2018年12月21日

第25回「天理の第九」演奏会

日時:2018年12月16日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館・やまのべホール

曲目:<第一部>
    ブラームス/悲劇的序曲 作品81

演奏:天理シティーオーケストラ
指揮:安野英之

   <第二部>
    ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」
    (アンコール)蛍の光

独唱:平野雅世(S) 堀内優子(A) 柏原保典(T) 藤村匡人(B)
合唱:天理第九合唱団

指揮:河ア 聡
演奏:天理第九管弦楽団

PC163379
PC163379 posted by (C)fronte360

天理第九合唱団の指揮者にもなられている河崎さん、2015年にも「天理の第九」を指揮されているのを聴かせていただいていますが、今年もまた気持ちのよく乗った真摯な第九、合唱とオケが一体となってさらにパワーアップした演奏を楽しませていただきました。

今年のパンフレットには「天理第九合唱団」とのみ記載されていますが、奈良県立二階堂高校コーラス部、天理ピエーナ少年少女合唱団の方も参加されているのでしょうね。 制服を着た方も歌っておられました。 おじさん・おばさんの声に交じって届く若々しい歌声、混ざり合って多彩で立体的な響きとなり、とくに「ミリオーネン」と歌うあたり、絢爛たる声の響きに耳を奪われました。

楽譜を持って歌われていた方も散見されましたが、見た目にはちょっと、と思われる方もいるかもしれませんが、お仕事など忙しくて練習不足のために自信なく歌われるよりも、譜面を見てしっかりと歌われるほうが良い、と思っています。 そして今年もまたパワー一辺倒でなく、自信に満ちた素晴らしい合唱でした。

オーケストラもまた良かったですね。 2015年ではコンマス席に栄嶋さんが座られていましたが、今年は相原さんがリーダーとなって纏められ、常に落ち着いて進められていました。 そしてセカンドに回られた栄嶋さんとビオラの上田さんのコンビもバッチリ、中音弦の厚みが増した弦アンサンブル、例年よりも緊密なアンサンブルでパワーアップしていたように感じました。

第1楽章の冒頭、河崎が中腰で音を絞りだすようなストイックな開始、聴いているこちらも身が引き締まる思いがしました。 第3楽章より明るく響かせたりもして、パワフルな終楽章に突入。 ピッコロやトランペットなどが突き抜けてくる華麗な響き、そして合唱とオーケストラが一丸となった圧巻のフィナーレ。 高らかに鳴るラッパに彩られた輝かしいエンディングはいつもながら感動的な幕切れ。 客席にも熱気の渦が巻いていたようでした。

実は今年は演奏会前、朝10時より近鉄電車による駅長おすすめハイキング「酒蔵みてある記・稲田酒造」に参加していました。 天理の駅前商店街にある稲田酒造目指し、ぐるりと天理の町を10Kmほど歩き、甘酒や試飲もさせていただいて(もちろん1本購入して)からの「天理の第九」へ参戦。 演奏会を堪能して最後は緑色のルミカライトを振り蛍の光を歌ってのお開き。 1日たっぷりと天理を楽し楽しませていただきました。 ありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月17日

高槻フィルハーモニーオーケストラ 第12回定期演奏会

日時:2018年12月9日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:高槻現代劇場・大ホール

曲目:ベートーヴェン/「レオノーレ」序曲 第1番
   メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
   (アンコール)J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番よりラルゴ
   メンデルスゾーン/交響曲第3番イ短調op.56 「スコットランド」
   (アンコール)J.S.バッハ/G線上のアリア

独奏:馬渕清香(vn)

指揮:白谷 隆

PC153299
PC153299 posted by (C)fronte360

キビキビと動く白谷さんに率いられた小編成で小回りの利くオケとのコンビ、見晴らしの良い演奏が印象的でした。

弦楽器の編成は 8-7-6-5-4 の通常配置。 スコットランドなど個人的にはもうちょっとゆったりとして弦の響きをたっぷりととった演奏に馴染んでいるのですけれど、時おり弦アンサンブルのすき間より届けられる木管のフレーズなどにハッとさせられたりもし、興味深く聴かせていただきました。

またスコットランドでは、コンマスの楽器の弦が切れる(?)アクシデントがあり、予備の楽器を取りに後ろに走ったら、後ろのプロトの女性奏者が先にトラブル発生で予備器を既に使っていたり、ヴァイオリン・パートにとっては受難だったでしょうが、そんな影響を感じさせずしっかりと曲を進めておりました。 小編成なりのチームワークの良さかもしれませんね。

そんなトラブルのあったスコットランドでしたが、キビキビとした大きな振りで進める白谷さんのもとコンパクトで引き締まった演奏を展開。 第1楽章のクライマックスなどちょっと戦闘的な盛り上がりでしたね。 第2楽章冒頭のホルンとクラリネットの好演よりいきいきとした演奏とし、第3楽章もキレのよい動きの白谷さんより各楽器が絡み合っているのが垣間見えて面白かったな。 そして終楽章では動きを逆にコンパクトにした白谷さん、タイトな金管を交え、各楽器にスポットライトを当てる見晴らしが良く、活気ある音楽として締めくくりました。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、白谷さん率いるメリハリを利かせたしっかりとした伴奏に、馬渕彩香さんの可憐でメロウな響きのソロで歌いあげていました。 馬渕さん、冒頭こそちょっと線が細いかなぁって思いましたが、終始オケと対峙して踏み込んで丁々発止となることはなく、常に曲を慈しむように弾き進めていたのが印象的でした。 対するオケは、オケのみになると少々ヴォリュームをあげて躍動的、しっかりと馬渕さんに寄り添ってフィナーレはスケール感を大きくとって全曲をしっかりと締めました。 両者正反対な感じですが、全体としては補完しあってうまく纏まっていたのではないでしょうか。

馬渕さんのアンコール、J.S.バッハの無伴奏も良かったですね。 暖かな音色ながら深遠でスケールの大きさを感じました。

冒頭のレオノーレ序曲第1番、白谷さんの両腕が大きく回して深い響きを導き出した堂々たる開始。 小編成オケらしく見晴らしの良い演奏で、慎重に音を紡いで進めてゆきます。 白谷さんの指揮を見るのは3回目ですが、しっかりと大きく振って、徒手体操みたいな面も。 分かりやすい指揮ではないでしょうか。 フィナーレも機械人形のようにカクカクっと動いてデジタルのように音量があがっていったようでした。

いずれもオーソドクスな解釈で、何度も書きますが見晴らしの良い演奏。 これでオケが冷たい響きになると解剖学的な演奏と言えるでしょうが、常に前向きで熱い響きに彩られた演奏となっていました。 ちょっとストレートにすぎた面も無きにしも非ずですが、面白く聴かせていただきました。 ありがとうございました。




posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月03日

奈良女子大学管弦楽団 第48回定期演奏会

日時:2018年12月2日(日) 13:30開演(12:30開場)
場所:奈良県橿原文化会館・大ホール

曲目:グノー/歌劇「ファウスト」よりワルツ
   ブラームス/大学祝典序曲
   チャイコフスキー/交響曲第5番
   (アンコール)エルガー/エニグマよりニムロッド

指揮:竹本裕一

PC033199
PC033199 posted by (C)fronte360

始めて聴く指揮者の竹本さんはトロンボーン奏者でかつ吹奏楽団の指導や高校などで教鞭をとられている方だそうです。 きちんとしたリードでオケの手綱をしっかりと握り、いずれの曲も充実した演奏内容に感じ入りました。 特に素晴らしかったのはオケの音量を上げても音が前に出るのではなく、音の密度が増すこと。 勢いに任せず、きちんと音を鳴らした音楽は聴いていて安心です。 学生オケがよく演奏するチャイコフスキーの5番の交響曲など勢いに任せることがままありますが、竹本さんに率いられての充実した演奏内容に満足しました。 いい演奏会でした。

冒頭のグノーのワルツ、出だしより「響きの密度が濃いな」と感じました。 そして艶の乗ったヴァイオリンの旋律、柔らかに響く低弦に乗せて歌います。 常にトップサイドに座っていた松永さん、後ろのプルトには前年のコンサートミストレスも座っていて、安定した弦アンサンブル。 優美なヴァイオリンの響きにコクも乗っていましたね。 フルートもしっとりした響きで好演。 クライマックスは弾力のある響き、音楽を大きくせずコンパクトにしっかりと纏めた密度の濃い演奏。 上々の滑り出しでした。

ブラームスの大学祝典序曲も、女子大オケながら落ち着いた骨太のサウンドで覇気を内包していた堂々たる演奏でした。 力がこもっても音楽を肥大させず、落ち着いてじっくりと構えた音楽が魅力的。 金管コラールもゆったりと落ち着いた音色でしたね。 演奏のキレももちろんありますが、タイトに盛り上げたあとは、軽やかな木管のソロがちりばめられてしっとり感も出すのが奈良女オケらしさかな。 パーカッションが入って熱い演奏となるところですが、ここもスケール感よりも響きの密度を上げる集中力の高い演奏で乗り切ります。 竹本さん、終始オーソドックスで的確なリードでオケを統率、フィナーレもまたゆったりとして壮大ながらも誠実な演奏として締めくくりました。

15分間の休憩のあとメインのチャイコフスキーの交響曲第5番。 正直この曲、あまり好きではないのですね、特に学生オケの場合だと勢いに任せて演奏できるせいか、よく演奏会にかかりますけどね。 第1番「冬の日の幻想」が奈良女オケに似合っているのになぁと思ってましたが、ところがどっこい。 竹本裕一さんに率いられた奈良女オケは一味も二味も違ってました。 充実した演奏内容に満足しました。

第1楽章の出だし、やや音量小さめでそっと「これから物語が始まりますよ」って語り掛けるような感じ。 ゆっくりと進めて、ヴァイオリンの艶のある響きも素敵。 徐々に盛り上がってゆきますが、タイトに盛り上げてもスケール感を大きくとらず、ここでも音の密度が上がります。 打点を明確にした音楽ですが、しっとりとして落ち着いたトーンでゴリ押さない。 いい感じです。 ファゴットはじめ木管もしみじとした響きでしたね。

第2楽章、中低弦のじんとくる響きでの開始よりホルンの難しいソロ、ちょっと危なっかしい場面もありましたが見事乗り越えました。 クラリネットのしみじみとした響き、オーボエのちょっと線が細いんだけど、いい味になっていたようです。 全体的に落ち着いたトーンで曲を進めてゆきました。 ピークこそタイトに盛り上げますが、じっくりと語りかけるような感じとしての着地。

第3楽章、艶やかで明るめの響きですが、ここでも語り掛けるような木管楽器、落ち着いた音色でちょっと遅めのテンポで進めてゆきました。 弦が入って、竹本さんちょっとタメをつけて抑揚をつけ、たっぷりとした着地。 決まりました。

第4楽章、オケを引き締めてゆっくりと、かつ淡々と進めてゆきますが、じっくりとタメを作ってからの盛り上がり。 タイトです。 引き締まった音楽は音が発散するのではなく集中力を高めた密度の濃い響き。 派手さはないのですが充実した演奏ですね。 しっかりととめて、行進曲もまたたっぷりとした響きで語り掛けるよう。 金管の響きも抑制がきちんとかかって、ティムパニの打音も抑制された渋い音で決め、落ち着いた腰の据わったサウンド。 音楽が無防備に肥大せず、きとんとした密度の濃い響き。 全員一丸となった熱い音楽としてのフィナーレは感動的でした。 ブラボーがかかったのも頷けます。

アンコールもまた良かったですね。 徐々に楽器の数が増え、壮大な音楽としているのに、常に語り掛けるような説得力がありました。 思い返すと、どの曲も語り掛けるような感じで曲を進めていましたね。 竹本裕一さん、初めて聴かせていただきましたが、アマオケでは貴重なオーケストラトレーナーになるのではないかと感じました。 とにかくいい演奏会をありがとうございました。 皆さんお疲れさまでした。


posted by fronte360 at 21:42| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月02日

セント・マーティン・オーケストラ 第14回定期演奏会

日時:2018年11月25日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:川西市みつなかホール

曲目:ベートーヴェン/「プロメテウスの創造物」序曲
   ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲
   ブラームス/交響曲第2番
   (アンコール)シューベルト/「ロザムンデ」より間奏曲

指揮:河崎 聡

PB263196
PB263196 posted by (C)fronte360

明るい音色を基調に、小編成オケらしい軽快さと纏まりの良さ。 終始にこやかな笑顔の音楽監督の河崎さんが、基本インテンポでさくさくと進めてゆきます。 いずれの曲もちょっと独特な印象を残したアグレッシブな演奏でした。

冒頭のベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲より明るい響きが印象的。 キレ良く、全奏となって音量上がっても重くならない。 苦虫を噛み潰したようなベートーヴェンの肖像画を忘れさせる、明るく伸びやかな快演でした。

続くブラームスのハイドンの主題による変奏曲、冒頭の「聖アントーニのコラール」の明るく柔らかな木管の響きに、柔らかくも芯の通った低弦ピチカートが絡んで、とっても上質な音楽での幕開け。 続く変奏ではノンビブラート奏法でしょうか、艶を落としたヴァイオリンの響きが絡んでいたのに驚きました。 第2変奏ではヴァイオリンに艶が戻りましたが、タイトで真摯な音楽。 包み込むような響きで始まった第3変奏も芯があります。 しっとりとした中音弦、大きくうごめくようながら集中力を高く保った第4変奏。 力込めた速いパッセージの第5変奏も全ての楽器が等価に鳴っているような集中力。 ホルンの落ちついた響きで始まった第6変奏も全体的には尖った音楽造りでキレの良さが光りました。 ゆったりと落ち着いた明るい響きながらもフレーズは短めに処理して高い集中力を保った第7変奏。 インテンポで不安気な響きを醸し出した第8変奏を終えて、落ちついた響きでじっくりとタメを効かせたフィナーレ。 力を込めて音量を上げているけれど高らかに歌い上げず、音楽も大きくなりません。 引き締まった音楽のまま、あっさりと着地しました。
これでオケの響きが冷たいと解剖学的な演奏、と言えるのでしょうけれど、アグレッシブな演奏は基本的に明るく暖かな響きに彩られていて、ちょっと独特な印象を受けました。

20分間の休憩を挟んで、ブラームスの田園交響楽、交響曲第2番もまたアグレッシブな演奏でした。 十分に練習を積んでこられたのでしょうね、全奏となって音量が上がる場面になっても河崎さんは決して煽ったりせず、逆に腕の振りを小さくしてオケの響きを確認しているような感じ。 小編成オケらしい纏まりの良い演奏でした。

第1楽章、テンポを遅くとって低弦そしてホルンがたっぷりとした上質な開始。 高音弦が凛とした表情で絡んで進む序奏。 主部となって活気づきますがきちんと整頓された音楽で小編成オケらしい纏まりの良さ、そしてテンポを遅めにとって丁寧に歌い上げてゆきました。

第2楽章、落ち着いてたっぷりとした響きですが、小編成なので音楽が大きくなりません。 明るくしっとりとした響きでじっくりと盛り上げてゆきました。 第3楽章も明るい音色で軽快、小気味よく進めていましたね。 ややオーボエの響きが大きかったかな。

終楽章、タイトな盛り上がり、河崎さんが嬉しそうな顔で次々にオケに指示を出してゆきます。 時に左手を高々と上げたりもしますが、それは合図であって煽ったりしません。 相当に練習を積まれたようですね、引き締まった響きで音楽が流れてゆきます。 全奏で音量が上がる場面では河崎さんの腕の振りが小さくなってテンポをとりながらオケの響きを確認。 よしよし、と思っているのかな。 フィナーレこそギアを一段上げた熱い音楽として締めくくりました。

小編成のオケらしい纏まり感のあるアグレッシブなブラームスの田園交響楽を楽しんだあとのアンコールは、逆にテンポを大きく動かしたロマンたっぷりなロザムンデの間奏曲。 変幻自在でしたね。 皆さんお疲れさまでした。


posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月24日

近畿フィルハーモニー管弦楽団 第14回ファミリーコンサート

日時:2018年11月18日(日) 14:00開演
場所:八尾市文化会館プリズムホール・大ホール

曲目:ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
   チャイコフスキー/大序曲「1812年」
   歌謡曲メドレー
    ラブマシーン、UFO、365日の紙飛行機、世界に一つだけの花
   テレビドラマメドレー
    逃げるのは恥だが役に立つ、太陽にほえろ、水戸黄門、北の国から
   アニメメドレー
    セーラームーン、タッチ、宇宙戦艦ヤマト、ルパン三世
   のだめカンタービレ・オープニング
    ベートーヴェン/交響曲第7番より第4楽章
   (アンコール)日本の唱歌メドレー

指揮:木下麻由加

PB233195
PB233195 posted by (C)fronte360

楽しい時間があっという間に過ぎる、近フィルのファミリーコンサートは木下麻由加さんの指揮のもと、オーケストラの良い面をうまく引き出した演奏会でした。 たかがファミリコンサート、されどファミリーコンサート、みんなの知っている曲の演奏は難しいものですが、充実した演奏の数々、演奏者の方も楽しまれていたのでしょうね。
後半プログラムの各種メドレーでは、ドラムセットを持ち込んだゴキゲンなサウンドから始まって、スィング風のルパン三世まで、演奏に勢いがあるんだけれども金管楽器や打楽器がとても上品に響いてきて、しっかりした演奏内容でたっぷりとオーケストラサウンドを楽しませてもらいました。
個人的に驚いたのは、大序曲「1812年」。 冒頭のヴィオラとチェロによる深いコク、タメもよく効いた素晴らしい演奏よりぐっと曳き込まれました。 真摯で引き締まった戦闘シーンでのハリのある低音金管も上質で、すべての楽器が気負いすぎることなくきちんと鳴って曲を進めているのが素晴らしい。 あまりの真摯な迫力からか、幼子を抱いてホールの外に連れ出す人が続出でしたね。 戦闘シーンが収まると、今度はしっとりとした旋律がうごめくように絡みあって、しだいに緊張感を高めて最後の戦闘。 大砲のバスドラムがまた板を打ち付けるような引き締まった打音。 フィナーレでの木下さんの粘り腰も決めて、見事な演奏でした。 失礼ですが、こんなに素晴らしい1812年を聴けるとは思ってもみなかっただけに、驚きました。
最後のベートーヴェンの第7番第4楽章こそ、いきなり感があって(第3楽章からの流れで第4楽章に雪崩れ込むスリ込みができている当方としては)最初はなかなかノリ切れませが次第に馴染んできてホルンの斉奏を楽しみました。 金管楽器が力強いのに絶妙なバランス感覚で全体より突出しておらず、全曲を通しで聴きたかったな。
とにかく、時間があっという間に過ぎる楽しい時間でした。 皆さんお疲れさまでした。
posted by fronte360 at 00:52| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月10日

吹田市交響楽団 ファミリーコンサート2018

日時:2018年11月4日(日) 15:00開演(14:30開場)
場所:豊中市立文化芸術センター・大ホール

曲目:<第1部>
    ワーグナー/楽劇タンホイザー より 大行進曲
    ボロディン/中央アジアの平原にて
    ドビュッシー/小組曲(管弦楽版)
   <第2部>
    指揮者体験コーナー
   <第3部>
    マスネ/絵のような風景 *
   (アンコール)シャブリエ/楽しい行進曲 *

指揮:米山 信、新谷 武 *

PB052767
PB052767 posted by (C)fronte360

かつては普段なかなか聴くことのできない大曲や難曲、著名なプロ指揮者を擁したアマオケ演奏会をおっかけのごとく聴いていましたが、最近はこれら難行・苦行のようにして聴く演奏会よりも、ファミリーコンサートを気楽に聴かせていただくことが楽しくなっています。

そして今回の吹響のファミリーコンサート。 会場も演奏者も、もちろん指揮者も楽しんだ指揮者体験コーナー。 同じような企画が他のオケでもありますが、やっぱり吹響のがダントツに面白いですね。
狂言回しの米山さんの話術もさることながら、オケの皆さんも幼い子供さんの指揮のときには、にこやかに首を振ってリズムを教えてあげいたりして、オケの皆さんも楽しんでいらっしゃる。 みんなが楽しい、これが最大の理由ではないかな。

もちろん本プログラムも楽しみましたよ。 省エネ指揮法で作品そのものに魅力を語りかけさせようとする米山さん。 ピアノ連弾で原曲の一部を披露されたあと、ハープをピアノに置き換えたドビュッシーの小組曲。 端正な木管と力みを抑えた金管、明るくしなやかで上品なサウンドを楽しみました。

「絵のような風景って、どんな風景やねん」って独り言のようにつぶやいて指揮台に登壇した新谷さん。 くねくねと身体を伸長させ、ケレン味を効かせた演奏を披露。 指揮姿を見ながら聴いていると、聴かせどころを楽しく見せているよう。 会場のみんなにも判りやすいようにとの大阪人らしいサービス精神を盛り込んだ演奏かな、と思ったしだい。 きらびやかなファンファーレに彩られて、にぎにぎしくお開きとなりました。

このオケを聴き始めてそろそろ20年(2000年の第50回定期演奏会より)、タイプの違う二人の団内指揮者を擁してますますもって面白味も出てきたようです。 次回はショスタコーヴィッチの交響曲第10番に挑戦とのこと。 難行か苦行かわかりませんが、こちらも楽しみにします。 お疲れさまでした、そして、ありがとうございました。






posted by fronte360 at 05:18| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月21日

オーケストラ千里山 第27回演奏会

日時:2018年10月14日(日) 13:30開演(12:30開場)
場所:あましんアルカイックホール

曲目:シベリウス/交響詩「フィンランディア」作品26
   シベリウス/交響曲第5番 変ホ長調 作品82
   リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」作品35
   (アンコール)ケテルビー/ペルシャの市場にて

客演:栄嶋道広(vn)、石塚 俊(vc)

指揮:安野英之

PA212370
PA212370 posted by (C)fronte360

栄嶋さんの美音をたっぷりと堪能させていただいた「シェヘラザード」に尽きました。 天理のオケで栄島さんの演奏は何度も聴かせていただいていますが、オーケストラ千里山の機動力のあるサウンドと、繊細かつ奥行きも感じさせる美しいヴァイオリンの音色、そして落ち着いた石塚さんのチェロとも相まった饗宴は魅力満載の演奏でした。

そして個人的には第4楽章での前川典子さんのタンバリン、その妙技に目を見張りました。 立って振りながら普通に打つだけでなく、座って太ももに乗せて叩く、片足を上げて膝にタンバリンを置いて鋭く打つ・・・アグレッシブな演奏を堪能させていただきました。

中近東の熱気をそのままアンコール曲に引き継いた「ペルシャの市場」も楽しくて、最後にシェヘラザードの主題もオマケしての大団円。 会場のお客さんも満足そうな笑顔満載での帰路となりました。

これに先立って演奏された「フィンランディア」は冒頭より、強い意志、を感じさせた重厚な演奏でした。 底鳴りするサウンドでしたが、やや剛直な感じだったかな? 個人的にはもうちょっとしなやかに歌う部分あるのがお気に入りなので・・・一気呵成に寄り切った感じにも思えました。

シベリウスの交響曲第5番、こちらもじっくりと構えたサウンドでの演奏でしたね。 ただ、淡々と進んでいったみたい。 安野さん、オケをきちんと纏めるのに長けてアマオケには貴重なオーケストラトレーナーだと思っています。 が、恣意的な演出をされない方でもあるの、音のパッチワークのようなこのような作品では、終楽章のフィナーレに至ってもきちんと縦線揃っているけどイマイチ感動に繋がらなかった。 そしてこの曲、改めて現代音楽のハシリなんだ、ということに気づいた演奏でした。


ちょっと辛口になってしまったかもしれませんが、最初に書いたとおり、シェヘラザートとケテルビーの市場で笑顔満載での帰路となりました。 ありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。

posted by fronte360 at 06:10| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月29日

同志社OB祝日管弦楽団 第2回定期演奏会

日時:2018年9月24日(月・祝) 14:00開演
場所:高槻現代劇場・中ホール

曲目:メンデルスゾーン/交響曲第5番「宗教改革」
   シューマン/交響曲第1番「春」

指揮:鈴木啓哉

P9252270
P9252270 posted by (C)fronte360

1980年代に同志社交響楽団に在籍されたOBを中心に昨年4月に発足したオーケストラ。 毎年学生が入れ替わるオーケストラなのに、こうやってOBの人たちが集まって演奏されるのを聴かせていただくと、同じ釜のメシを食った仲間、皆さん同じような音色や雰囲気を持って演奏されているのに驚きます。

そしてこの良い点がうまく出たのがメンデルスゾーンの「宗教改革」だったでしょう。 鈴木啓哉さんの指揮のもと、じっくりと構えた奥行きを感じさせる演奏でした。 同じ同響OBの流れをくむ紫苑交響楽団で先日聴かせてもらった「スコットランド」は後期ロマン派の響きを持っていましたが、こちらの「宗教改革」は古典派の流れを汲んでいるような感じ。 金管も打楽器も豊かに響くのですが、弦楽アンサンブルと響きを同じにした落ち着いた色合いがとても素敵でした。

第1楽章冒頭よりじっくりと構えた音楽づくり、徐々に楽器が増えても音色が同じなので奥行きがあります。 主部も堂々とした響きの弦アンサンブル。 重心を低くとりながらも鈴木さんの軽快な棒捌きにぴったりついて素晴らしい演奏でしたね。 正直こんな充実した演奏が聴けるとは(全員が揃わないのにチューングを始めようとしたり、積極的な集客活動もされていないようだし、同窓会の延長かな、とちょっとナメてかかってました。 すみません)。
第2楽章は、ちょっと早めのテンポ設定だったかな、明るい響きで華やいだ雰囲気で進みます。 そしてたっぷりとした木管や中音弦、軽快さと力強さのバランスも絶妙でした。 第3楽章、指揮棒を置いて振る鈴木さん、落ち着いたトーンの第1ヴァイオリンを導き、第2ヴァイオリンとヴィオラの抒情的な響きに乗せら弦アンサンブル。 木管もしみじみと歌って、小編成オケならではの纏まりの良い演奏。 指揮棒を持ってアタッカで終楽章に突入。 木管の端正な響きの序奏より盛り上げてゆきますが、やや明るめの響きでの一体感を保って見事。 じっくりと腰の据わったサウンドでのコーダ。 充実した幕切れに大きな拍手を贈りました。
この曲、初めて聴いたサヴァリッシュ/ニュー・フィルハーモニアのCDよりお気に入りなのですが、なかなか演奏会でかからないですね。 素敵な体験をさせていただきました。 ありがとうございました。

20分間の休憩をはさんでシューマンの「春」、この曲は中学時代(もう45年も前かな)にTVで見た、たぶんサヴァリッシュ/NHK交響楽団以来のお気に入り。 演奏会でも何度も耳にしていますが、今日の演奏は気合が入りすぎたのでしょうか、一所懸命がそこらじゅうで出ている感じで少々疲れた演奏に聞こえました。 指揮者の鈴木さんも各パートに指示を出して進めてましたが、前曲のように抑えるとか纏めることはあまりしなかった印象を持ちました(そう聞こえたからかも)。
第1楽章、堂々としたトランペットとホルンのファンファーレより、弦楽アンサンブルも力強く、キレよく進みます。 前曲では響きを深くとっていたティムパニもここでは強打で切り込んできました。 パワフルな音楽として進みます。 ただそれぞれのパートが一所懸命で、前に前に・・・という感じ。 しかも早めのテンポで進むので、終わるころには疲れてしまいました。 第2楽章、鈴木さんが指揮棒を置いて振り始め、たっぷりとした弦のアンサンブル。 低弦の上に中音弦そして高音弦がのって上々の滑り出し。 粘り強い響きの木管も良かったのですが、ここでも各パートがそれぞれ前に前に・・・って感じ。 ミスは無い(と思う)けど、練り込み不足なのかな(お前の修業が不足している、と言われるかもしれませんが)。 指揮棒を持った鈴木さんより、トロンボーンの落ち着いた響きを導きだして第3楽章へ突入。 フレーズを短く切ってタイトな音楽となりました。 弦と管楽器が呼応しながら力を更に増してゆきますと、さらに重厚かつ力強い音楽ですが、弦楽器の編成は 7-8-7-4-3 なのに、管楽器が 12 や 14型のオケの響きのように感じました。 終楽章、ここも打点を明快にして足早に進んでいった印象。 スピードを上げて力強いフィナーレでした。
シューマンって、オーケストレーションが下手なので響きが重なって鈍い響きになる・・・などと書物などに書かれていますけれど、その渋い響きにも魅力を感じている当方としては、直線的で剛直な音楽となってしまっては、ちょっとギブの気分でした。

いつもはこんな風には書かないけれど、前半の「宗教改革」がとても素晴らしい演奏だっただけに正直戸惑いました。 終演後、鈴木さんも難しい曲だったのでアンコールはありません、と言われていましたが、決して下手な演奏ではありませんでした。 鈴木さんによく喰いついていましたし、目立ったミスも1ヵ所だったかな。 同じ釜のメシを食った仲間、皆さん同じような音色や雰囲気をお持ちですが、その良い面がよく出て纏まったのが「宗教改革」、まじめに正直に曲にぶつかったのが「春」だったのではなかったかな、そんな風にも思いました。 とにかく、みなさんお疲れさまでした。

posted by fronte360 at 06:09| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月22日

墨染交響楽団 第24回定期演奏会

日時:2018年9月17日(月・祝) 14:00開演(13:00開場)
場所:文化パルク城陽・プラムホール

曲目:モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
   モーツァルト/交響曲第36番「リンツ」
   ブラームス/交響曲第3番
(アンコール)ブラームス/セレナード第1番 第4楽章「メヌエット」

指揮:大島正嗣

P9202219
P9202219 posted by (C)fronte360

35才、気鋭の指揮者・大島正嗣さんを迎え「清新」という言葉がピッタリときた演奏会。 オーソドックスに振る大島さんでしたが(3曲ともに暗譜でした)、オケとの相性も良かったように思います。 指揮者とオケが一緒になってフレッシュで美しく響かせたモーツァルト(ホルンは2本ともナチュラル・ホルンでしたね)、正攻法でバランス良く鳴らしたブラームスは重厚でもあり、とても聴き応えありました(指揮者の手が完全に下がるまで沈黙を守った客席にも拍手)。

文化パルク城陽で開催されていたフリーマーケットを見てから(けっこうコレ楽しみなのです)10分前にホールに入場したら、お客さんがたくさん入ってました。 2・3階席は締め切られているので、今回もまたステージ近く、前から4列目 D-14 に落ち着くことにしました。 目の前は1st.ヴァイオリンの3プルト目かな、指揮者の表情もよく見えます(今月これまでの3回の演奏会、いずれも前方の席で聴いていて、右側・中央・左側に座ってますね)。 今回は周りにお客さんが少ないのと、座席が身体を包み込むような形状なので、のびのびと音楽に浸ることができました。

まずはモーツァルトの歌劇「魔笛」序曲。 指揮台に上った指揮者の大島さん。 長身でスリム、カッコ良いオトコですね。 指揮台の上でしばし沈思黙考したあと、さっと振って明るく透き通るようなファンファーレで開始。 冒頭こそ慎重でやや手探り感もありましたが、キビキビとした音楽として波に乗ります。
そしてファンファーレ、ここは明るくもおだやかな表情が良かったですね。 ここから不安げな雰囲気も滲ませながら、また快活な音楽としますが、低弦がうまく絡んで曲を支えているので軽薄にはなりません。 しっかりとした構成を保ちつつも、最後まで快活で美しい音楽としていました。 気持ちのいいモーツァルト、よかったですよ。

演奏が終わり、いったん奏者全員が楽屋に引き上げましたが、なんとホルン奏者の2人ともナチュラル・ホルンを持ってました(トランペットは、ロータリーでもなくピストン式でしたけど)。 ファンファーレのおだやかな表情もここから出ていたのかもしれませんね。

続いてモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」、ここでもナチュラル・ホルンを持って奏者の2人が席に着きました。 弦楽器の編成は、先と同じく 10-8-6-6-6 の通常配置。

モーツァルトって聴きやすいけれど、そのように演奏するはとっても難しいと思っていますが、「リンツ」もまたとても気持ちの良いモーツァルトとなっていました。
第1楽章冒頭の充実した和音、堂々としながらも軽快さと落ち着きをも併せ持って進めてゆきます。 しなやかで弾力のある弦楽アンサンブル、落ち着いたトランペットや木管。 響きのキレの良さよりも、音のすき間を作らないよう、巧く各楽器の響きで埋めている感じかなぁ。 第2楽章、大島さんここでもていねいで几帳面に振り、落ち着いた響きでもって美しさを演出していたのじゃないかな。 第3楽章、ここでも響きのキレよりも響きの美しさをたっぷりとさせていたみたい。 終楽章、ここでぐっと力をこめてパワフルになりましたが、まろやかな響きによる音圧。 ていねいに音を紡ぎ、バランスよくオケを鳴らしていました。 若い指揮者と若いオケメンバーの一体感でしょうね。 各パートが主張しながらもよく纏まっており、清新なモーツァルト、気持ちいいモーツァルトとなっていました。

20分間の休憩をはさんでメインのブラームス。 オーケストラの編成が 12-10-9-8-7 に拡大しました。 その分、オケの響きに厚みと馬力が出ましたね。 正攻法でバランスのよく響かせた音楽として、終楽章のフィナーレではキレもあって十分に熱い音楽となりました。 熱く盛り上げ、そして静かに終わるエンディング、大島さんの腕が完全に下り切るまで拍手を待った観客もまた良かったですね。 若い熱気に縁どられた正攻法のブラームスをたっぷりと楽しませて頂きました。

第1楽章、力強いホルンなど管楽器と弦楽アンサブルに、強打のティムパニも交えてそれぞれの響きが綺麗にブレンドされた堂々の開始。 しっかりとタメを作り、若いオケらしくやや明るめの響きでした。 大島さん、しっかりと手綱をとってていねいに曲を進めますが、クラリネットなどやや大きめの音だったりして、オケからは覇気ある響きが垣間見えてきました。 第2楽章、ここでもクラリネットの響きがやや大きめだったかな。 落ち着いたヴァイオリンと、ヴィオラ・チェロの響きが左右よりステレオ効果で届いてきました。 第3楽章、チェロの深い響き、ヴァイオリンの旋律は憂いを秘めていますが、泣きが入るほど臭くなりません(この楽章、泣きを入れて演歌のようにするのが、けっこうお気に入りだったりしますが、若いオケと指揮者ではこうはなりませんね)。 ホルンは柔らかく素敵な響き。 ていねいにバランスとっていたのが印象的でした。 終楽章、分厚い響きながら見通しの良い開始、じっくりと溜めて、鋭く切り込む、充実した開始。 大島さんのコントロールのもと熱い音楽が整然と進み、ヴァイオリンがちょっとタメを作ってから冷静に熱くピークを形成。 そして明るい響きがなだらかに下りて(しみじみ感がないのが若さですね)静かに着地。 音が無くなり、大島さんが高く掲げた腕がゆっくりと下りて、十分に下がったところから拍手。 この静寂も良かったですね。 清々しい演奏でした。

若い指揮者と若いメンバーの多いオーケストラですが、常に正攻法であったように思います。 「清新」という言葉がピッタリときた演奏会でした。 聴かせていただいて、とても気持ちよくなりました。 有難うございました、そして、皆さんお疲れさまでした。


posted by fronte360 at 09:08| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月15日

大阪市民管弦楽団 第88回定期演奏会

日時:2018年9月9日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール
曲目:ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」より
              「前奏曲とイゾルデの愛の死」(演奏会版)
   プーランク/バレエ組曲「牝鹿」
   ブラームス/交響曲第4番ホ短調
   (アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第1番

指揮:金 洪才

P9102162
P9102162 posted by (C)fronte360

久しぶりの金洪才さんの指揮による演奏会を楽しみました。 腰の据わった弦楽アンサンブルを主軸に、響きの角を取った肌触りの良い管楽器・打楽器で彩られた上質な大人の音楽。 濃密でありながらも重くならないのは、オケの持っている技術と主体性を巧く引き出しているからでしょうね。 いずれも聴き応えのある演奏でしたが、ブラームスの交響曲第4番、金洪才さんらしい静かな情熱と誠実、そしてウェットな響きがよくマッチした充実した演奏に大きな拍手を贈りました。

金洪才さんの指揮による演奏会、調べてみると2007年7月の大阪大学交響楽団第89回定期演奏会以来となります。 大阪市民管弦楽団とは2000年9月の第55回定期演奏会以来なので18年ぶり(この年に生まれた生まれた子供は高校3年で選挙権も持てるほどの昔になってしまいました)。 ですが、見た目やや白髪になったかなと思いつつも、出てくる音楽は以前と変わらず大人の響き。 腰の据わった弦楽アンサンブルを主軸に、しかも今回、弦楽編成が 14-14-8-9-9 の通常配置。 コントラバス9本+チェロ9本と重量級ですが、まったくもたれたり引きずるようなことなどなく、バランスの良い腰の据わったサウンドを提供。 全体的にウェットに響く中高音弦ともマッチしたアンサンブルを堪能しました。

今回、前から5列目中央(目の前が指揮台)というポジションで聴いていましたが、冒頭のトリスタンとイゾルデ」の「前奏曲とイゾルデの愛の死」より弦楽アンサンブルを堪能。 分奏がしっかりとしていてステレオ効果抜群。 金洪才さん、煽ることなどなく、各パートに腕を出して「さぁどうぞ」「はい、あなた」といった感じで淡々と曲を進めてゆきますが、低弦の厳かな響き、ウェットなヴィオラ、艶やかなヴァイオリン、豊穣な響きが紡ぎ出されて進んでゆきました。

プーランクのバレエ組曲「牝鹿」。 音のパッチワークのようなこの曲を、躍動感をもって、ときには低弦の数をもって重量感も感じさせつつ、軽快に進めてゆきました。 ミュートを効かせたトランペットやホルンの活躍。 残念ながら前から5列目ではよく見えませんでしたが、音はぞんぶんに楽しませてもらいましたよ。 1曲目、軽快ながらも重量感を伴って進めます。 ホルンがいい味出していたのと、控えめながらヴィオラの渋く明るい響きがよかったな。 2曲目、オーボエを始めとする木管による上々の出だし。 ミュートしたトランペットが哀愁を感じさせました。 3曲目、リズム感よく小躍りするような感じ。金さんにきちんと統率されたオケが躍動感を持って進みますが、色合い自体はややウェットで地味な感じ(だから上質)。 4曲目、ここでも木管がチャーミング、おどけた金管と音のパッチワークみたい。 5曲目、躍動感をもった終曲、管と弦の呼応、ヴァイオリンとヴィオラの呼応もあってノリノリでしたね。 終始、金さんの棒のもと、表目的なきらびやかさとは異なった、説得力のある演奏を楽しみました。

20分の休憩のあと、メインのブラームスの交響曲第4番。 金洪才さんらしい静かな情熱と誠実、そしてウェットな響きがよくマッチした自然な高揚感、響きこそやや明るめですがじっくりと構えた濃密な大人の音楽を楽しみました。

第1楽章、舞台袖より出て来られて客席に一礼、すぐさまオケに向いて棒を振り始めます。 ちょっと性急かとも思いましたが、金さんは淡々と曲を進めてゆきます。 9本のコントラバスがしっかりと曲の重心を支え、9本のチェロもたっぷりと弾いてブラームスの世界を演出。 弦の濃密なアンサンブルですが、やや明るい響きが折り目正しく進みます。 そして自然な高揚感でもってピークを形成。 オケの持てる力・自主性に委ねているかのようにも感じました。
第2楽章、たっぷりとしたホルン、木管楽器もウェットに響いて進みます。 暖かな響きのピチカート、そしてヴァイオリン、ヴィオラのコクのある響きが良かったですね。 前から5列目、弦楽アンサンブルを堪能しました。
第3楽章、タイトな金管も低弦に支えられ、自然な高揚感でもって刺激的にはなりません。 各パート、よく鳴っていました。 決して余裕あるようには思いませんが、けっこう冷静に聴けてしまったから、余裕もあったのかな。
終楽章、'しっとり'ではなく'じっとり'と言ったほうが良いヴァイオリンとヴィオラの響きが両翼より包み込むような感じ。フルートの淡々とした響きの中に枯淡の境地のようなものを感じました。巧かったですね。 終結も熱い響きが濃密にブレンド、その熱い思いを開放させずに内包したままの大人の音楽として着地。
腰の据わった弦楽アンサンブルを主軸に、響きの角を取った肌触りの良い管楽器・打楽器で彩られたサウンドの上質な演奏をたっぷりと楽しませて頂きました。 充実した演奏に大きな拍手を贈りました。 みなさんお疲れさまでした。


posted by fronte360 at 06:10| Comment(0) | 18-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする