもブラボーが飛んで、もうお腹いっぱいでホールを後にしました。

皆さんお疲れさまでした。 またこんな素晴らしい演奏会にご招待いただきありがとうございました。



posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月23日

京都フィロムジカ管弦楽団 第45回定期演奏会

日時:2019年6月16日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:大津市民会館・大ホール

曲目:ベルリオーズ/序曲「海賊」
   シューマン/交響曲第4番(1841年版〜初稿〜)
   ニールセン/交響曲第2番「四つの気質」

指揮:木下麻由加

P6162135
P6162135 posted by (C)fronte360

ニールセン、音の密度の濃さが他とは違っていましたね。 ニールセンなど北欧音楽を研究されている木下さん、自家薬籠中の曲でしょうか。 オケもまた弦楽器の編成が 9-7-6-7-4 と小型ながらも、伸び伸びとよく鳴らした熱演でありました。

第1楽章冒頭、あれよあれよという快速で進行しましたが、オケの響きに芯と艶もあって、キレ味抜群の目が回るような見事な開始。 エネルギッシュな音楽が展開で引きづり込まれました。 指揮者とオケの自信の現れでしょう。 第2楽章は掴みどころのない曲調を、木下さんが身体全体を使ってうまくコントロール。 ファゴットやホルンも健闘していました。 第3楽章、重厚な響きに粘りも加えてシンフォニスト・ニールセンの面目躍如たる演奏。 素晴らしかった。 低音楽器の粘りに対して、高音弦は数が少なくて不利だったでしょうが、音量を上げてもヒステリックになることなく、常に艶やコクも感じさせる巧さが印象的でした。 終楽章、軽快にスタート、木下さんは細かなニュアンスつけながら駆けてゆき、ティムパニと弦との呼応、引き締まったブラスで盛り上げたあと、フィニッシュ前にはヴィオラと2ndヴァイオリンによる陰鬱な音楽。 このあと行進曲調としてキレのよい着地でした。 シンフォニスト・ニールセンを堪能しました。 これならアンコール無しも納得です。

これに先立って演奏されたシューマンの交響曲第4番(1841年版〜初稿〜)は、いくつか録音を持っていて、またよく聴く好きな曲であることもあって、少々辛口な印象。 前半の2つの楽章は、噛んで含めるような感じに思え、もうちょっとここで粘って欲しい・・・など思いつつ、さらさらっと進んでいった感じ。 後半の2つの楽章は、こなれてきたせいでしょうか、オケの響きに粘りも出てきたようです。 力強い第3楽章ではホルンがいい感じで割って入ったり、たっぷりとしたオケと引き締まったコントラバスの対比も良かったですね。 アタッカで終楽章にはじっくりと腰を据えて入り、力強く弾む主題。 そして軽やかに駆けてゆきますが、キレのよい高音弦を始めとして、弦パートの分離も良いのですが、全体の響きにくぐもったシューマンらしい雰囲気も漂ってきました。 力強いティムパニが入って堂々たるフィニッシュでした。 シューマンの交響曲ってきちんと整理されて演奏されると面白味半減、みたいに思っている当方には前2楽章は物足りなかった、と偉そうにすみません。

冒頭のベルリオーズの海賊が、オケの機能の高さを証明したような演奏。 ここも丁寧でよく纏まった演奏でした。 明るく元気に、どことなくディズニー音楽っぽくもあったりもして、よく纏まった巧い演奏でした。 が、それだけ、ってな感じもしましたが、オープニングの掴みは上々ってな感じに思いました。

何といってもニールセンを聴いてしまえば、前2曲は所詮「前座」の趣き無きにしも非ず、だったでしょうか。 それにしてもいずれも巧い演奏でしたね。 皆さんお疲れさまでした。



posted by fronte360 at 05:42| Comment(0) | 19-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする