2016年03月05日

紫苑交響楽団 第27回定期演奏会

日時:2016年2月28日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:八幡市文化センター・大ホール

曲目:スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
   グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲
(アンコール)プロコフィエフ/無伴奏ヴァイオリンソナタ op.115 第3楽章
   ドヴォルザーク/交響曲第6番
(アンコール)スメタナ/歌劇「売られた花嫁」より第3幕「道化師の踊り」
(アンコール)J.ウィリアムス/スターウォーズ「帝国のマーチ」

独奏:石上真由子(vn)

指揮:牧村邦彦

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P2282908 posted by (C)fronte360

牧村さんらしく、スマートでカッコ良く、それでいて底力を感じた素晴らしい演奏会でした。 牧村さんは淡々と棒を上下に振るだけなのだけれど、紫苑交響楽団らしくきちっと揃って近強い弦楽アンサンブルで曲を進め、管楽器も好調でどの曲も聴き応え十分。 またグラズノフのヴァイオリン協奏曲を弾いた石上さん、キレが良い美しい響きながらも余韻のある深みがまた魅力的でした。 そして最後の最後、スターウォーズの R2-D2 が舞台袖より出てきて、ダースベイダーのテーマまで飛び出すサービスもありました。 コンサートマスターが客席に一礼して散会したオケに会場から暖かい拍手を贈られたことがこの演奏会の成功をよく物語っていたと思います。

近隣の火災により演奏開始を10分遅らせての開演。 確かにホールに来る途中のバス通り、片側車線を通行規制していて、鎮火した火災現場を横目で見ながらホールに到着しました。 その時、ホールへ向かう方向のバス停にはバス待ちの方が沢山おられ、歩いてホールまでいった当方を追い抜くバスは1本もなかったような・・・ とにかく10分遅れでの開演、整列入場されたオケは弦楽器 12-10-10-9-6 の通常配置。 低弦が厚い構成ですね。

スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲、張りのあるソリッドな響きでの開始。 牧村さんは右手に持った棒を単に上下しているだけだけれど、筋肉質の響きが推進力を持って進みます。 とくにヴィオラの深く張りのある響き、これがズシリと心に響きました。 自然な盛り上がりのクレッシェンド。 牧村さん、機械仕掛けの人形のようなカクカクした動きで盛り上げてましたね。 透明感の高い木管の響き、余韻の少ないティムパニの打音など、終始ソリッドな演奏が印象的でした。

いったん第1ヴァイオリンのみ舞台袖に下がってソリスト用の空間を空けて再登場。 チューニングして準備万端、石上真由子さんが薄紫のドレスで登場しました。 写真ではボブカットでしたが伸ばした髪をポニーテールにして白い髪飾りを付けていたかな。 プロとしての活躍をしながらも京都府立医科大学の学生で医師も目指しているから驚きです。 天は時には二物も与えるものなのですね。

グラズノフのヴァイオリン協奏曲、キレの良い美しい響きながらも余韻のある深みが魅力的、一気に惹きこまれました。 オーケストラも柔らかな響きでしっかりとサポート。 ロマン溢れるメロディを深く美しくたっぷりとした余韻をもって弾き進めますと、ここでもヴィオラがコクのある深い響き、木管の柔らかくもまた芯のある響きによる間奏、素適ですね。 カデンツァ、安定したテクニックで軽やかながらも思索的な雰囲気とスケールの大きさをも表現して素晴らしかった。 フィナーレではオケの明るい響きと艶やかなソロが一体となって見事な着地として締めました。
そしてアンコールもまた奥行きのある深い響きが素敵。 単に音が美しい、綺麗なだけではない深みのある音を堪能しました。

15分間の休憩を挟んでいよいよメインのドヴォルザークの交響曲第6番。 牧村さんのスマートでカッコ良い音楽の骨組みに、引き締まって厚い低弦がベースになったオーケストラサウンドを堪能しました。 牧村さん、余計な感情を排したかのように棒を淡々と上下に振って曲を進め、時に起伏を付けて筋肉質でパワフルになりますが節度ある盛り上がりがまたカッコ良い。 牧村さんの師匠オトマール・スィトナーがベルリン国立歌劇場のオケの振った演奏をより若々しくした感じに思いました。

第1楽章、透明感のあるヴァイオリンと引き締まった低弦、重心を低くしたサウンドで開始。 左のヴァイオリンと右のコントラバスやブラスとの音の対比が面白い。 徐々に引き締めての盛りあがり、少し開放的にして起伏を付けていましたがぎゅっとまた搾って変な感情を乗せずストレートな音楽造り。 主題を繰り返して、自信たっぷりな音楽に参りました。 恰幅の良さ、スケール感も申し分なし。 ただし繰り返される主題、いずれも自信たっぷりな音楽で聴き手として少々疲れを感じるなど贅沢ですね。 たっぷりとして落ち着いた着地でこの楽章を締めました。

第2楽章、オーボエを始めとする管楽器そしてヴァイオリンもゆったりとした響きでの開始。 低弦もここでは柔らかく響かせてました。 落ち着いたホルン、ゆるやかに進める恰幅の良い音楽が素適でした。 叙情的な旋律、余計な色をつけずに作品そのものに語らせているような感じ。 スラブ的というよりドイツ的な感じなのは師匠スィトナー譲りかしら、と思ったしだい。

第3楽章、タイトながら流麗に曲を進めます。 ここでも低弦が芯になって、左に配されたヴァイオリンとの音のブレンド。 管楽器と弦楽器の会話もうまく決めて、機能的なオケの響きが推進力を持って進むのに一気に惹き込まれました。 タイトなホルン、スマートで力強くもまたチャーミングな木管の彩りをもって曲が進み、中間部の瑞々しい木管楽器と低弦の柔らかくもまた芯のある響きとの会話。 そしてまた牧村さんが棒を上下に振って主題を力強くもどして流麗に進めて締めました。

終楽章、ふわっとした開始より徐々に力を込めて全奏、牧村さんがすっと上げた右腕をすっと降ろし今度は小さく上下に振ります。 今度は牧村さんが左の拳でパンチを繰り出してパワフルに。 どの楽器も突出することのない引き締まったオーケストラサウンドを堪能。 旋律で聴かせるのではなく、よく訓練されたオケの響きでかっぷくの良い音楽として、ある種無駄のないインターナショナルなドヴォルザーク。 ストイックな音楽造り。
 一気に駆け抜けて全曲を締めました。 素晴しい演奏に大きな拍手を贈りました。

アンコールもまたカッコ良い音楽造りながら、ちょっと伸び伸びとした感じでの演奏。 拍手が鳴り止まず、カーテンコールを数度行ってちょっと落ち着いたかな、そろそろお開きかな・・・、と思った頃、舞台の左袖が明るくなって、なんとスターウォーズのロボット R2-D2 が舞台袖より出てきて、指揮者無しでダースベイダーのテーマが開始。 すると牧村さんがライトセーバー片手に登場。 指揮台では指揮棒に持ち替えて演奏を続けます。 タイトで迫力満点のブラス。 ここでもまたオーケストラサウンドを満喫しました。 曲の最後はライトセーバーに持ち替えてフィニッシュ。

ようやく散会となってコンサートマスターが客席に一礼、楽屋に引き上げるオケメンバーに会場から暖かい拍手が自然発生的に贈られたことが演奏会の成功をよく物語っていましたね。 とにかく皆さんお疲れさまでした。

 
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2016年02月21日

第5回ホール・バルティカ演奏会

日時:2016年2月14日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:伊福部昭/交響譚詩
   伊福部昭/オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ
   カール・オルフ/カルミナ・ブラーナ
(アンコール)カール・オルフ/カルミナ・ブラーナより
               第10曲「たとえこの世がみな私のものでも」

独奏:渡辺領子(マリンバ)

独唱:内藤里美(S)、山本康寛(T)、松岡剛宏(Br)

合唱:混声合唱団ホール・バルティカ、池田ジュニア合唱団

演奏:セント・マーティン・オーケストラ

指揮:河崎 聡

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タイトできりりっと引き締まった合唱とオケによる熱い演奏に感動しました。 いずれの曲も土俗的ともいわれる曲ですけれど、洗練されたリズムに乗せた現代的な演奏が印象的でした。

ザ・シンフォニーホールはもう何度も来ていますが、自由席であったのは始めてじゃないかしら。 で、迷わず最上階に上って2階席最前列AA-44を確保。 足もとが広くて楽ちんです。 合唱団はクワイア席、児童合唱団は2階席LA区画に配置され、オーケストラの弦楽器は 10-9-7-7-6 での通常配置となっていました。 パーカッションがステージ中央奥から左側にずらりと配されていたので、ホルンがポツンと離れてヴァイオリンの後ろに配置されていたのが目にひかれました。

まずは伊福部昭の交響譚詩、アマオケ演奏会でも4〜5回は耳にしているお馴染みの曲ながらタイトで明るく張りのあるサウンドが印象的だった第1譚詩、なかでも甘さを含んだ輝きのあるトランペットが素晴らしかったですね。 もちろん弦・木管・打楽器もよく響き合って聴き応えありました。 第2譚詩では落着いたサウンドで深淵な雰囲気を醸し出しながらも決して引きずらず丁寧な音楽造り。 ここでは木管が活躍、とくにコールアングレがいい味を出していましたね。 集中力を増してそっと終わったあと、河崎さんの棒が完全に降りてからの拍手のタイミングも見事。 より深く演奏を味あわせて頂きました。

続いて伊福部昭のオーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ、こちらは初めて耳にした曲ですが、マリンバ特有の柔らかさと深さを兼ね備えた響きの多い打音、しかし時に激しく打ち、その変幻に魅了されました。 オーケストラとの会話もよく決まっていましたね。 前半は大太鼓のドンドンと打つ音も印象的。 粘り気を持たせた弦楽器の響きを始め重心の低いオーケストラサウンドとも一体感を増した後半、マリンバの技巧的なパッセージの連続、これらが相俟って感動的な音楽となりました。 これをスパッと断ち切った幕切れもまた素晴らしかった。 いい音楽を聴かせて頂きました。

20分間の休憩を挟んで、いよいよメインのカルミナ・ブラーナ。 好きな曲なので数種類の録音も持っており、先日は図書館で借りた室内楽版なるものも耳にしましたが、生演奏で聴くのは始めてです。 大きな期待を持って臨みましたが(こんな時に裏切られる事が多々あるのですが)、期待を裏切ることのない素晴らしい演奏に大いに感じ入りました。 演奏終了後数日経ってもアンコールで演奏されたパッセージや他の旋律が時折りぐるぐると頭の中を回っております。

最大の功労者は合唱団、よく訓練されてびんびんとストレートに届いてくる声・声・声・・で圧倒。 男声はタイトで迫力ありましたね。 児童合唱もよく纏まって立派でしたし、女声は柔らかく響いていたが印象的でした。 独唱陣ではバリトンの松岡さん、艶やかでよく透る声でありながら声量も十分で見事な歌唱を堪能。 ソプラノの内藤さんはやや甘さを伴って伸びやかな声、ソリストとしての華やかさを持っておられました。 テノールの山本は難しい役どころ、頑張っておられましたが当方のイメージとは残念ながらちょっと違いました。 オーケストラはよく纏まって弾力ある響き、スピード感もあって見事な演奏でした。 パーカッション大活躍なのですが、管打楽器がとてもよくまとまって見事に決めていました。 河崎さんは終始にこやか、奇を衒わずしっかりと全体を巧く纏めつつ、冒頭より見事なリードで推進力を持った引き締まった演奏としていました。 あれよあれよという間に終った、そんな感じ。 皆さんお疲れさまでした。 素晴しい演奏を有難うございました。


 
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2016年02月03日

墨染交響楽団 第19回定期演奏会

日時:2016年1月31日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:文化パルク城陽・プラムホール

曲目:シューベルト/交響曲第7番「未完成」
   ブラームス/ 交響曲第4番
(アンコール)レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲第3番「シチリアーナ」

指揮:滝本秀信

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明るい響きが特徴的だったシューベルトの未完成と若々しいパワーを感じた熱いブラームスの交響曲を堪能しました。

正直、未完成交響曲というのは苦手な曲なのですが、このように明るい響きである種屈託のなさも感じさせる演奏に、とても好感を持ちました。 もちろんその裏には、弦楽各パートがよく纏まり、中低弦を芯にしっかりとした構成感を持っていたこと。 これが重要で、聴き応えのある演奏としていました。

指揮者の滝本さん、ちょっと個性的な棒ではなかったでしょうか。 右手が単に拍を刻むのだけではなく、時に身体の動きも含めてニュアンスを伝える棒の動き。 オケもそれによく応えていましたね。 主題が繰り返されても退屈などせずに最後まで楽しませてもらいました(徒手体操のような几帳面な指揮で、単調に主題が繰り返されると聴き飽きてしまうことが多々あるのですけれど)。 少々ストレートに響き、少々粘り気が欲しい感じもしましたが、大変満足しました。

メインのブラームスの交響曲第4番も同様な感じのストレートな演奏でしたが、よりパワフルな感じの熱い演奏でした。 ブラームス最後の交響曲ですけれど、寂寞とした感じはなかったですね。 明るく若々しい響きを基調としていたので、青春の息吹のようなものも感じました。 ここでも滝本さん、オケをきちんと統率しながらも、流麗な動きでオケの自主性を巧く引き出し、演奏を彩っていたようです。 その分、抑制をかけて音量を縛ったりすることは少なく、個人的にはちょっと元気ありすぎかな・・・と感じる面もあって、少々聴き疲れしてしまった、というのが正直なところですが、これは当方が年寄なので許してください。 それにしても、オケの皆さんがこの演奏にかける意気込みは十二分に伝わってきましたよ。 軽薄に響くことのない真摯なブラームスでした。 こちらの演奏もまた好感を持って聴かせてもらいました。

始めて聴く指揮者とアマオケでしたけれど、ホームページによると、社会人と学生で構成されていて平均年齢は30歳前後だそうですね。 指揮者の滝本さんとも度々共演されているようです。 そんな若いオケも結成10年で、次回の第20回定期演奏会は京都コンサートホールでサン=サーンスのオルガン付きに挑戦されるそうです。 期待が高まりますね。 とにかく皆さんお疲れさまでした。

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2016年01月27日

吹田市交響楽団 第80回定期演奏会

日時:2016年1月24日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:吹田市文化会館メイシアター・大ホール

曲目:モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
   ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 -(*)
(アンコール)ヘンデル(ハルヴォルセン編曲)/パッサカリア
   ストラヴィンスキー/「ペトルーシュカ」(1947年版) -(**)
(アンコール)「ペトルーシュカ」(1947年版)より「ロシアの踊り」再演

独奏:馬渕清香(vn -*)、池村佳子(vc -*)、大奥由紀子(p -**)

指揮:米山 信(常任指揮者兼音楽監督)、新谷 武(-**)

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アマオケを15年以上聴き続けてきましたが、ブラームスのドッペルとペトルーシュカはプロオケも含めて初めて実演に接する曲。 大いに楽しみにして伺いましたが、よく演ったなぁ〜と、期待を裏切らない演奏に満足しました。
「フィガロの結婚」序曲、中低弦の厚い響きを基調としながらも快活さを十分に持った演奏会ピースとしての演奏。 ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲では柔らかで息のあったソリストとオケによる実演で室内楽的な面白い曲であることが感じられて楽しみました。 そして難曲「ペトルーシュカ」、冒頭こそ堅さを感じましたが「ロシアの踊り」あたりからこなれてきて、ここで流れをぐっと引き寄せたあと第4部は一気呵成に流れに乗って演奏しきった感じ。 十分に引きつけて粘り気を持たせたオケ響き、たっぶりとした大きな音楽としてとても聴き応えありました。 満足しました。
ここ1年、予定が合わずこのオケに伺う機会を得ませんでしたが、次回定演ではこれまた難曲のシベリウスの交響曲第6番を演奏されるとのこと。 更なる楽しみも増えました(予定が入らない事を祈ります)。 とにかく皆さんお疲れさまでした。

簡単に演奏会を振り返ってみます。

いつもどおり2階席中央通路後ろの足元の広い席に陣取りました。 天井が近いせいもありますが、数10年に一度の寒波で凍える外界とは別世界で熱気に包まれて、セーターも脱いでの観戦となりました。
定刻、左右より整列入場されて弦楽器は 14-13-9-8-4 の編成だったでしょうか、通常配置。 コンマスによるチューニングを終え、指揮者の米山さんがゆっくりと歩いて登場してモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が始まります。

中低弦の厚い響きを基調としながらも快活さを十分に持った演奏でした。 いつも同女のオペラ公演でのオケピットで演奏されるのを耳にしているので、最初こそ重厚さにちょっと違和感を持ちましたが、演奏会ピースとして頭を切り替えて聴くと、とてもよく纏まった演奏として楽しめました。 木管アンサンブルと弦の響きのトーンがよく合ってましたし、ホルンとトランペットも全体の響きにきちんと溶け合っていたのが見事でした。 オケピットでの演奏で聴くと、オケの楽器の数も違いますが、けっこう甲高い響きでラッパが主張して耳につくのですけどね。

終演後、オケのメンバーがさっそく出てきて座席を移動させたりひな壇を用意して準備完了。 13-12-9-8-7 の編成になったでしょうか(老眼も進んでいるので見誤りがあると思いますが)。 真っ赤のドレスの馬渕清香さん、濃いブルーのドレスの池村佳子が登場されて、いよいよブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲が始まります。

第1楽章、明るく勢いのあるオケの響きでの開始。 チェロがややくすんだブラームスらしい響きを持った独奏で会場を支配しました。 艶やなか響きのヴァイオリンも加わり、慎重につけるオケとともに曲を進めます。 オケは中低弦の響きが芯になっていて堂々たる伴奏です。 そのせいかソロがやや繊細に感じたのですが、真摯に曲に向き合い、また美感も持たせた演奏としてオケと対峙する感じだったかしら。 要所をしっかりと押さえたオケの安定感のある堂々たる演奏でこの楽章を締めました。

第2楽章、伸びやかなホルンの響きで開始。 憧憬を感じさせる響きをもってヴァイオリンとチェロのソロが絡みます。 とても柔らかな響き。 CDなどで聴いているとけっこう退屈してしまうのですけれど、実演ではソロがそっと語りかけあい、オケとも絡んだ会話となっていて、これを楽しみました。 前の楽章では重厚だったオケの響きもこの楽章では柔らかな響きとし、最後も十分に伸ばしてそっと着地。 すばらしかった。

第3楽章、軽やかなチェロのソロで開始、ヴァイオリンも艶やかで柔らかな響きで歌い返す優しい音楽。 オケの響きが徐々に力を増して勇壮に。 ソロも熱気を秘めた演奏を展開しますが、柔らかな響きはそのままに自然な流れ。 主題を戻し、漲った力はそのままにオケもピタリと付けてまるで室内楽のような楽しさで全曲を堂々と締めて熱い拍手が沸き起こりました。

CDなどでこの曲を聴いていても、いまいちちぐはぐな印象というか、面白味をあまり感じずにいたのですが(クレーメルとマイスキーの演奏も一種エキセントリックな演奏は楽しめても、曲としての面白味はいまいち感じませんでしたが)、今回の柔らかで息のあったソリストとオケによる初の実演体験、室内楽的な面白い曲であることが感じられて楽しめました。

アンコールは、ソリスト2名によってヘンデルのパッサカリア。 四次元三重奏団を組まれているとのこと。 それで協奏曲でも息がぴったりと合っていたのですね。 あとで調べてみるとかなりの難曲とのことでしたが、伸びやかで軽やかに歌う演奏を楽しみました。

15分の休憩。 この間にピアノを指揮台の真正面(ピアニストと指揮者が面と向かう位置関係)に置かれました。 オケのメンバーが登場、編成は 14-13-10-8-7 みたい。 メンバーが着席しても、なんとなくステージや客席がどよめいている感じなのは、とにかく難曲ですからね、意気込みと不安が入り混じっているからかな、などと思ったしだい。 コンマスによるチューニングを終え、指揮者の新谷さんがいつもどおりの表情で登場。 客席に深々とお辞儀してから登壇、いよいよペトルーシュカが始まります。 聴く当方も期待に不安が入り混じった気分、固唾を飲んで指揮棒を見つめました。

指揮棒が動いて、フルートがお馴染みのメロディを奏でます。 やや緊張した雰囲気ながら離陸は成功。 ただしチェロの演奏は緊張に押されたのか音量が小さめでバランスが悪い。 全奏となっても堅さのためかやや絶叫調な印象。 クラリネットのソロ、緊張気味ながらクリア。 新谷さんもいつもよりも丁寧に振っているみたい。 タンバリンやトライアングルも音が小さめで皆さん慎重に曲を進めているようでしたが「ロシアの踊り」あたりからこなれてきて、ここで流れをぐっと引き寄せてあとは流れに乗ったみたい。

太鼓の連打、ここではまだちょっと大人しめだったかな(後になるほど豪快に打っていたようです)。 第2部、木管楽器のソロも堅さが取れて、フルートやクラリネットがいい音を聴かせていましたね。 各パートがよく揃っていますし、また新谷さんの的確な指示で、オケ全体の会話も見事に決まってノッてきた印象。 太鼓の連打も豪快になりました。

第3部、オケの響きにコクも感じられて土俗的な響きとした「ムーア人の部屋」、注目のトランペットによる「バレリーナの踊り」もクリアして見事でした。 オケは相変わらずよく纏まっていて、不協和音感もバッチリと決めて、流れに完全に乗って進んでいる、という感じ。 そして大太鼓の腹に響く音も素敵、そしてティムパニの連打も更に豪快に決めて第4部に突入。

十分に引きつけて粘り気を持たせたオケ響き、それでたっぶりとした大きな音楽。 新谷さんもここまで来ると、にこやかな表情でいつものややオーバーアクションで曲を盛り立てます。 見事な進行ですね。 タイトなホルンの響きも素晴らしい。 そしてオケの各パートの響きが重ねられた力強さに美しさがあります。 オケは流れに乗ってノリノリな感じ、聴いている当方もそんな流れに乗せてもらって安心して聴き進みました。 最後まで疲れを感じさせることなく、進行したのも見事でした。 そしてその流れが急にゆるやかになった静かなエンディング。

新谷さんの腕が下り、真っ先に拍手したのですが・・・パラパラと拍手が続いたものの、新谷さんがその場で固まって振返らないので、少々不安になって拍手をやめてしまいました。 はにかんだように振り返った新谷さんに、会場より軽い笑いととともに拍手が再開。 ちょっと不気味なエンディングですものね。 仕方ないか。

第80回の定演なのでいつもよりも難しい曲に挑戦された演奏会とされたとのこと。 そのためアンコール曲は用意されていないが、拍手が止まないので「ロシアの踊り」を再演。 本番での緊張感を潜り抜けた余裕を感じさせる演奏として幕。
ここ1年、予定が合わずこのオケに伺う機会を得ませんでしたが、大変満足できた演奏会でした。 次回定演ではこれまた難曲のシベリウスの交響曲第6番を演奏されるとのこと。 更なる楽しみも増えました(予定が入らない事を祈ります)。
とにかく皆さんお疲れさまでした。


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