2014年03月17日

六甲フィルハーモニー管弦楽団 第37回定期演奏会

日時:2014年3月16日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:神戸文化ホール・大ホール

曲目:グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
   ラフマニノフ/交響的舞曲 作品45
   ラフマニノフ/交響曲第2番 ホ短調 作品27
(アンコール)ハチャトゥリアン/仮面舞踏会よりワルツ

指揮:ヴィヤチェスラフ・プラソロフ(Vyacheslav Prasolov)

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ロシア・マリ=エル共和国国立歌劇場首席指揮者、ノヴォシビルスク国立歌劇場常任指揮者を歴任されたヴィヤチェスラフ・プラソロフ氏の指揮の元、緻密さにパワーを兼ね備えたロシア・ロマン溢れる素晴らしい演奏に感動しました。 ヴィヤチェスラフ・プラソロフ氏、2008年に続いての招聘。 前回(ショスターコヴィッチの交響曲第7番)は生憎他の演奏会とブッキングして聴くことは出来ませんでしたが、再び招聘されたのも納得です。 オケと息のあった見事な演奏が展開され、特に通常配置で 16-14-11-10-8 の編成より繰り出される弦の響き、分奏が実に見事でした。 各パートの響きが絡み合い、混ざり合い、時には主張しながら濃厚なロシア・ロマンを表現していました。

こう書くと、土俗的なロシア風を想像されるかもしれませんが、響きにキレがあるので現代的な感性による演奏でもありました。 なかでもラフマニノフの交響的舞曲第1楽章など緻密にコントロールされた響きに満ちていて、わくわくするような音楽造り。 スピード感もありましたし、またサックスの響きに代表されるような憧憬を孕んだロマンも存分にあって、見事なバランス感覚。 素晴らしかった。

冒頭に演奏された「ルスランとリュドミラ」序曲。 いかに速く演奏することの代表みたいな曲ですけれど、キレのある見事なスピード感と、チェロの旋律による対比。 音量も大きく、少々荒っぽくも感じた面もありましたけれど、緻密な演奏でした。 ラフマニノフの交響的舞曲や交響曲第2番では、音量こそ大き目でしたけど(ロシア的?)洗練度がまるで違っていたようです。

この音量が大きかったこともあるでしょうが、聴いているだけでもけっこうな疲労感。 特に交響的舞曲の第3楽章、濃厚な音楽ながら引き締まった響き、フィナーレではタイトなドラも鳴っていましたね。 また交響曲第2番では第2楽章から第3楽章にかけて、スピード感のある演奏が展開のあとの濃厚なロマン溢れる演奏だったこともあって、第3楽章で周りを見渡すと、けっこう舟を漕いでいる方がいらっしゃいましたね。 厚い弦の響きに抑制の効いた管楽器、打楽器もコンパクトに鳴らしていたようで、濃厚な弦の旋律に巻き込まれたのかもしれません。 とくにこれでもかっという感じの濃厚な旋律が繰り返されていました。

そしてもっと濃厚、特濃だったのがアンコール。 これまでよりも大振りとした音量を更に上げたパワフルな演奏を始めましたが、途中で指揮台を降りたヴィヤチェスラフ・プラソロフ氏。 ヴィオラの3プルト目あたりで腕組みをして立ち、オケのみでの演奏。 「こいつらオレが居なくてもこんなに巧く演奏するんだぜ」って言っている表情でしたね。 指揮台に戻ってから、にこやかにオケをドライブしているエンターテイメント性のあるマエストロ。 六甲フィルとの相性の良さを感じました。

素晴らしい演奏に加え、そして楽しい気持ちにもさせていただいて帰路につくことが出来ました。 ありがとうございました。



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2014年03月10日

大阪市民管弦楽団 第79回定期演奏会

日時:2014年3月9日(日) 15:00開演(14:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 第1幕への前奏曲
   R.シュトラウス/四つの最後の歌 -*
   ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調「新世界より」
(アンコール)ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調「新世界より」第2楽章冒頭

独唱:津幡泰子(S) -*

指揮:藏野雅彦

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ステージ上に対向配置にてコントラバス8本、チェロ12本が並ぶという物凄い編成にまず驚かされましたが、響きの角が綺麗に取れた弦の響きが素晴らしい演奏会でした。 中でも新世界交響曲の第2楽章冒頭、ビロードのような柔らかな響きの序奏部分にぐっと惹き込まれました。 そしてお馴染みのコールアングレも落ち着いた響き、しみじみとさせる演奏が実に素晴らしく、感動。 そしてアンコールでの再演、集中力が切れることなど無く、ここでもまた素晴らしい演奏に接することができ、感激。 その感激を持ったまま会場を後にしました。

指揮者の藏野さん、すきっとした指揮・的確な指示でオーケストラをコントロールしていて見ていていつもながら気持ちがいいですね。 オーケストラもそれによく応えていて見事でした。

「ニュルンベルグのマイスタージンガー」 第1幕への前奏曲では、冒頭こそやや硬さがあって響きが溶け合っていないように感じた部分もありましたけれど、次第にこなれてきました。 人数の多さで押し切るのではなく、きちっと制御されて刺激的な響きを抑え込んでいましたね。 その中で朗々と吹くトランペットのメロディが浮かぶように聴こえてくるなど、配慮の行き届いた演奏は藏野さんの手腕にもよるところ大であると感じたしだいです。

さらにオーケストラの響きが溶け合ってうねるように聴こえたのが「四つの最後の歌」。 濃厚で官能的な響きながら死に直面する陰影感をもったオケの響きが素敵でした。 ホルンのソロも柔らかな響きで良かったですね。 惜しむらくは津幡さんの声が2階席までは届き難かったことかな。 情感たっぷりに歌っているのが垣間見えますけれど、オケの響きとも同質であってオケの音量が上ると何を歌っているのか聞き取れない感じ。 そもそもそういう曲であるようにも思いますけれど。 とにかくオケでは、ソロ・ヴァイオリン、そして4曲目のピッコロの響きに至るまで同質な芳醇な響きで調和されていて見事でした。

25分間のちょっと長い休憩を挟んでメインの新世界交響曲。 前半プログラムは先にも書いたとおり 12-11-10-12-8 の対向配置でしたが、後半も対向配置で 13-11-10-12-8 とほぼ同じ編成のままスタート。 藏野さん、じっくりと丁寧に進める部分とタイトに締める部分でメリハリを付けて盛り上げてゆくスタイル。 細部まで見事にコントロールしていて、巨大オケのパワフルさを前面に出すことのない見事な演奏でした。 第2楽章は冒頭で書いたとおり、コールアングレの鼻濁音のような柔らかな響きが素敵、また慈しむように絡むクラリネットなどの木管アンサンブルも見事でした。 弦を1プルトとして、しっかりと音楽を止め、しみじみとさせながらもたっぷりと見せ場を作る集中力の高さもありました。 終楽章もまた集中力高く、よく統率された響きで自然と音楽を高揚。 底力のある響きで充実のフィナーレ。 

新世界交響曲、耳馴染みの多いある種手垢のついたような曲ながら、一か所も惰性で流すことなく隅々まで磨き込んだような演奏として、新鮮に響いてくる場面もあり、素晴らしい演奏でした。 皆さんお疲れさまでした。

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2014年02月23日

同志社女子大学オペラクラス 第27回公演「フィガロの結婚」

日時:2014年2月22日(土) 14:00開演(13:30開場)
場所:同志社女子大学京田辺キャンパス・新島記念講堂

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」全4幕(イタリア語上演)

演出・音楽指導:井上敏典
音楽指導:井原秀人
衣装:岸井克己

アルマヴィーア伯爵:青木耕平
フィガロ:井原秀人
ドン・バルトロ:雁木 悟
ドン・バジリオ:谷浩一郎
ドン・クルツィオ:平松実留
アントニオ:佐藤彰宏

<4回生オペラクラス配役>
伯爵夫人:川人麻理絵(2幕前)
      吉川 茜(2幕後)
      久保田美潮(3幕)
      後藤伽那(4幕)
スザンナ:白石秋季(1幕)
      長谷川巳恭(2幕前)
      杉山夏帆(2幕後・3幕前)
      菊池芽依(3幕後)
      北薗沙絵(4幕)
ケルビーノ:豊田ひかる(1幕)
       安井歩舞(2幕)
       杉本知奈津(3・4幕)
マルチェリーナ:中野ひかる(1・2幕)
         山下春菜(3・4幕)
バルバリーナ:佐貫瑞穂

花娘・村娘:3年次オペラクラス
      鈴木 萌、松永麻美
村の若者:大阪音楽大学在学生卒業生有志

管弦楽:同志社女子大学音楽学科管弦楽団
チェンバロ:中西智美(卒業生)

指揮:瀬山智博

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2008年の第21回公演以来、6年振り6回目の鑑賞となりました。

思い起こせは最初の鑑賞は2004年の第17回公演、アルマヴィーア伯爵:三原 剛、フィガロ:伊藤 正、バルトロ:井原秀人、バジリオ:松岡重親という布陣に指揮は井村誠貴さん。 この井村さんからのお薦めで伺ったのですけれど、素晴しくてほぼ毎年のように鑑賞していたのですが、単身赴任となって長らくご無沙汰してしまいました。

そしてご無沙汰している間に演出も指揮者も変わってしまい、おまけに本年より原語による上演とのこと、興味津々で伺わせて頂きました。

原語での上演ということもあって、字幕と舞台を行ったりきたり、最初はちょっと戸惑ってしまいましたけれど、よく考えるとすでに過去5回も鑑賞しているわけです。 また単身赴任時代には図書館で借りたアーノンクール指揮によるCDで通勤時に繰り返し聴いていたこともあって、ストーリーと音楽は、時々迷子になるものの、ほぼ解っているので字幕を補助的に見ることにして舞台にできるだけ集中するようにしました。

この原語上演、どうだったのでしょうか。 いくら耳なじみの音楽であっても発音の出来までは知る由もありませんけれど、オペラクラスの皆さんよく頑張っていたのではないでしょうか。 しっかりと堂々と歌われていました。 しかし、どの方も総じて声量が乏しいように感じて、関西トップクラスの男声陣の方々と堂々と渡り合う新鮮なオペラクラスの面々の歌唱を期待していたのでしたが、原語で覚えて、という作業でちょっと小さくなってしまったのかな、と思ってしまいました。 演技も表情や手振りなどもよく使って頑張ってましたけど、ちょっと人形劇っぽく感じる場面もあったりしてどうかなと正直感じた次第です。 これからどんどんとこなれてゆくのでしょう、期待したいと思います。

そんな印象を総じて持っていたのですが、その中でもとても見事だったのは第3幕の伯爵夫人。 声量も十分にあってしなやかな声質、コントロールもよく効いていました。 ちょっと断トツの感も持ち、素晴しかったですね。 あと第4幕の伯爵夫人はちょっと線は細いものの清らかで柔らかな声が良く、そのためもあってか夫人が可愛いお嬢さんに見えてしまいましたけれど。 またこの幕では、スザンナもそれまでと雰囲気がちょっと違ってしっかりもののお姉さんっぽく、落ち着いたなめらかな声で声量も出ていて良かったのではないかな。 若い女性としては難しい役どころのマリチェリーナですが、落ち着いたよく透る柔らかな声でした、もうちょっと声量があると更によかったかな。

と言いたい放題を書いてますが、男声陣ではバジリオの谷浩一郎さんが圧倒的でした。 片岡愛之助ばりの役柄でこれまでの松岡重親さんも見事でしたけれど、とても見応えもありまた一番声も良く出ていましたね。 他の男声陣と比してもヴォリューム1つぶん大きかったように感じました。 伯爵は演技もしっかりとしていましたが、この舞台では三原剛さんの存在感、圧倒的なイメージが強くて・・・後半は見慣れてきましたけどちょっと違和感を持って見てしまいました。 違和感というと、肝心のフィガロですけれど白状すると以前より個人的には違和感を持っていて、やはり最初にここで見た伊藤正さんがフィガロで井原秀人さんはずっとバルトロのイメージなんです。 申し訳ありませんけれど。

最後に管弦楽は、始めて聴かせていただく瀬山智博さんでしたが、躍動的な音楽造りで舞台を支えていました。 オケもよく頑張っていましたね、上質のアンサンブルでした。 今回トランペットが目の前にいる席だったので、やたらラッパと太鼓の音が耳につきましたけど、きちんと抑制効かせて響かせたラッパと深い響きながらコンパクトに打っていた太鼓によってまったく邪魔になるどころかこんな風に吹いて打っているのか、と発見にもなりました。 特に第3幕の後半など舞台と相俟ってわくわくする演奏を楽しんでいました。

久しぶりだったのと、原語上演ということもあって、今回はちょっと斜めに見てしまった感も多いにありますけれど(すみません)、やはりカーテンコールになると関係者ではありませんが目頭が熱くなりました。 一列に並ばれた皆さんのお顔を見ると、各場面で歌われていた場面を思い起こします。 色々と書いてはきましたが、それぞれ皆さん精一杯歌われたと感じましたし、一所懸命やりきった爽快感も感じた次第です。 とても貴重な経験をされたと思います。 出演された皆さんの今後のご活躍を期待します。

posted by fronte360 at 08:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 14-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする