2016年12月30日

奈良女子大学管弦楽団 第46回定期演奏会

日時:2016年12月24日(土) 13:30開演(12:30開場)
場所:奈良県文化会館・国際ホール

曲目:フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲
   ベートーヴェン/交響曲第1番
   ブラームス/交響曲第1番
(アンコール)クリスマス音楽メドレー

指揮:木下麻由加(客演)

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木下麻由加姉さんに導かれたオケが一丸となったフレッシュな演奏を楽しみました。 麻由加姉さんは淡々と振って見栄をきったりすることはなく、どの曲も端正なつくりながらもオケの持つ力を十二分に引き出していましたね。 またオケもそれに見事に応えて、各パートの纏まりもよく腰の据わったサウンドながらドライブ感も自然と出てきた感じ。 いい演奏会でした。

個人的にはベートーヴェンの交響曲第1番、オケの明るい響きを基調とした真摯な演奏を1番に取りたいですね。 落ち着いた腰の据わったサウンドですが、各パートの分離が良くて軽快でしなやかな演奏。 華美にならない管打楽器は響きは良く、弦との会話も見事。 自分たちのサイズで演奏された自分たちの音楽と、29歳の青年ベートーヴェンの若々しい息吹が見事にマッチした素晴らしい演奏に感じ入りました。

メインのブラームスも同様な演奏で、なかでも終楽章での自然な盛り上がりが素晴らしかった。 麻由加姉さんが一時指揮棒を左手に持って右腕を軽く動かす程度に振り、オケに全幅の信頼を寄せて熟成させた音楽をまた指揮棒を持ってパワフルでキレのある演奏としてフィナーレへといざなったのにも唸りました。 端正に吹いたホルンなど素晴らしかったけれど、オケの響きとの相性ではベートーヴェンですよね。 こちらも素晴らしい演奏でしたけれど。

これに先立つフンパーディンクは、メルヘンティックな雰囲気に満ちた佳演でした。 艶やかで快活な響きの金管、常に柔らかな打音としたティムパニ、時に大きくうねるようにパワフルになった弦楽アンサンブルなど終始明るい響きが印象的。 行進曲となってリズミカルに動いた麻由加姉さんにもよく付いてよかったですよ。

いずれの曲もどこかを強調するのではなく真摯に曲に向き合った演奏も好印象ですが、オケの良いところをうまく引き出した木下麻由加さんの手腕を評価したいですね。 昨年の定期演奏会でもこの両者の相性の良さを感じましたけど、今回はさらに進化したみたい。
蛇足ながら昨年末には京都フィロムジカでブラームスの交響曲第4番を指揮されたのを聴き、こちらの相性にはちょっと疑問符が付きましたけど、奈良女オケとはとてもいいコンビですね。 姉さんのカッコ良さに皆さん憧れを持たれているのでしょうか。 このまま暫く同じコンビとなって姉さんお得意のニールセンの交響曲なども聴きたいものです。

この演奏会が今年の聴き納め、いい演奏に巡り合えて幸せでした。 皆さんよいお年を!

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2016年12月24日

第23回「天理の第九」演奏会

日時:2016年12月18日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館やまのべホール

曲目:◆第1部◆
    J.ラター/マニフィカートより
     3. Quia fecit mihi magna
     6. Esurientes
     7. Gloria Patri
      指揮:河崎 聡(天理第九合唱団常任指揮者)
      独唱:内藤里美(S)
      演奏:天理シティーオーケストラ、天理第九合唱団
   ◆第2部◆
    ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱つき」
      指揮:安野英之
      独唱:内藤里美(S)、大賀真理子(A)、松本薫平(T)、鳥山浩詩(Br)
      演奏:天理第九管弦楽団、天理第九合唱団、
         奈良県立二階堂高等学校コーラス部
   (アンコール)蛍の光

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力強く深い響きによる第九での合唱、昨年より加わった奈良県立二階堂高校コーラス部の方々の威力でしょうね、今年もパワー一辺倒ではない素晴しい合唱を堪能しました。

オーケストラもまた、気心知れた安野英之さんの指揮のもと、コンパクトながら強靭な響きには艶も感じさせて素晴らしかった。 とくにピッコロ、第4楽章で行進曲となって吹いていたときから艶やかで良いなぁ、と思っていましたけれど、フィナーレが見事。 力いっぱい吹いて甲高くつんざくような響きになることが多いのですけれど、ここもまた艶やかな響きで彩られた響きに酔いました。 金管楽器の響きもまた同様で、上質な音楽であったことの証左、感動的なフィナーレでした。

そして今年も独唱者の方々の皆さん、粒がそろって声が良く出て良かったですね。 力強いバリトンによって歌い出し、美声でしたね。 そしてここにオーボエが見事なオブリガートで絡んできたから気分はもうここから絶好調。 松本薫平さんに交代したテノールも声量があって堂々とオケと渡り合っていました。

合唱、オケ、独唱が立体的に響きあって素晴らしい第九の演奏を堪能しました。

またこれに先立って演奏された、J.ラターのマニフィカート。 勢いつけて飛び出した冒頭こそ勢いつきすぎてこなれていなかったものの、2曲目より美しい内藤里美さんのソプラノ独唱、3曲目でのアーメン・コーラスでの明るい合唱の響きを楽しみました。
ただし第九の前プロに合唱曲は聴き手としてもちょっと体力が必要な感じ。 ベートーヴェンの序曲などでも良かったんじゃないないか、というのは同行した方のご意見でした。 確かに・・・

とにかく、終わり良ければ総て良し。 今年も緑色のルミカライトを振りながら蛍の光を歌ってのお開き。 今年も大いに満足、大いに楽しませていただき、会場を後にすることができました。
今年も素晴らしい演奏会にお招きいただき、有難うございました。

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2016年12月18日

高槻フィルハーモニーオーケストラ 第10回定期演奏会

日時:2016年12月11日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:高槻現代劇場・大ホール

曲目:ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
   モーツァルト/交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
   ベートーヴェン/交響曲第8番 ヘ長調 op.93
(アンコール)モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲

指揮:関谷弘志

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関谷さんの指揮のもといずれもしっかりとした構成感をもった演奏を楽しみました。 ベートーヴェンではソリッドに響かせ、モーツァルトではウェットに響く充実した演奏でしたね。

かちっとコンパクトに纏まってストイックな響きで演奏された「コリオラン」序曲、コントラバスの響きを芯にしてキレの良さと伸びやかさを持った交響曲第8番。 特に後者、充実した弦楽アンサンブルと管打楽器が一体となって伸びやかでたっぷりとした演奏ながら 8-8-6-6-4 の小編成オケならではコンパクトさ。 掛け合いもバシっと決まって進めていたベートーヴェンが良かったなぁ。

モーツァルトは、アンコールで演奏された「フィガロの結婚」序曲のような開放感が少々欲しかった「ジュピター」でした。 響きこそウェットにしてベートーヴェンとの違いを感じさせてさすがでしたが、きちんと纏まったモーツァルトの音楽でしたね。 終楽章の4重フーガ、音量差をうまく使って進めていましたけれど、几帳面な感じだったかな少々堅苦しくも感じたしだいです。

いずれにしても古典派音楽を主として進めてこられた高槻フィルの充実した演奏会。 皆さんお疲れさまでした。



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2016年12月01日

オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ Autumn Concert 2016

日時:2016年11月27日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:岸和田市立浪切ホール

曲目:ハイドン/交響曲第100番「軍隊」**
   ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 *
   プロコフィエフ/交響曲第5番

指揮:周藤 英**、菊 正憲*、大塚洋平

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フォルツァ初挑戦のハイドン、指揮者・コンサートマスターともにフォルツァ初挑戦。 ピュアでフレッシュな演奏をお楽しみください。 と、パンフレットに書かれていたとおりの清々しい演奏。 今回の演奏会でも、個人的にはこのハイドンの軍隊交響曲の演奏が素晴らしかったと第一に推したいですね。 淡々とした指揮でしたが、チャーミングで心踊る演奏を楽しみました。

続くハイドン・ヴァリーエーションは、キレよく動く指揮者との躍動感ある演奏でした。 団内指揮者による演奏は、指揮者とオケの一体感が信条。 先の軍隊交響曲とともに皆で音楽を造って届けて下さっている感じでした。 しかも皆さん巧いので好感度もUPしました。

そして大曲のプロコフィエフの交響曲第5番。 コントラバスを7名に増員してこちらも皆さん巧かったのですけれど、個人的に大好きな曲。 耳に馴染んだ演奏のバイアスがかかっていて、その呪縛から抜け出せず、もうちょっと粘り気が欲しかったな、などと思ったり・・・ 欲張りでしたね、すみません。 でもここでも団内指揮者とオケの一体感、フォルツァらしい挑戦的な演奏でした。 熱い拍手を贈りました。

蛇足ですが、あと印象に残ったは全曲でティムパニを叩いていた女性奏者の方。 特に前半プログラムでは小さなストロークより終始控え目に打っていたものの、マレットを持ち替え、また巧みに打ち分けてました。 決して目立ちはしなかったけど、しっかりと曲の要となって、曲を引き締めていたのを楽しみました。

雨の中、初めて伺った岸和田・波切ホールでしたが、とても綺麗なホール。 座席の足もとにも余裕があってとても聴きやすいホールでした。 晴れていたらハイキングも兼ねてまたやってきたいところですね。 とにかく皆さんお疲れさまでした。

簡単に演奏会を振り返ってみます。

終日雨の天気予報。 天気が良ければ早めに家を出て、久しぶりの岸和田散策もしたかったのですが、ちょっとのんびりとしていたら開演25分前に岸和田駅に到着。 初めてのホールなので、ここでホールはどっちかな? と迷ったものだから、開演5分前になんとかホールに滑り込みました。 少々焦りました。

時間も無かったのでそのまま1階席に入って14列36番の席を確保。 1階土間席の中央右隅といった感じかな。 座席を確保したのでトイレに行き、戻ってきたらすぐ開演です。
左右より整列入場。 1階土間席なのでステージの上がよく見えないのですが、12-11-10-6-4 といった編成かしら、通常配置です。 コンマスが出て来られてチューニングして準備完了です。 指揮者は周藤 英さん、ちょっと小柄な方でフォルツァ初登場。 エンビ服も初々しい感じがしました。 いよいよ始まります。

ハイドンの交響曲第100番「軍隊」、パンフレットにはフォルツァ初挑戦のハイドン、指揮者・コンサートマスターともにフォルツァ初挑戦。 ピュアでフレッシュな演奏をお楽しみください。 と書かれていたとおりフレッシュで清々しい演奏を楽しみました。 個人的にはこの演奏会で一番楽しめた演奏となりました。 団内指揮者による演奏は、指揮者とオケの一体感が信条、ハイドンは親しみやすい旋律など簡単そうに思いますけれど、逆にアマオケにとっては相当に難しいと聞きます。 オケの面々も初登場の指揮者を盛り立てようと頑張っておられたようにも感じました。 

第1楽章、柔らかく明るい響きで序奏の開始。 ゆったりと進めて聴き入りました。 管打楽器が入ってじっくりとした盛り上がり、芯のある音楽が心地良かった。 主題、軽やかなフルート、爽やかなヴァイオリンも綺麗な響き。 ストローク小さく打つティムパニが上質な音楽ですね。 金管も全体の響きにすっぽりと収まって巧い。 主題の繰り返しではヴィオラの音もよく聴こえてきて、心地良い音楽に聞き惚れていました。 フィナーレはパワフルさも持ち合わせた緻密な音楽、勢いよく走って着地も見事に決まりました。

第2楽章、しなやかで明るい響き。 木管アンサンブルが巧かったですね。 軍楽隊の響きも全体の響きによくマッチしてオケからはみ出しません。 見事にオケ全体が同じ音色で纏まっていますね。 素晴らしい。 ティムパニ奏者の方は先が緑のマレットに持ち替え、小さなストロークでこれまた軽やかに打って曲を引き締めてます。 指揮者の周藤さん、淡々と振っていますが、音量の増減も自然で抑揚もうまくつけてました。 オケ奏者全員で曲を盛り上げているのかもしれませんね。 トランペットも渋い響き、軍楽隊もまた渋い響きが上品でした。

第3楽章、チャーミングで快活、勢いつけて始まりました。 ティムパニがここでも軽やかに打ち、音量は決して大きくはありませんけれど、オケの芯となって曲を引き締めて進めます。 存在感ありましたね。 指揮者の周藤さん、立ち位置を変えず淡々と振って曲を進めてゆき、当方はティムパニの音を中心に曲を楽しみました。

終楽章、しなやかな弦楽アサンブル、中音弦の響きがよかったですね。 快活で勢いつけて、止めて、良く纏まっています。 明るく若々しいフレッシュなハイドン。 軍楽隊が入って華やかになりますが、全体がきちんと統一されていて纏まりの良い響きが印象的。 ホルンも心地よい響きで曲を彩ってました。 こんなに活き活きとして魅力的な演奏に出会えるとは(失礼ながら)思っておらず、最初から最後まで楽しい時間。 終わるのが惜しい気もしたフィナーレでした。

ステージは暗転、ティムパニ奏者を残した全員がいったん引き上げてから、しばらくして再登場。 コントラバスが1本増えて5本になったようです。 コンミスに交代してチューニングを開始、指揮者の菊正憲さんが出てこられて始まります。

ブラームスのハイドンの主題による変奏曲。 キレよく動く指揮者の菊さんの躍動感ある演奏、終曲では重厚な響きとしてキレよくフィニッシュを決めたのが印象に残りました。 団内指揮者による演奏は、指揮者とオケの一体感が信条と書きましたが、この曲もオケのみんなが指揮者とともに音楽を造っていた感じですね。

聖アントニーの主題、しなやかに響くオーボエ、たっぷりと響き合う木管アンサンブル。 低弦の響きもあいまって豊かな響きでいきなり引き込まれました。 豊かに鳴る弦の響きに凛としたオーボエ、素敵でした。
第1変奏、爽やかな高音弦、パワフルながらきちんと抑制のかかった金管。 ティムパニの太い響きも柔らかく響いてきました。 第2変奏、勢いよく始まり、メリハリつけた演奏は変幻自在みたいで面白かった。 第3変奏、しなやかに歌わせたのを止め、キレよく動く指揮者の菊さん。 ホルンが良い響きでした。 第4変奏、しみじみとさせたヴィオラの旋律、心をこめて動く指揮者に皆さんよくついて曲を進めます。 第5変奏、深くハリのある響きでの開始、菊さんが緻密に振り分けて彩りをつけ快活でキレよく進めました。 第6変奏、ピチカートがよく揃って管楽器との会話もよかったですね。 ティムパニが入って躍動感出ますけど、そのティムパニのまろやかな響きがまた上品でした。 第7変奏、さわやかな音楽、低弦がやさしく寄り添ってます。 高音弦とに会話も決まって、素敵なホルンの響きがここでもまた曲を彩ってました。 第8変奏、指揮者の菊さん、ここでは指揮棒を持たず丁寧に振って曲を進めていました。 終曲、また指揮棒を持った菊さんが低弦の響きを導き出して開始。 ゆったりと進めて落ち着いた音楽を伸びやかにしていった盛り上がり。 主題を戻して重厚な響きで歌い上げるクライマックス。 ティムパニはここでは重い打音、軽い打音と打ち分けてました。 菊さん、最後は胴体を真っ二つに断ち切るかのような振りでのエディング。 見事に決まりました。 指揮者と奏者が一体となった演奏を楽しみました。

15分間の休憩、開演間際にやってきたので自席に座ったまま他の演奏会のチラシのチェック。 そしてアンケートを記載していたら後半プログラムの開始時間となりました。

プロコフィエフの交響曲第5番、コントラバスを7名に増員、大曲ではありますがこちらも団内指揮者とオーケストラの一体感のある演奏でした。 皆さん巧かったのですけれど、
個人的に大好きな曲。 耳に馴染んだ演奏のバイアスがかかっていて、その呪縛から抜け出せず、もうちょっと粘り気が欲しかったな、などと思ったり・・・ 欲張りでした。 すみません。 でもフォルツァらしい挑戦的な演奏で、聴いていて清々しい印象を持ちましたよ。 熱い拍手を贈りました。

第1楽章、柔らかな木管にコントラバスの響きが割込む開始。 ここの低弦もうちょっと重量感とキレが欲しい、いきなり耳に馴染んだ演奏のバイアスが出て戸惑いました。 気を取り直して聴き進めましたが、なぜか落ち着かず手探りな状況だったかな。 スネアが入ってエンジンが暖まってきたみたい。 コトラバスによる主題、ここは良かったですよ。 すると今度は高音弦に力が欲しいかな、粘り気が欲しいかな、と亡霊のようなバイアスに悩まされていました。 すみません。 でもオケと指揮者は頑張ってましたよ。 後方一列に並んだ打楽器軍団、重厚なオケの響きとなりました。 前プロではコンパクトに打っていたティムパニもストローク大きく打って力強く幕としました。

第2楽章、クラリネットの響き、弦楽アンサンブルが走り始めてカッコ良く。 良かったですね。 弦と管楽器の連携も良く疾走感があってGood。 先の楽章では指揮者の動きにややオケが消極的かなという感じも受けましたが、ここにきて指揮者の見得も見事に決めてました。 木管アンサンブルが素敵です。 そしてまた走り始めますと、今度はヴィオラの良い音色が聴こえました。 緩急強弱つけて、金管の咆哮はストレートに響かせてキレの良い着地を決めました。

第3楽章、弦楽アンサンブルをじっくりと進めます。 スネアが入って引き締まります。 トロンボーンの落ち着いた渋い響きが良かったですね。 低弦の強い響き、緊張感を高めてブラス、そして銅鑼が鳴ってパワフルな音楽。 ストレートな音楽が前に前にと進んでいった感じかな。

第4楽章、ホルン、フルートの明るい響きに弦楽アンサンブル、中音弦がよかったですね。 ホルンのタンギングがカッコ良く響き、クラリネットの旋律がまた良かったですよね。 高音弦も頑張っていてオケが走り始めました。 低音金管楽器の落ち着いた響きが素敵。 打楽器軍団が入って走るヴァイオリン。 緩急つけて、打楽器の多彩な響きと、木管の歌。 変幻自在なプロコフィエフの音楽ですよ。 これが聴きたかった。 ぐっと盛り上がったのをスパッと絶ち切ったエンディングを見事に決めました。

個人的に耳に馴染んだ演奏のバイアスがかかってその呪縛から抜け出せず、抜け出せない葛藤もありましたが、アマオケと団内指揮者による演奏でここまで見事に造り上げたことは清々しくもあり凄いことです。 フォルツァらしい挑戦的な演奏に熱い拍手を贈りました。 アンコールはなく、いったんホールの照明が点いても拍手が止まず指揮者を引っ張り出すというオマケ付き。

雨の中、初めて伺った岸和田・波切ホールでしたが、とても綺麗なホール。 座席の足もとにも余裕があってとても聴きやすいホールでした。 晴れていたらハイキングも兼ねてまたやってきたいところですね。 とにかく皆さんお疲れさまでした。



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2016年11月05日

枚方フィルハーモニー管弦楽団 第84回定期演奏会

日時:2016年10月30日(日) 14:00開演
場所:枚方市市民会館・大ホール

曲目:ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」(-*)
   ドヴォルザーク/チェコ組曲(-*)
   ドヴォルザーク/交響曲第7番
(アンコール)服部隆之/「真田丸」オープニングテーマ曲(-**)

独奏:板東潮子(-**,団員)

指揮:谷村 浩、生島 靖(-*)

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爽やかな秋の一日、枚方市民会館前の広場では枚方市菊花展などが催され、ゆったりと秋の日を楽しむ市民の方が散見されましたが、市民会館の中では枚方フィルによる熱い演奏で満ち満ちていました。
いきなり「だんたん人の踊り」からの熱演でしたね。 最初の「だったん人の娘の踊り」こそエンジンを暖めているような感じでしたが、しだいにノリノリな感じになってきました。 圧巻はクラリネットの速いパッセージ。 すごい凄い気合い入ってましたね。
「チェコ組曲」は親しみやすいメロディが満載。 それを枚方フィルの朴訥としたサウンドで彩り、要所ではキレのよいアクセントをつけて、郷愁も覚えました。
そしてメインのドヴォルザークの交響曲第7番、まるで太い筆で描くように進められた演奏。 野太く堂々とした音楽に惚れ惚れとしていましたが、フィナーレでは、これでもか! といった感じで念を押すような堂々たる着地に唸りました。 自分たちの音楽はコレだと精一杯演奏される音楽に大いに感じ入りました。
そして今回、休憩時間にはハンドベルの演奏が披露されたり、アンコール曲が「真田丸」のオープニングテーマ曲だったり。 今回も熱くもまた清々しさを感じさせた演奏に大いに満足して会場をあとにしました。 皆さんお疲れさまでした、そしてありがとうございました。

簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

爽やかな秋の一日、ちょっと早めに枚方市駅に到着。 会場の市民会館とは反対側の出口より出て「淀川資料館」を覗いてきました。 土木・利水関連の展示だけでなく生物や洪水など生活に関わる展示もあって興味深く拝見させてもらいました。 そしてまだちょっとだけ時間があったので、淀川の河川敷もほんの少し散策。 広い空を見上げてから市民会館へと向かいました。 でも、今度は会館前で枚方市菊花展が開催中。 丹精込めて育てられた菊の花や市民菊人形(我々の年代は「枚方菊人形」は秋の代名詞の一つですよね)もあったので、これらも楽しんでから、ようやく会場へと到着したしだいです。

いつもながらの2階席ですが、寄り道して着いた時間が遅かったこともあって前の方は多くのお客さんで埋まっていたので、後ろから2列目、ほぼ最上階に陣取ることにしました。 でも演奏会の途中でもどんどんお客さんが入ってきて、上の方も結構な人の数となっていましたね。 定刻となって左右より整列入場。 オケの編成は 10-10-10-8-4 の通常配置。 前2曲の指揮をとられる生島さんが登場されて始まります。

「だったん人の踊り」いきなりの熱演となりました。 まずは「だったん人の娘の踊り」でキレの良い開始より艶やかな木管楽器の響きで魅了します。 それに比して弦楽器はやや平板な響きだったかな。 まだエンジンを暖めている感じみたい。 キレよく止めて「だったん人の踊り」となって、これまた木管楽器の豊かな和音。 しっとり・ゆったり・うっとりとしました。 弦楽アンサンブルも艶が増してきましたね。 トロンボーンとチューバも粘り気のある響きで良かったですよ。 ティムパニがゆったりと大きく入ってきて、しっかりと地に足を着けた音楽が進みます。 スネア、軽快ながらもハリのある鋭い響き。 ヴィオラが力強く演奏していたのが印象に残りました。 そして次第にノリノリな感じになってきましたけど、生島さんがきちんと仕切ってテンポを動かさず暴走させません。 そんななかで圧巻はクラリネットの速いパッセージ、すごい凄い気合い入ってましたね。 惹きこまれました。 キレの良く鋭いスネア、太い響きの大太鼓。 音楽が自然と高揚してゆき、会場を巻き込む熱演となって全曲を閉じました。

「チェコ組曲」は親しみやすいメロディが満載、それを枚方フィルの朴訥としたサウンドが温かみに変えて郷愁を覚えました。 第1曲「前奏曲」、やわらかなホルンより始まってヴィオラの朴訥とした響きでしみじみと聴かせました。 第2曲「ポルカ」、しっとりとしたヴァイオリンにそっと低弦が寄り添って上々の滑り出し。 中間部は浮き立つような響きが印象的。 最後は哀愁の調べ、温かみのあるアンサンブルを楽しみました。 第3曲「メヌエット」、明るく伸びやかなクラリネットとファゴット、チャーミングな開始より、要所をキレのよいアクセントをつけて心温まるサウンド。 秋の日によく似合ってましたね。 第4曲「ロマンス」、フルートの端正な響き、コールアングレも感傷的な音楽で魅了、ふわっと着地を決めていました。 第5曲「フィナーレ(フリアント)」、徐々に力強くなってここでも太い響きで盛り上がります。 タイトなホルンも全体の響きによくマッチ、オケ全体が最後まで集中力を切らさず堂々と全曲を纏めました。

休憩時間、団員の方によるハンドベルの演奏が披露。 今年の初めにハンドベルを購入されたらしく、弦楽器、管楽器、指揮者など有志が集まって練習されたそうです。 冒頭こそやや手探り感があったようですけれど、全員が息を合せての演奏を楽しませて貰いました。 全員が協力して1つの演奏を完成させる、いつもアマオケらしい演奏を提供して下さる枚方フィルですが、こんな手作りの温かなプレゼントが出てくるとは思いませんでした。

ドヴォルザークの交響曲第7番、指揮者は谷村さん。 指揮棒を持たず長い両腕を同じように大きく振り、恰幅の良い音楽が始まりました。 ゆったりと進めて、まるで太い筆で描くように進めます。 谷村さん、要所で力を込めていますが決して煽ったりせず、堂々とした歩みは変わりませんね。 低弦やティムパニがそれに応えた強い響き、トロンボーンやホルンもバリバリと吹いて気持ちいいですね。 その大きな流れ、うねりに身を任せているうちに第1楽章が終了しました。
第2楽章、朴訥とした木管の響きに野太いピチカートで始まりました。 テンポを落としてゆったりとした響きです。 ここでも太い線で丹念に曲を描いて進めてゆきます。 胃もたれしたり足をひきずるようなことではなく、しっかりと自分の身体で消化された栄養(音楽)を力にてしっかりと自分の足で歩んでいる・・・堂々として枚方フィルらしい音楽性でしょうね、いいですね。
第3楽章、艶やかな弦の響きに明るい木管。 ここも落ち着いてぐいぃと力こめて、ホルンがバリバリっと鳴なるなど堂々とした音楽でした。 決してスタイリッシュで流麗な音楽ではないけれど、しっかりとした音楽造りに好感が持てます。
第4楽章、ゆったりと深く太い響きで曲を進めるのは同じですが、終楽章なので余計に力入ったかもしれませんね。 指揮者の谷村さん、時に片手で歌わせようとしたり、パンチを繰り出す場面もありますが、基本は左右の腕を同じように大きく振って堂々と曲を仕切って、パワフルな響きをオケより導き出して進めます。 そんな野太く堂々とした音楽に惚れ惚れとして聴いたフィナーレでは、これでもか! といった感じで更に念を押すような堂々たる着地に唸りました。

自分たちの音楽はコレだと精一杯演奏される音楽に大いに感じ入りました。 客演指揮の先生に導かれ、縦線横線をきちんと合わせ(合せようとする)技術一辺倒な演奏に陥りがちなアマオケの中にあって、自分達の音楽はコレ、って主張するような演奏はなかなか無いように思います。 枚方フィルのカラーですね。 そして聴き手としても、音楽を聴くことの原点にいつも立ち戻させてもらえるような気がします。 このオケの温かな雰囲気がたまらなく好きです。

カーテンコールでは、上着を脱いでワイシャツ姿になって登場した谷村さん。 熱演でお疲れのようでしたが、アンコールはなんと「真田丸」オープニングテーマ曲。 ソリストには前2曲でコンミスを務められた板東潮子さん。 演奏会が始まる前、会場前で「市民菊人形」による「真田丸」も見てきましたが、いつも楽しみにTVで見ている音楽を生で鑑賞できるなんて、素晴らしいサービスですね。 そして演奏もまた、しっかりとしたタメ、そしてコクも感じさせる堂々たるヴァイオリンの響きで会場を魅了。 耳馴染みの曲なのでちょっと線が細く描かれるかなと勝手に思ってましたけど、見事にTV番組を彷彿とさせる堂々とした演奏に感激しました。 会場からも大きな拍手が沸き起こりました。 今回も熱くもまた清々しさを感じさせた演奏に大いに満足して会場をあとにしました。 皆さんお疲れさまでした、そしてありがとうございました。

 

 
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2016年09月21日

セント・マーティン・オーケストラ 第12回定期演奏会

日時:2016年9月19日(月・祝) 14:00開演
場所:伊丹アイフォニックホール

曲目:ハイドン/「月の世界」より序曲
   ハイドン/交響曲第100番「軍隊」
   ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」

指揮:河ア 聡

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これが自分達のベートーヴェンの英雄だ、そんな強い意志を感じた素晴らしい演奏に感服しました。 速いテンポ設定、ノンビブラート奏法なのでパッセージを早めに切り上げて走り、要所ではグィグィッと・・・これでもかというほど切り込むアクセント。 とてもエキサイティングな演奏でした。

しかも指揮者がオケを煽って演っているのではなく、指揮者とオケが一体となって進めていらしゃる。 指揮者の河崎さん、いつものようにこやかな笑顔を見せつつ満足そうに曲を進めていましたが、ステージの奏者の方もまた自信を持って演奏されているのが客席からも良く見えたのも印象的な演奏会でした。

このセント・マーチン・オーケストラを始めて聴いたのが第3回定期演奏会、くしくも今回再演となった英雄交響曲を東灘区民ホール(うはらホール)で聴きました。 当時と今を単純に比べることはもう難しいのですが、今回、響きの良いアイフォニック・ホールでの演奏は、前回同様に大きな音でしたが、より響きの多彩さを感じるところが多くあったように思いました。

なおこれに先立つ軍隊交響曲も同傾向の演奏で現代的なハイドン。 曖昧なところが無くスッキリとしていますが、小編成のオケながら音量が大きくて、コンパクトな力強い線で描いて、パパ・ハイドンと呼ばれるような恰幅が良くて伸びやかな音楽とは一線を画した音楽。 それぞれの箇所を面白くスポットライトを当てるがごとく(軍楽隊の打楽器は逆に控えめとして)面白く聴かせた軍隊交響曲でした。

そして冒頭に演奏された同じくハイドンの「月の世界」序曲。 この曲もまた太い響きが特徴的。 鋭角的に切り込む場面もありましたが、全般的に快活で伸びやかな演奏となっていて、いわゆるハイドンらしさがよく出ていたのではないでしょうか。

とにかく今回アンコールはなし。 エキサイティングな英雄交響曲で塗りつぶされた、そんな感じを強く思った演奏会でした。 確かに、こんな英雄交響曲のあとにアンコールは不要ですね。 今も耳の奥でメロディが鳴っています。 素晴らしい演奏会をありがとうございました。

簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

台風の影響もあって雨がパラつく空模様のなか、ホールには30分前に到着。 いつもどおり2階席を目指そうとしましたが、ロープが張られていて、関係者以外立ち入り禁止の文字・・・仕方なく1階席後方 M-10 に陣取りました。 あとで1階席の一番後ろのドアからロビーに出ると、2階席にも回り込めるのが解ったのですが、かつてこのような裏ルートで入り込んで係員に丁重に追い出された経験もあるので、今回は大人しくしていました。 もっとも1階席がほぼ満員となってきたころ、2階も開放されたようですけれど・・・

定刻、オケの奏者が左右より各パートが揃って整列入場。 客席から拍手があがります。 オケの編成は 9-10-6-5-3 の対向配置。  メンバーが全員揃うまで奏者の方は起立したままで待ち、全員が揃ってからコンミスと伴に一礼して着席。 これは気持ちいいですね。 客席からも暖かい拍手がまた湧きました。 チューニングを終えて準備完了、燕尾服の河崎さんが登場されていよいよ始まります。

ハイドンの「月の世界」序曲。 弦楽アンサンブル、各パートの響きがブレンドされて太い線を感じさせた開始。 小編成オケによる纏まりの良さも勿論ありますが、ホールの響きで各パートの音が混然一体となって届けられてきます。 豊穣な響き、ってやつですね。 瑞々しいオーボエやファゴットが素敵に吹いてから全奏、ティムパニもまた太い打音なのは統一感があっていいですね。 中低弦が芯になって曲を支え、高音弦が鋭く切り込んでゆく感じ。 全般的に快活で伸びやかな演奏なのは、いわゆるハイドンらしさ、でしょうね。 木管との対話を経てまた全奏となりますが、全奏でも各楽器の音が綺麗に聴こえる見晴らしの良さ、最後は駆け抜けるようにして終わりました。

打楽器と木管奏者が加わって、ホルンとトランペットがフルートとクラリネットを挟んで左右に振り分けられました。 チューニングを行って準備完了。

続いてのハイドンの軍隊交響曲は、現代的なハイドンを表現していたようです。 曖昧なところが無くスッキリとしていました。 先ほども思いましたが、小編成のオケながら音量が更に大きくなって、コンパクトに力強い線で描いたような感じ。 ノンビブラート奏法の弦、推進力良く進むのですけれど、響きのコクが少なくなってしまい、ちょっと聴き疲れしやすい感じ・・・なのですが、そこは響きの多いアイフォニックに救われていたかもしれません。

第1楽章、艶やかなヴァイオリンの響きにチェロとコントラバスの響きが絡む素敵な開始。 ティムパニのロール、コンパクトに打って張りがありました。 美しいフルートの音色より、生き生きと走り始めました。 中低弦が芯になり、高音弦がその上で快活に響いて走ってゆきます。 木管楽器もやや堅めの音色だったでしょうか。 音楽が前に前にと推進しますが、息せききって走っている感じなどなく、余裕すら感じます。 河崎さんもノッてきたようで、にこやかな表情を見せつつオケをドライブ、走らせていました。

第2楽章、明るい響きで始まりました。 裏で吹いているフルートがまた綺麗でしたね。 旋律が各楽器を巡ってゆきますが、明るく伸びやかで屈託のない前向きな音楽。 そんな裏で吹くファゴットもまた素敵で、皆さん持ち場をしっかりと固めて曲を進めている感じ。 重心を低くした弦が入って、軍楽隊の打楽器の響きもまた落着いた響きでした。 そして堂々とした音楽となりました。 トランペットのソロ、渋い響きでしたね。 ティムパニのロール、コンパクトに打ちながらも劇的。 ぐっと盛り上げてキレ良く止めた着地でした。

第3楽章、河崎さんが思わず発した声より音楽が飛び出します。 鋭く切り込むような前向きな響き。 楽しそうな表情の河崎さんも見えて、メヌエットながらスケルツォみたいな感じ。 ノンビブラート奏法の弦、響きのコクが少なくなっているので少々聴き疲れする感じでしたが、ここはホールの音響に救われていた感じかな。

第4楽章、明るい響きの弦楽アンサンブル、少々音量を絞ってチャーミングな序奏。 管楽器が加わって音量が大きくなって音楽が前に前にと進みます。 統制のよくとれたオケの響きがホールに充満。 ティムパニがより先の細くなったマレットでコンパクトに打ってアクセントになってました。 そして軍楽隊の打楽器はここでも上品で落ち着いた響きで彩って、弦楽器は馬力を感じさせます。 オケが一体となり、曖昧さを感じさせない現代的なハイドンを演奏し、全曲を力強く纏めて幕としました。

パパ・ハイドンと呼ばれるような恰幅が良くて伸びやかな音楽とは一線を画して、それぞれの箇所を面白くスポットライトを当てるがごとく(軍楽隊の打楽器は逆に控えめとして)面白く聴かせた軍隊交響曲でした。

20分間の休憩。 1階席はほぼ満員盛況となっていますので、2階席が開放されているようですね。 定刻なってオケの奏者が左右より各パートが揃って整列入場。 客席から拍手があがります。 一部のメンバーは着席しましたが、コンミスが起立したままなので、アレっていう表情を見せながら立ち、全員が揃うのを待ってから客席に一礼して着席。

着席後、オーボエ奏者の方がチューニングの準備をして指示を待ちますが、コンミスは座ったまま微動だにせず・・・何度かコンミスに目配せをしてようやく気づいたみたいで、慌てて立ってチューニングを開始。 しかしその立ち方があまりに唐突だったこともあって、客席も気づいたみたいで笑い声。 しかしこれで会場がずいぶんと和みましたね。 そんなの分かっているわよ、これから立つことろなの…ってな感じで堂々と立たれたならば違っていたかも。 とにもかくにも準備完了です。

速いテンポ設定、ノンビブラート奏法なのでパッセージを早めに切り上げて走り、また要所ではグィグィッと・・・これでもかというほど切り込むアクセント。 とてもエキサイティングな演奏でした。 前日、井上道義が指揮した大フィルの英雄交響曲をTVで少し見ましたが、おっかない顔してストイックな演奏を展開。 しかしここでは指揮者がオケを煽っているのではなく、指揮者とオケが一体となって進めていらしゃる。 指揮者の河崎さん、いつものようにこやかな笑顔を見せつつ満足そうに曲を進め、ステージの奏者の方もまた自信を持って演奏されているのが客席からも良く見えていました。 素晴らしい演奏でした。

第1楽章、肩口より鋭く指揮棒を鋭く振り下ろすのは昨夜の井上道義と同じ動き、ストイックな強い響きによる開始。 鋭角的に切り込んで、超快速テンポでグィグィと曲を進めてゆきます。 いやぁ、速い速い。 こんなに速い演奏は初めてかも・・・そんな速度でしたが、しっかりと音楽が描かれていて、前に前にと曲が進みます。 河崎さん、時に小刻み膝を屈伸させて縦ノリのリズムを交えます。 エキサイティングな音楽。 後半となって河崎さんのにこやかなお顔も見えてきました。 とにかく明確な意思を持った演奏ですね。 こんなに超快速ながら、音楽が息づいていますもの。 力強い幕切れまで圧倒されっぱなしでした。

第2楽章、深くハリのあるヴァイオリン、重い響きのコントラバスによる葬送行進曲は一転してゆったりと進みます。 オーボエの物悲しい音色もソリッドで凛とした響き。 キレ良く端正でストレートな音楽造りですね。 弦も管も各楽器が同じ音色となっていて、ゆったりと大きく音楽を繰り返してゆきます。 まるでゴシック建築のようでもあり、細部は緻密に組立てられたモザイクのようでもあります。 ホルンの太い響きが見事。 そして延々と流れた音楽、キレの良い響きを減衰させた幕切れもまた見事でした。

第3楽章、弦の豊かな響きでの開始、徐々にスピードアップしてタイトな音楽になりました。 グイっと切り込んでくる低弦がカッコ良い。 河崎さん、ここでも笑顔で楽しそうですね。 ティムパニが短いストロークで小気味よく盛り上げて、ホルンのトリオ。 荘重で華やかな響きがとても素晴らしく、自信を持った響き。 弦楽器のアンサンブルも曖昧さはないのに、高音から低音までゴージャスに響いて盛り上げてゆきます。 河崎さん、身体を弾ませるように音楽も躍動的。 最後はタイトな音楽としてスピード上げて力強く締めました。

第4楽章、弦楽器の素早いパッセージ、張りのある響きで始まり、ピチカートが深く弾力あります。 金管・打楽器は太い響きで合いの手。 続いてノンビブラート奏法での弦楽アンサンブルの妙を楽しみました。 1プルトのみの合奏、聴き応えありましたね。 これを堪能したあと、木管が華やか、金管は力強く、だんだんと力を増してスピードアップ。 皆さん自信持って演奏されているのでしょうね、見て聴いてとても面白かった。 この曲の違った面白さを教えられました。 縦ノリのリズムとなり、力を増してゆくのもまた面白かった。 客席で一緒に楽しみました。 管楽器が端正に吹いてフィナーレの激しさを予感、そして力強い音楽。 でも拡散することなくコンパクトに纏めた着地へと結びついて全曲を締めました。 もっと苛烈に盛りがると思いきや、なるほどこれが見識というものですね。 大いに感じ入りました。

素晴らしい演奏にブラボーも出て納得です。 客席からの拍手の渦、そこで気付いたのですが、湧きおこった拍手の音が上から降ってくるんですね。 このホールの響きの良さを体感しました。 これが自分達のベートーヴェンの英雄だ、そんな強い意志を感じた素晴らしい演奏に感服しました。 今も耳の奥でメロディが鳴っています。 素晴らしい演奏会をありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。 次回、来年4月の合唱団ホール・バルティカとのモツレク、いずみホールでの演奏会も楽しみです。

 
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2016年09月20日

六甲フィルハーモニー管弦楽団 第42回定期演奏会

日時:2016年9月18日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:神戸文化ホール・大ホール

曲目:保科洋/風紋(管弦楽版)
   伊福部昭/シンフォニア・タプカーラ(1979年改訂版)
   ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
(アンコール)シューベルト/劇音楽「ロザムンデ」間奏曲第3番

指揮:遠藤浩史

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P9194793 posted by (C)fronte360

邦人作曲家2人による前半と、永遠の名曲ベートーヴェンの田園交響楽をメインに据えた個性的なプログラム。 個人的には前半プログラムがとても面白く聴かせていただきました。

保科洋の「風紋」は、吹奏楽では有名な曲とのことですが初めて聴く曲。 砂丘で砂が吹いているまさにそんな響きで始まり、吹奏楽らしいフレーズも随所に感じながら、後半には生き生きとしたリズム感もあってとても聴きやすい曲。 まるで映画音楽のようでもあり、どこか懐かしい風景を見ているような気持になりました。

伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は伊福部が亡くなった2006年、芦屋交響楽団第65回定期演奏会で聴いて以来2回目の実演。 すっかり忘れていましたが、メリハリを効かせた伊福部サウンドを堪能しました。 ステージ後方中央より左に一列に並んだパーカッションによるソリッドな響き、ブラス(tp×4、tb×4、tuba)が別動隊のようにステージ右後ろに別れて配置されたステレオ効果もあって大いに盛り上がった第1楽章が印象的でした。

指揮者の遠藤さんも初めて聴く指揮者ですが、しっかりと立って下半身はほぼ動かず、指揮棒は持たずに両腕を大きく使って曲の拍を取って進めます。 仁王立ちみたい。 太い線でぐいぐいと進めて、強烈なパーカッションの響きで切り取る、そんな感じのサウンドでしたね。

ただ後半の田園交響曲も遠藤さんは基本的に同じスタイルなので(ちょっと左足を引いて半身の体制も散見されましたが、けっして動き回らない指揮ですね)、ウェットな弦楽器の響き、端正な管楽器の響き、嵐の場面に象徴された鋭い打音のティムパニ、それぞれ頑張っているのは分かるのですが・・・オケ全体もまとまっていて、悪くもないのですが、何度も同じ曲を聴いている当方には、ざらっと曲を進めてどこか捕らえ処がなく終わってしまった・・・という感じでした。 指揮者のこの曲への思い入れの違いかもしれませんね。

簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

奈良を出たときは土砂降りに近い雨が断続的に降ってましたが、神戸は曇り空。 今回は奥さんと長男を連れての参戦。 ちょっと遅くなって急いで坂道を上っていたら蒸し暑くなってきて汗も出てきました。 開演10分前になんとかホールに到着。 さっそく2階席の8列52番に陣取りました。 このあたりガラガラでしたが、こんな天候なのに1階席はけっこうお客さん入っているみたい。

トイレに行って戻ってきたらオケの皆さんもう席についてスタンバってました。 オケの編成は、13-11-7-8-6 の対抗配置。 燕尾服の遠藤さんが出てきて始まります。

保科洋の「風紋」、砂丘で砂が吹いているまさにそんな響きで始まり、吹奏楽らしいフレーズも随所に感じながら、後半には生き生きとしたリズム感もあってとても聴きやすい曲。 まるで映画音楽のようでもあり、どこか懐かしい風景を見ているような気持になりました。

ヴィオラとチェロのゆらめくような響きによる開始。 流れるようなヴァイオリンの響きが加わってきて、懐かしい風景画を見ているような気持になりした。 まさに風で砂丘の砂が風紋を作っているようでいて、ゆったりと流れる音楽は映画音楽のよう。 生き生きとしたリズムとなって、舞台右後方のブラス隊(tp×4、tb×3、tuba)とステージ最後列に陣取ったパーカションとの対比効果。 まさに響宴ですね。 それが収まってフルートの暖かな調べ、ミュートトランペットも懐かしい感じを持たせたあとまた盛り上がってゆきます。 ステージ前方の高音弦、後方のパーカッション、右奥のブラス隊、またこれらの響宴でのピークを形成。 女性奏者の方、大太鼓打った手を返して銅鑼を叩いたあとタンバリン持ってと大忙しでしたね。 スッキリと盛り上がったのを、遠藤さんの左手が挙げて止めました。 初めて聴く曲でしたが、とても面白く聴かせてもらいました。

伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」は以来2回目の実演ですが、すっかり忘れていました。 この曲は、メリハリを効かせた伊福部サウンドを堪能。 ステージ後方中央より左に一列に並んだパーカッションによるソリッドな響き、ブラス別動隊はtbを1本追加(tp×4、tb×4、tuba)、ステレオ効果もあって大いに盛り上がった第1楽章がとても印象的でした。 そして第2楽章はしっとりとした音楽、ハープの響きやティムパニの打音が心臓の鼓動にも聴こえたり、管楽器が和楽器のような渋い響きであったのも日本的な感じがして面白かったですね。 そして第3楽章はタプカーラのリズム、ミュートトランペットのソロや裏で吹くファゴットなども加わって伊福部サウンドを楽しみました。

第1楽章、ヴィオラとコントラバスの深みを感じさせる響き、ここにヴァイオリンのしっとりした響きが絡んでコクが出てきます。 ここがあるのが1979年改訂版。 木管楽器を伴った土俗的なリズムに、切れ味鋭いスネアが割って入ります。 クラリネットも負けじと頑張って、打楽器の強烈響きで応酬。 ちょっとやりすぎかな、と思うほど思いっきりよく打って、オケはリズム感よく走ってゆきます。
指揮者の遠藤さん、しっかりと立って下半身はほぼ動かず、指揮棒は持たずに両腕を大きく使って曲の拍を取って進めています。 まるで仁王立ちみたい。 太い線でぐいぐいと進めて、強烈なパーカッションの響きで切り取る、そんな感じ。
弦楽アンサンブルも高音・中音・低音の響きがよく混ざり合っていてパワーありますね。 特に中音がしっかり響くのがいいですね。 コクがあえります。 ホルンは別動隊と反対側、オケの左端に陣取っていてこちらもハリのある響きで参戦。 のびやかでもあってよかったですね。
ホルンのソロ、チェロのソロ、それぞれに深くハリのある響きが良く、それが断片的になってからクライマックスへ。 リズム感があってメリハリを十二分に効かせた音楽となりまですが、指揮者の姿と同じく腰の据わったサウンドがホールを埋め尽くし、最後は指揮者の遠藤さんの右ストレートで止めました。 客席からは大きな拍手は湧きあがりました。 客席もちょっと興奮状態ですね。

第2楽章、ハープを弾く音、後ろでコントラバスも添えているのですね。 フルートのしっとりとした響き。 ゆったりとおだやかな音楽。 ヴィオラもいい響きでしたね。 ティムパの打音が心臓の鼓動のようにも聴こえました。 この響きに乗せて、ミュートトランペット、フルート、オーボエ、ホルン、それぞれに和楽器のような渋い響きで彩ってゆきます。 ファゴットが裏で吹いているのもいい感じだったな。 ティムパニはマレットを持たず、手で叩いていて、最後はこと切れるように終わりました。

第3楽章、アイヌの踊りのリズム・タプカーラによる開始。 ここでもタイトな打楽器がさく裂。 リズムに乗せて進みます。 オケもノリノリかな。 遠藤さん、右手でリズム取りながら左手で抑えるような場面もありました。 これが収まると、オーボエの美しいメロディがコンマスのソロに移ります。 艶やかないい音でしたね。 ファゴットがいい感じでした。 ミュートミュートトランペット、ティムパニが調べをつないでゆくと音楽がまた盛り上がります。 リズムの響宴の開始。 伊福部サウンド全開ですが、ただ突っ走るのではなく音楽が伸び縮みしているので聴きごたえあります。 オケはそのまま整然と走ってエンディグに突入、遠藤さんが両腕を万歳、グリコのマークように挙げて止めました。 堪能しました。

20分間の休憩。

前半の邦人作曲家2人とはうって代わって名曲中の名曲であるベートーヴェンの田園交響曲。 オケの編成は、13-12-9-8-6 と中音を増強しましたが、舞台上の打楽器はティパニのみ(当たり前ですが)スッキリしましたね。 しかし舞台右奥には、離れ小島のようにブラス隊(tp×2、tb×2)が残っているのが印象的。 ベートーヴェンの交響曲の金管楽器って打楽器と同じような動きなので別にここに居る必要は特に無いように思うのですけどね。

田園交響曲、先日はソノリテによる美しい響きに彩られた演奏を楽しみましたが、六甲フィルではウェットな弦楽器の響き、端正な管楽器の響き、嵐の場面に象徴された鋭い打音のティムパニ、それぞれ頑張っているのはよく分かりますし、オケ全体も良くまとまっていて悪くもないのですが・・・なんか捕らえどころが薄く、ざらっと曲を進めて終わってしまった・・・という感じでしたね。 前半2曲と違って、指揮者のこの曲への思い入れの違いかもしれませんね。 そんな風に感じたしだいです(生意気ですみません)。

第1楽章、弦楽器の豊かな響きによる開始は上々。 徐々にテンポを早めに進めてコンパクトにたたみかけて進めたあと、今度はゆったりと、緩急つけて進めてゆきます。 遠藤さん、両足をしっかりと動かさず、指揮棒を持たない両腕での指揮は変わりませんが、前半と違って腕を水平に動かして太い線で歌わせているみたいですね。 木管奏者の方は全員女性なのですね、皆さん白のブラウスで気づきました。 ただし響きはいずれも端正な感じで淡々と曲を進めている感じ。 終盤もフレーズをやや短めにしコンパクトに盛り上げてたあとふわっと着地。

第2楽章、中音弦のちょっと分厚い響きで始まりました。 第1ヴァイオリンの響きは抑え目ですね。 ゆったりとオーソドックスに進んでゆきます。 朴訥としたファゴットが素敵でした。 遠藤さん、腕をぐるぐると回して歌わせますが、なんかこじんまりとまとまった音楽より抜けださない感じかな、端正な木管楽器の響きは素敵なのですけどね。 フルートが吹き、クラリネットのカッコウが鳴く美しい音楽。 いいですね。 でも部分はいいけど、全体としてイマイチ印象薄くなるのは何故でしょうね。 なんて思っているうちに終わりました。

第3楽章、柔らかな響きでの開始より徐々に力を増してゆき、コントラバスの響きがまとまって届きます。 ホルンは2本ですがタイトに吹いてオケ全体の響きによくマッチしていましたね。 オーボエのソロもまたオケ全体の響きに綺麗に合っていて、いいですね。 でもやはり全体としての印象薄くてちょっと眠くなってきましたよ。 皆さん巧いんですけどね。 第2ヴァイオリンの深い響きで嵐の場面へと進みます

第4楽章にはアタッカで入って、ティムパニのさく裂する響き、ソリッドな打音には重さと粘りも感じられて見事。 端正なオケの響きにもここでは鋭いキレと粘り気が感じられました。 前半プログラムをちょっと思い出したりもして、遠藤さんこういった場面が好きなのかな、と思ってみたり。

第5楽章、ゆったりと進めて、ちょっとソロが危なくギリギリセーフのような場面もありましたが、弦楽器の第1ヴァイオリンはしっとりとした響きで第2ヴァイオリンは暖かな響き、これらがまとまって暖かくまろやかな響きとなって届けられます。 管楽器はどれもまた端正な響きですね。 たっぷりとした音楽、緩急もつけて場面転換はビシッと決めて進みます。 悪い感じはしないのですが、なんか捕らえどころがなくなんだろうな・・・という思いがぬぐえず最後までやってきたという感じ。 ゆったりと腕を回してオケを止めました。

これが名曲を演奏するむずかしさなのでしょうね。 下手なオケならもっと別な部分を聴くのでしょうけれど・・・結局は指揮者のこの曲への思い入れみたいなのが、当方と合わなかったということかもしれませんね。 偉そうですみませんが・・・

でも上述したように個々はオケはよく頑張っていましたよ。 アンコールのロザムンデでは木管奏者の方は生き生きと吹いていらしたのも印象に残りました。 とにかくお疲れさまでした。 次回はプロコフィエフの交響曲第7番とこれまた先日聴いたショスタコーヴィチの交響曲第10番だそうです。 指揮は第37回定期演奏会でも指揮されたプロソロフさん、緻密さにパワーを兼ね備えたロシア・ロマンを期待します。 皆さんお疲れさまでした。


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2016年09月13日

大阪市民管弦楽団 第84回定期演奏会

日時:2016年9月11日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より
       「だったん人の娘の踊り/だったん人の踊り」
   マスネ/組曲第6番「おとぎの国の風景」
   ショスタコーヴィチ/交響曲第10番
(アンコール)ショスタコーヴィチ/劇場音楽「ハムレット」より「フォーティンブラスの行進曲」

指揮:中井章徳

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指揮者の中井章徳さん、初めて聴く方ですけれど、しっかりとした棒で纏められた演奏は、どの曲も美しい響きに彩られて、美観を大切にされる指揮者だなと思いました。 もちろん演奏には迫力もありましたけれど、いわゆる勢いに任せた爆演ではなくて、きちっと計算されたタメを使ってしっかりと歌って盛り上げる感じだったかな。 オーケストラもそんな中井さんによく応えて、聴き応えのある演奏を展開していて安心して演奏を楽しめました。 いずれの曲も好演でした。

今回、いつもの2階席ではなく1階席K列での鑑賞。 オーケストラの中がよく見えないのでちょっと残念だったのと、中央通路の後ろあたりだったけれど多少音が上を飛んでゆく感じだったかな。 オーケストラの編成は、ちょっと見えにくかったけれど 13-13-12-10-7 の通常配置。 自由入場ながら管打楽器、コトンラバス、チェロ、ヴィオラ最後にヴァイオリンとパート毎に揃って準備完了。 コンマスが拍手で迎えられてチューニングを終えました。 燕尾服の中井さんが出てこられて始まります。

1曲目、ボロディンの「だったん人の娘の踊り/だったん人の踊り」も迫力よりも美感に焦点を置いた感じの演奏でした。 淡々とフレーズを繰り出して進めてゆきます。 韃靼=粗野という方程式は当てはまらず、みずみずしい響きで清廉な印象を覚えた「娘の踊り」。 ヴォリュームアップしてグイグイと進めた「だったん人の踊り」でも綺麗に響かせることに注力されていたみたい。 オケの纏まりも感も良く、スネアも切れ味は良いけど刺激的でない響き、ヴィオラのちょっと甘い響きが食い込んできたりもして、面白く聴かせてもらいました。 エンディング、スピードアップして力が入りましたが、ここも美しい響きで彩って駆け抜けました。

マスネの組曲第6番「おとぎの国の風景」、たぶん初めて聴く曲だと思います。 この曲も前曲同様で美感を大切にした演奏でしたが、アンリ・ルソーの絵を見るような陽気さと素朴さを感じた演奏でした。
第1曲「行列」、軽やかなトランペットと弾力ある響きのオケと掛け合ったファンファーレより行進曲が明るく賑々しく進みました。
第2曲「バレエ」、機動力を感じさせるオケの響き、中井さんフレーズをちょっと伸び縮みさせ、ここでも弦楽器と管楽器の呼応が良かったですね。
第3曲「幻」、思索的な音楽として深いヴァイオリンの響き、遥かなホルンも素敵でした。 オケ全体がまろやかなな響きながら押し出し強くして安定感ありました。
第4曲「バッカナール」、軽やかながら内声部をしっかりと歌わせて走ってくので、ここも安定感抜群。 機動力を持ったオケがしっかりと地に足つけて走って見事でした。

20分間の休憩を挟んで、いよいよメインのショスタコーヴィチの交響曲第10番。 かつて宝塚市交響楽団の第41回定期演奏会でも聴いたことがあるので実演では2回目となりますが、難曲ですね。 自分にとって・・・。 イマイチ捉えどころの分からない長大な第1楽章、第2楽章以降はお馴染みのフレーズが出てきて盛り上がりますが、第3楽章の終わりから第4楽章の初めがイマイチ馴染めない感じがぬぐえない・・・そんな印象ですが、意外と第1楽章冒頭より各楽器が織り成す響きを面白く聴かせてもらいました。

第1楽章、低弦の奥深い響きより開始、ヴァイオリンも深い響きでしたが、ヴィオラが甘く美しい響きにハッとしました。 コントラバスが芯になった弦楽アンサンブルは豊かで安定感抜群。 透明感高いヴァイオリンも冴えますね。 緻密に組み立てられた音楽、中井さんが分かりやすい指揮でリードしていて、客席から見ていても納得度の高い振りです。 徐々に緊張感を高めてクライマックス。 ピッコロが絶叫調の吹きますが、きちっとオケ全体の響きにマッチして纏まり感充分。 タイトなホルン、銅鑼も打たれて、パワフルながら堂々とした落ち着きすら感じられ、集中力抜群。 これを越えて深みのあるサウンドに。 ヴィオラの美しい響き、低弦の上に乗ったヴァイオリンも透明感ありました。 静かな緊張感を保ってこの楽章を終了。 繰り返しになりますが、緻密に組み立てられた音楽だったんだなと感じ入りました。

第2楽章、深く張りを持った弦の響き、木管楽器のパッセージでスピードアップ。 スネアがカッコ良く打ち、ホルンもまたカッコ良い。 場面転換をしっかりとキメて、また走ります。 木管奏者の方がノッて吹いてらっしゃいますね(演奏していて楽しいんでしょうね)。 聴いているこちらも楽しい。 中井さん、ここでは大きく上下動させてリードしていて、要所をしっかり決めて曲を進め、ここでも安定感あります。 大きく腕を振ってこの楽章を締めました。

第3楽章、緻密な弦楽アンサンブル、コントラバスの深く重い響き、ヴァイオリンはしっとりとした響きでしたね。 フレーズがフルートから弦楽器に移って次第にヴォリュームアップ。 これが収まるとファゴットがハリのある美しい音色でフレーズを吹き素敵。 コントラバスにフレーズを渡して力を持たせ、ホルンがカッコ良く吹いてパワフル。 中井さん各パートを見事にコントロールして、各パートもしっかりとそれに応えて聴き応え十分。 タイトな音楽となっても、安定感あるのはコントラバスが芯になっているからでしょう。 山を越えて、コンマスの断片的なソロ、こんな風に象徴的に扱われているのですね、CDではよくわかってませんでした。

第4楽章、コントラバスの重い響きより始まって、木管楽器も加わって徐々に走り始めました。 落ち着いたアンサンブルが余裕で走っている感じ。 金管も加わってパワフルなんですが、ここもきちっと制御されています。 大太鼓が打たれたクライマックス、絶叫したり、勢いに任せることのないきちっと抑制かけた音楽が流れます。 要所でのコントラバス、底力があってカッコ良くで安定感も抜群。 ホルンの斉奏、スネアなどもカッコ良く切り込んできましたね。 音楽がいったん落ち着き、木管と弦楽器の会話を経てから、またコントラバスが芯になってのエンディング、ティムパニ奏者の女性がこれまた鋭く打ち分けて見ていても爽快、そして盛り上がった音楽を中井さんが右腕を大きく回しての着地。 残響がホールに残り、客席からは大きな拍手が湧きあがりました。 最後の最後まできちんと美しく響くことを計算されたような演奏でしたね。 大きな拍手を贈りました。

アンコールもショスタコーヴィッチ、これを告げる指揮者の中井さんの明晰な声がホールに響きました。 聞き取れない指揮者の方も多いのですけれど、きっとこんな声のように曲も明晰に分析してオケに指示していたのではないかな、と想像しました。 オーケストラもそんな中井さんによく応えて、聴き応えのある演奏をして下さり安心して楽しめました。 ありがとうございました。 そして皆さんお疲れさまでした。


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2016年09月06日

紫苑交響楽団 第28回定期演奏会

日時:2016年9月4日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:京都府長岡記念文化会館

曲目:ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
   モーツァルト/交響曲第40番
   チャイコフスキー/交響曲第4番
(アンコール)チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」第3幕第15番「情景」

指揮:森口真司

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どの曲もビシっと縦横の線が揃っていて、弦楽器と金管楽器の音色が揃った素晴らしい演奏でした。 いつもこのオケでは弦楽アンサンブルの巧さを言うのですが、今回は木管も金管もそして打楽器も自信を持った素晴らしい演奏でした。 森口さんが指揮されるとオケの一体感のレベルが上がるみたい。

個人的なこの日の白眉は、モーツァルトの交響曲第40番でしたね。 名曲中の名曲ながらこんな素晴らしい演奏をアマオケで聴けるとは思ってもみませんでした。

オケの編成を10-10-8-7-4に絞込んだ通常配置(ウェーバーとチャイコフスキーは 13-12-10-8-6 での通常配置)より、やわらかくしなるような第1楽章の開始、要所でのキレや押しの強さも感じさせるストイックな演奏ながらロマンの香りも漂います。 弦楽アンサンブルの裏で吹くオーボエ、ホルン、フルートなどが健闘、クラリネットがまた渋いいい音色していましたね。 クライマックスでは低弦が雄弁となりましたが、見事なバランス感覚で聴き応えありました。
第2楽章は、豊かな響きのヴィオラ、第2ヴァイオリンそして第1ヴァイオリンと回って上質な音楽。 森口さんが緻密に振り分けて進めていて、木管と弦楽器の響きがよくマッチした音楽が何より息づいていました。
第3楽章、低弦が芯になったハリのある響きでの開始。 高音弦も良く揃って透明感が高く、自信を持ったアンサンブルでしたね。 少々固めの木管アンサンブルにまろやかなホルンが溶け合います。 主題戻してスクエアに振る森口さんのもとストイックにこの楽章を纏めて終了。
終楽章は少々音量上がったでしょうか、各楽器の凝縮した響きでの開始。 低弦が引き締まってストイックですが、第2ヴァイオリンが歌っていたり、クラリネットの柔らかな響き、そしての裏で吹くファゴットの音色が素敵でした。 全奏となってヴァイオリンの疾走感がまた素晴らしい。 木管と弦楽器も会話も見事に決めつつ進めて、緻密にまとめたエンディングまで一気に聴かせました。

パンフレットにも書かれていたように、耳慣れた名曲でもあるし、なんたってモーツァルト。 ちょっと間違っても、また一つも間違わずに機械的に演奏できたとしてもモーツァルトではなくなる、そんな難曲なのですけれど、こんなに素晴らしい演奏に出会えて本当に幸せでした。 というかしばし唖然・・・というのが本当かな。 本当に素晴らしい演奏に出会えて幸せでした。

本当にこれがアマチュア?かと思えるほどの巧い演奏に感動しましたが、個人的にはキレキレで演奏されたメインのチャイコフスキーはちょっと窮屈さも感じてしまいました。 もともとチャイコフスキーの後半3曲の交響曲はどれも好みではなくて(前半3曲は好きなのですけどね)、派手に盛り上ってゆくほどに白けてしまう癖があるので、今回もそんな面も出たみたいです。

チャイコフスキーの交響曲第4番、第1楽章冒頭の金管ファンファーレより見事に練り込まれた響きが会場を包み込みました。 これでこの演奏は素晴らしいものになるということを確信。 雄弁なオケはダイナミックな響きながらも騒々しさとは無縁で、場面転換もカッコ良く決めて進んでゆきます。 しかし聴きこむほどに、なんだかな〜 こんなに巧く演奏されると、かえってこの曲の精神の深さって何かな? と思ってしまうわけで・・・第3楽章にいたっては交響曲というよりバレエ曲ちゃう? なんて思ってしまうのでした。 これが下手なオケだと、もっと違うところを聴いてしまうので、曲の精神性とかには至らないんですけどね。 とにかくこんなこと考えるなんてチャイコフスキーってホンマ苦手なんですね。 すみません。

でもオケは本当に巧かったですよ。 イケイケどんどんのアマオケなら音が前に前にと飛んで出てくるのですけれど、このオケではオケの各パートの音がオケの中できちんと響き合った音楽となって照らし出されるような感じ。 勢いに任せることなどなくきちんと抑制かかってました。 各自各パートが自信を持って演奏されているからでしょうね。 そして森口さんがきちんとバランスとって届けてくださる。 終楽章のフィナーレこそ森口さんがアッチェランドをかけて凄まじい勢いとして、大きく力のこもった着地の動作でしたけれども、一番最後の音は軽くふわっと響きを残す巧さ。 本当に見事な演奏でした。 唸りました。

これに先立って演奏されたウェーバーのオイリアンテ序曲、落着いて張りのある豊かな響きによる開始。 左の高音弦と右の低音弦がきちんと分離されて届けられるステレオ効果、これをまた見事にブレンドさせて伸びやかな音楽となっていました。 森口さんが右手を回してキレ良く場面転換、今度は豊穣な響きとなります。 高音弦2プルトづつの合奏もしっとりと綺麗でしたが、このあと全奏となっても第1ヴァイオリンの前から後ろのプルトまできちんと揃ったボウイング。 透明感と力強さはこんな訓練によって出てくるのですね。 キレの良さ、透明感の高さに、力強さとまとまり感の良さなどなど、こちらもじつに聴き応えのある素晴らしい演奏でした。

この日の演奏会、長岡記念文化会館はほぼ満杯。 かつて団員さんのご家族と思われる小さな子供を連れた方が多く、空席も目立っていた頃は遠い昔となってしまいましたね。 好調の紫苑交響楽団、ますますの発展を期待します。 皆さんお疲れさまでした。


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2016年09月03日

オーケストラ・ソノリテ 第31回定期演奏会

日時:2016年8月28日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:尼崎市総合文化センター・あましんアルカイックホール

曲目:ドヴォルザーク/序曲「自然の王国で」
   スメタナ/連作交響詩「わが祖国」より第6曲「ブラニーク」
   ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
(アンコール)J.シュトラウス/ピチカート・ポルカ

指揮:白谷 隆

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「ソノリテ」とはフランス語で「響き」という意味とのこと。 何よりも響きを大切にしたいとの思いで名付けられたオーケストラらしく、美しい響きに満ちた演奏会を楽しみました。

指揮者の白谷さん、初めて聴く指揮者の方だと思います。 若い指揮者ながら常に縦振りを基本としてしっかりとオーケストラをリード、時に機械仕掛けの人形のようにオーケストラを盛り上げてゆきますが、オーソドックスに徹した音楽造りにも好感が持てました。 アンコール曲はその反動からか、タメを作ったり緩急効かせて遊んでいましたけれど(会場の多くいらしたお子さま向けには面白いとは思いましたけど)・・・

さて話を戻し、響きの良さでまず聴かせたのがドヴォルザークの序曲「自然の王国で」。 高音弦と木管の綺麗な響きがとても爽やかで印象的でした。 白谷さんも大きなストロークで詩情豊かにオケを歌わせていたのに耳を奪われました。 そしてよく見ていると、木管奏者のアンサンブル、各パートトップ(例えばフルートとオーボエ、クラリネットとファゴット、そしてこの4人)が同じように身体を前後左右に動かしながら演奏してらっしゃる。 久々に見たような気がします。 個人の技量が優れているオケはよくありますけれど、各トップ奏者が協調しあって音楽を奏でているのってなかなかお目にかかれないのですよね。 とても嬉しくなりました。
そしてあと嬉しかったのは、指揮者の白谷さんの腕がゆっくりと降りたあと、客席からおもむろに拍手が湧きあがってきたこと。 豊かな音楽性を示した演奏だっただけに、余韻にも浸れたいい時間を頂けました。

2曲目はスメタナの「わが祖国」より最終曲である「ブラニーク」。 タイトでキレキレっの開始、7本もある低弦がしっかりと揃って芯となっていましたね。 凝縮した響き、緻密かつタイトに曲を進めていますが、弦楽器が刻むリズムに乗った管楽器の響きがよくマッチして聴き応えありました。 ここでも木管楽器アンサンブルの妙技を堪能。
トランペットを始め金管楽器群はどれも角が取れた甘さを持った響きなのですけど、白谷さんのしっかりとしたリズムのもと時に金管楽器が咆哮すると押し出しの強いやや堅めの響きとなっていたのは「我が祖国」終曲らしい盛り上がりでしょうね。 この曲も最後まできちんと纏めた着地。 とてもよく纏まっていた演奏でした。

休憩を挟んでベートーヴェンの田園交響曲。 オケのリーダーがコンマスよりコンミスに交代しましたが、オケの弦楽器編成は前半と同じく 10-9-8-8-7 の通常配置。 最近、他のオケを聴きに行っても、高音弦が薄く中低弦に厚みを持たせた編成が多いような気がしますね。

さて演奏はこれまでに書いた良い所が満載、常に縦振りの白谷さんの指揮のもと、実にオーソドックスな進行で聴き応えのある田園交響曲としていました。 透明感の高い高音弦、第2ヴァイオリンがしっかりと響いて第1ヴァイオンと会話していますし、コントラバスも常に一体となっていて、音量ではなくスピード感やキレを持った響きで曲を支えたり、時に切り込んだりしていて、とても聴き応えありました。 そして毎度書きますけれど、木管楽器アンサンブルの妙技、これ無くしてはこの曲は成立しませんけれど、個々人の技量・音色が見事なうえにこれらが協調しあっているのが本当に素晴らしい。 そして嵐の場面でも引き締まった低弦の底力のある響きをベースに決して勢いに任せず緻密に演じ分けて、明るいクラリネットの音色、張りのあるホルンに導いて、第1ヴァイオリンの透明感の高い柔らかな陽光が注ぎ込む・・・自然な音楽の高まり、素適な世界が広がっていました。 最後は弱音器を付けたホルンの渋い響き、ゆったりとそしてサラリと終えたフィニッシュも良かったですね。 指揮者の解釈や思いもあったと思いますが、オーソドックスに曲に向き合ってオーケストラを美しく響かせる演奏に徹していたように感じました。

アンコールはシュトラウスのピチカート・ポルカ。 こちらは上記の反動からか、タメをたっぷりととって、アクセントをうんと付けた、ある種やり過ぎ感を持ったコテコテの音楽でしたね。 指揮する楽しみ、ってこんな風にオケをドライブすることやねん・・・ってことを大勢来ていた会場のちびっ子に教えているかのような演奏でした。 ご愛嬌ですね。

とにかくオケの響きの美しさをたっぷりと味あわせて頂きました。 ちょっと危なっかしい場面やらもありましたけど、それをも上回る美しさ。 皆さんお疲れさまでした。



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