2014年08月25日

オーケストラ・ソノリテ 第27回定期演奏会

日時:2014年8月24日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:あましんアルカイックホール

曲目:ベートーヴェン/エグモント序曲
   ビゼー/交響曲ハ長調
   チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調
(アンコール)失念

指揮:袖岡浩平

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いずれもエッジの立った演奏ながら、チャイコフスキーでの重厚感を持ちながらも艶のある響きで推進された音楽は見事でした。

指揮者の袖岡浩平さん、始めて聴く人ですが若手らしいキビキビとした動作でオケに的確に指示を与えてゆき、オケもそれによく応えていたと思います。 練習量の差でしょうか、前2曲に比し、チャイコフスキーでのオケの響きのブレンドに差がありましたね。

エグモント序曲では、いかにもベートーヴェンのデスマスクを想起させるようなエッジの効いた重厚感で堂々と演奏しきった、という感じでしたね。

ビゼーの交響曲も、分奏が良く、張りのあるオケの響きで明るく彩られていましたけれど、前半はやや管楽器にバランスがあったみたい。 元気のある演奏ながら音がすべて前に前にと出ていたようです。 もうちょっとウィットの効いたお洒落な演奏が好きなのですね(偉そうにすみません)。

休憩を挟んだチャコフスキーの交響曲第4番、冒頭より強靭なホルン、トロンボーンと続いてトランペットの突き抜ける感じなど見事な開始。 低弦に粘りのある弦楽器の分奏も良く、前2曲とはアンサンブルの深みが違いました。 躍動的なピチカートで演奏される第3楽章などアンサンブル全体がよく揃って見事な推進力。 そして白眉は終楽章、ダイナミズムを伴った響きのエッジが立って、一糸乱れぬ大団円へと結びつけました。

じつに見事な演奏で、演奏には余裕も感じましたけれど、ただしどの曲も音量が常にmf〜fffみたいな感じで、またテンポを揺らすこともなかったでしょうか。 なんだかひたすら頑張っているようにも思え、とくにチャイコのこの曲はそんな曲でもあるのですが、途中でちょっと疲れたのが正直なところでした(高知より戻った疲れが癒えていないためかも)。

巧いか下手かと問われると、間違いなく巧いと答えますけれどね、このあたりは体調および感覚の違いということで許してください。 次回は木下麻由加さんという神戸大出身でデンマークで勉強されている若手女性指揮者を迎えて演奏会のようです。 こちらでリベンジできればと思います。 パワフルな演奏だったので本当に皆さんお疲れさまでした。


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2014年08月03日

天理シティーオーケストラ 真夏のオーケストラ!夏休み名曲コンサート

日時:2014年8月3日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:天理市民会館・やまのべホール

曲目:♪オープニングはマーチで華やかに!
    シュランメル/ウィーンはいつもウィーン
   ♪60周年の今年はウマ年!!
    L.アンダーソン/ホームストレッチ
    ヨーゼフ・シュトラウス/ジョッキー・ポルカ
    スッペ/軽騎兵序曲
   ♪合唱とのステージ
    山本直純/歌えバンバン
    チャーチル/ハイ・ホー
    シャーマン兄弟/スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドージャス
   ♪みんなで祝おう!指揮者体験コーナー
    オッフェンバック/カンカン〜天国と地獄より
   ♪音楽でお祝い!60周年万歳!!
    平井康三郎/天理市歌
    ブラームス/大学祝典序曲 ほか
  (アンコール)
    岡野貞一/故郷(ふるさと)
    ヨハン・シュトラウス/ラデツキー行進曲

合唱:天理市ピエーナ少年少女合唱団

指揮とお話:安野英之

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今年で7回目とか、一昨年に続いてやってきました。 未就学の小さなお子さんも入場できる夏休み名曲コンサート。 今年は天理市制60周年とあって、それにちなんだ選曲もされて、非常にアットホームな演奏会を楽しみました。

開場時間より20分ほどして入場すると、ロビーでヴァイオリンやトランペットなどの楽器体験をやっていて、不思議そうに楽器をこわごわと触る子どもに、にこやかな団員さんの笑顔にまず癒されました。 ロビーコンサートはどこのオケでもやっていて、身近に演奏を感じることはできますが、実際に楽器を触れる機会を設けているのはこのオケだけではないでしょうか。 アマオケ団員の楽器とはいえ高価なものであることを知っているだけに、よく楽器を触らせるものだな、と余計な心配をしてしまうほどに頭が下がります。

さてホールに入ると、うろうろと落ち着かない子どもに付き合ってあちこちと席を変わる母子やら、お父さんの隣に座るのだとカン高い声で何度も言っているお穣ちゃん。 ロビーからは、子どもが吹く間延びした楽器の音など、いつもになく気楽に楽しめる雰囲気に満ちてます。

でもステージ上を見ると、オケの弦楽器は対向配置になっていて 6-5-4-4-2 という編成。 子ども向けだからこそ手を抜かずきっちっと演ろうという意思を感じたしだいです。

そして実際の演奏もまたしっかりとしたものでした。 分かりやすくするためでしょう、テンポは少し落としかげんだったでしょうか。 またどの曲もソロを吹く楽器にスポットライトが当たるよう、ソロ以外は音量をやや下げていたようにも感じましたが、恣意的な感じはまったくせず、軽やかで清々しくも感じた演奏となっていました。

天理市ピエーナ少年少女合唱団とのステージは、清んで伸びやかな歌声が魅力的でした。 何よりしっかりとした音程で気持ちいいのですね。 また白雪姫のハイホーやメリーポピンズのスーパー・・・でも変な感情移入なく、軽やかに歌っていたのにとても好感が持てました。 こちらも清々しくて見事でした。

初めて聴いた天理市歌の歌詞も(曲は前回の定演で聴いていましたが)、確かに大きな気持ちにさせるいい歌であると感じましたし、いつもながら安野さんとこのオケの活動が音楽のすそ野を広げ、クラシック音楽の足腰を強くしているのだと実感しました。 天理市民ではありませんがこのような活動を羨ましく思いながらも、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。 来年も都合が合えばまったやってきたいと思います。 とにかく参加された皆さん、お疲れさまでした。

なお演奏会の模様を撮影して公開しても良いとのことでしたので、以下に貼っておきます。

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2014年07月14日

待兼交響楽団 第27回定期演奏会

日時:2014年7月12日(土) 16:00開演(15:30開場)
場所:伊丹アイフォニックホール

曲目:ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
   チャイコフスキー/交響曲第5番 ホ短調
(アンコール)チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」
               第13曲「白鳥たちの踊り」より第6曲ワルツ

指揮・独奏:ゲオルギ・バブアゼ

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ソリッドに響くエネルギッシュなベートーヴェンとチャイコフスキーに圧倒されました。

バブアゼさんの弾き振りによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
タイトな響きながら艶があって時に太く響くバブアゼさんのソロもさることながら、オケの響きが挑戦的。 時に叩きつけるような感じで力を増してパワフルな演奏でした。 第2楽章ではちょっと真面目になりすぎた感じも受けましたが、独特な個性を感じた演奏でした。

チャイコフスキーも同様な演奏でしたが、ソロから開放されたバブアゼさん、細かなニュアンスも付けながらも指揮台の上を素早く動き、機械仕掛けのようなキレの良い動きでオケをリード。 重量感とスピード感を併せもった熱い演奏としていました。

正直なところ、熱い熱い演奏が続いて少々(かなり)聴き疲れをしたのですけれど、とにかくピッチがよく揃った精度の高い弦楽アンサンブルに、バブアゼさんの薫陶が光っていました。 現にバブアゼさんの動きを見ていると、主に弦楽アンサンブルに細かなニュアンスをつけてつつ曲を推進しておられる様子。
しかし、終楽章では手綱もしっかりと取り、強奏としても決して響きを濁らせることのない安定した弦楽アンサンブルをベースに、熱い熱い管打楽器の音楽を載せてフィナーレまで見事に演奏しきって見事でした。

本当にお疲れさまでした。

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2014年07月12日

関西学院交響楽団 第123回定期演奏会

日時:2014年7月6日(日) 14:30開演(13:45開場)
場所:尼崎市総合文化センター・あましんアルカイックホール

曲目:ビゼー/序曲「祖国」Op.19 (-*)
   ドビュッシー(ビュッセル編)/小組曲
   ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 Op.88
(アンコール)マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
       ヨハン・シュトラウス2世/ポルカ「雷鳴と電光」

指揮:新通英洋(客演)、雁木佑輔(-* 学生)

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きちんと統制のとれたオケの響きを楽しみました。 指揮者の新通さん、今回初めて聴く方ですけれど、ドビュッシーとドヴォルザークではまったく違うアプローチだったのに少々驚きました。 ドビュッシーでは、指揮台の上を優雅に動き回り、時に小躍りするような感じで曲をリードしていましたが、ドヴォルザークでは指揮台の上に仁王立ちとなって立ち位置を変えずにしっかりと曲を纏めていました。

ドビュッシーでは判りやすいリードに従って、凛として美しく、力が入っても響きが濁ることのない清新なドビュッシーを堪能。 学生オケらしい清々しい演奏でした。

それに比してドヴォルザークは、ちょっとテンポを遅めにとって構成感をしっかりととった演奏。 チェコ・ローカル色を排してインターナショナルな清新な演奏でした。 美しいメロディが丁寧に仕込まれていました。 個人的には、もうちょっと開放されて情感ある演奏が好きだったので、イマイチ乗り切れなくも感じていましたが、演奏としては良かったと思います。

これに先立って学指揮の雁木さんによるビゼーの「祖国」は、オケと指揮が一丸となった演奏が印象に残りました。 フィナーレでは力み巧く抜いて雄大に歌い上げて立派でしたね。

アンコールでの新通さん、また指揮台の上を自在に動いていて、何ゆえドヴォルザークでは仁王立ちだったのかな・・・ と少々疑問(動いたほうが当方好みになったのではないかと思ったしだい)。 とにかく、指揮者に指示にぴったりと寄り添う機能性の高いオケの音楽を楽しませていただきました。
皆さんお疲れさまでした。

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2014年07月05日

豊中市民管弦楽団 第50回定期演奏会

日時:2014年6月29日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:伊丹市立文化会館大ホール・いたみホール

曲目:シューベルト/交響曲第7番 ロ短調「未完成」
   ベートーヴェン/交響曲第8番 ヘ長調
   ドヴォルザーク/交響曲第9番 ホ短調「新世界より」
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第1番

指揮:谷野里香

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第50回の節目の定期演奏会、「運命」を第8番に据え替えた3大交響曲、いずれもとても力の入った演奏でした。 これも50回という節目の気合だったと感じましたが、少々疲れたのが正直なところ。 いずれもきちんとした演奏で、決して悪い演奏とは思いませんが、これからも回を重ね、新しい世界を切り開くという意味においてもメイン・プログラムの「新世界」交響曲の演奏が素晴しかったですね。 前2曲同様に分奏もしっかりとしていましたが、メリハリ、緩急、そしてタメやコクといった面で他の曲よりも秀でていました。 練習量の差ではないか、と推測した次第です。 今後も研鑽を積まれて更なる発展を期待します。

簡単に演奏会を振り返ってみます。
オーケストラは通常配置で 10-11-8-8-6 の編成。 2階席 28-28 よりの鑑賞となりました。

シューベルトの「未完成」冒頭、引き締まった響きが地の底から響いてくるような開始。 やや音量大きめだったでしょうか。 オーボエのねっとり感も良く、生気あるアンサンブルで上々の滑り出しでした。 しかし音量が全体的に大きく推移していて、mf〜fffあたりずっと演奏されている感じでしたね。 全奏になるとやや無防備にわっ〜と叫ぶ感じもして、少々聴き疲れしました。
第2楽章も同傾向の演奏で、第1楽章よりは力が抜けたようにも感じましたけど、それでも弦楽器が弓を強く押し付けているように思える場面もあり、もうちょっと透明感ある響きでそっと奏でて欲しいな、という場面も散見されました。
10型のオケなのに、16型のオケの響きを出そうとしている感じにも思えたのは、気合のせいかもしれませんね。

ベートーヴェンの交響曲第8番、実はこの曲を一番期待していたのですが、この曲の演奏もまた少々聴き疲れしてしまいました。 当方、この曲はメンゲルベルクによる前時代的な濃い演奏で開眼したこともあるのですけど、この演奏も基本的には同傾向な熱く強い演奏ではあったのですが、いまいちしっくりこなかった。 谷野さん、丁寧に振ってオケをリードしていて、オケも縦の線は合わせて奮闘していますが、やはり全体的にわっ〜と演奏されているような感じ。 メンゲルベルクのようにポルタメントを効かせて欲しい、とは思いませんが、全体的に前に前に進む感じで、もうちょいと横の響きにまとまり感が欲しかったなぁ、と思った次第。 生意気ですみません。

なおこの演奏前、どなたかの携帯電話の呼び出し音が延々とホール内にこだましていて、谷野さんもじっとそれが止むのを待っていましたが、なかなか鳴り止まず観客より失笑を誘う場面もありました。 これで出鼻をくじかれた、ようなことはないと思いますが、一応記しておきます。

あとこの第8番の演奏のあと、谷野さんが楽屋に下がってすぐ照明が落ち、カーテンコールが無くて少々驚きましたが、更に休憩を告げるアナウンスもなく、15分休憩なのか20分休憩なのかもわからず、いきなり休憩に入ったのも驚くとともに、何かあったのかなと少々勘ぐってもみたり・・・ なんか変な感じでしたね。

休憩を終えたあと、オケの編成が 10-11-8-9-6 とチェロが1本増強されたようです。
これが功を奏したとは思いませんが、新世界交響曲は前2曲とは響きの質が異なっていました。

第1楽章、中低音弦からの爽やかな響きで開始。 これまで少々不安定感もあったホルンもタイト、そして木管アンサンブルも良くて上々の滑り出し。 これを重量感とスピード感を併せ持った響きで進めて行き見事。 谷野さん、これまでと違って大きな振りにしていて、オケより躍動感に加えて立体感もある響きを導き出していました。 これは多分に練習量の差ではないかと思った次第。

第2楽章、しっとりとしたコールアングレもさることながら、そこに至るまでの厳かな低音金管楽器と浮遊感のある弦アンサンブルとか、コールアングレに最後絡むクラリネットやファゴットなどなど見事にじっくりと聴かせてくれました。 このあとも重量感と立体感を持った演奏とし、全奏での雄大感をまたすっと退くあたりのコントロールも見事でした。

第3楽章、トライアングルの明るい響きのあとパワフルに曲を進めます。 谷野さんの振りはここではより大きくなったような感じ。 しかしオケの響きはタイトに締まってスピード感があるせいか、騒くは感じません。 コントラバスもよく纏まっていました。 フィナーレをタイトに締めた谷野さんの棒が降りず、そのままで呼吸を合わせ、アタッカ。

終楽章に突入、集中力を高め、先ほどよりも更に力を増して進みます。 ティムパニがコンパクトに打っていたのが良かったですね。 シンバルがそっと入って場面転換、木管をしっとりと響かせてから、コントラバスの低い響きよりまた盛り上がってゆき、パワフルかつタイトで躍動感のある演奏。 アンサンブルの連携が良くて緩急自在。 そして常にコントラバスの磐石の響きが底で鳴っていて安定感があります。 最後はタメをつくってフレーズをまわし、フェルマータのトランペットはやや長めとして終結。 見事でした。

惜しむらくは、谷野さんの棒が止まってまだ上がっているうちにボラボーがかかったことかな。 もうちょっと待てないのでしょうかね。 ご贔屓さんなのでしょうが。

アンコールはハンガリー舞曲第1番。 大振りな演奏でオケをコントロールして会場を沸かせて、ああ楽しかった、と会場を後にさせてくれました。
いろいろと書きましたけれど、プログラムの団長さんの御挨拶に率直なご意見をお聞かせいただき今後の活動の励みにしたいと書かれていましたので、参考になるか解りませんが、今後も研鑽を積まれて更なる発展を期待します。


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2014年06月29日

天理シティーオーケストラ 第14回定期演奏会

日時:2014年6月28日(土) 16:00開演(15:00開場)
場所:天理市民会館・やまのべホール

曲目:スッぺ/喜歌劇「軽騎兵」序曲
   ヨーゼフ・シュトラウス/ポルカ・マズルカ「とんぼ」
   ヨーゼフ・シュトラウス/ワルツ「天体の音楽」
   J.シュトラウスII/ウィーンの森の物語
   ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第6番
(アンコール)平井康三郎/天理市歌
(アンコール)J.シュトラウス/ラデツキー行進曲

指揮:安野英之(常任)

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当方の演奏会案内に以下のように書いたのが大当たりでした。
天理シティオケの定期演奏会はウィーンを意識された演奏会でしょうか。天理は奈良のウィーンと言っても過言ではないほど音楽が盛んな街です。
指揮者の安野さんのプレトークで、今回の演奏会は天理市制60周年、6にちなんで田園交響曲、そして天理はウィーンになりたいとの思いを語られていました。 当方も天理の音楽への取り組みは素晴しいと思っているので同感。

演奏内容も田園も良かったけれど、シュトラウス・ファミリーの音楽が出色。 素晴しく楽しい演奏で、「とんぼ」が始まった瞬間より、暖かな空気がゆらいで流れる音楽に魅了されました。 うっとり。 裏で吹くトランペット、弦楽アンサンブルがまた心地良かったですね。

この曲、小澤征爾さんがウィーンフィルのニューイヤーで振っておられましたが、精密機械みたいな演奏で、汗流して神経を集中させている顔の印象がありますけど・・・これは違うやろ、とずっと思っていました。 安野さんのシュトラウスはこの他の曲も同様ですけれど、演奏を楽しんでおられる様子。 練習では色々と指示されていたかもしれませんが、本番は要所を抑えつつも曲を愛でるように進めておられました。

「天体の音楽」が始まると、今度は明るい光が射し込んできたようでしたね。 そこにヴァイオリンの冷んやりとした響きが艶やかにまた輝いて、おおっこれはまさしく天体・・・ この曲はカラヤンのニューイヤーでのゴージャスな演奏が思い出されますけれど、7-7-5-4-4 の小編成の天理のオケもまた華やかな演奏としつつも、チェロ奏者でもある安野さんによるしっかりとした中音主導の弦楽アンサンブルによる小粋な音楽。 安野さんもそしてまた客席も音楽を楽しんでいました。

そんな小編成アンサンブルながらゴージャスな響きを醸し出したのが「ウィーンの森の物語」、弦楽パート間の受け渡しやかけあい、ましてツィター部分と弦楽トップ奏者が演奏するという小編成ならではの遊びも含め、これもとても気持ちの良い演奏。 思わず頬が緩んでしまうような音楽。 楽しませていただきました。 天理でも安野さん指揮によるニューイヤーコンサートを企画されたらいかがでしょうか。

休憩を挟んでのメインの田園交響楽。
プレトークでは第2楽章に思い入れがあるとのことで、テンポを遅めにとった慈しむような演奏としていましたね。 でも個人的には、終楽章。 深くてコクのあるヴィオラの響き、対抗配置で際立つ第2ヴァイオリンはやや音量少な目でしたけど、しっかりと対峙していました。 木管と弦アンサンブルの呼吸も合って、凝縮されたようなここの後半楽章が出色。
ゆったりとしていても説明調にならないのはここでも安野さんが音楽を楽しんでいるからでしょう。 エンディングでの厳かな盛り上がり方は自然への敬愛じゃないか、そんな風に感じました。
最後はふわっと力を抜いて締めたのは新ベーレンライター版の解釈でしょうね、でもちょっと客席は戸惑って反応イマイチ感はありましたけれど、当方は十二分に楽しませて頂きました。

アンコールは、6繋がりでハンガリー舞曲第6番、こちらは盛上がりましたね。 田園の終わり方で少々消化不良気味だった客席もこれで大満足。 弦楽アンサンブルによる天理市歌に続いて、お約束のラデツキー行進曲で賑々しくお開き。 会場を出ると小雨が振り出してきましたれど、ついラデツキー行進曲のメロディが口にのぼってきて、久しぶりに演奏会を楽ませていただきました。 ありがとうございました。


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2014年06月01日

オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ 第18回定期演奏会

日時:2014年5月18日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:門真市文化会館(ルミエールホール)大ホール

曲目:バルトーク/ハンガリーの風景
   山田耕筰/交響詩「曼陀羅の華」
   R.シュトラウス/歌曲集より (*)
     「バラのリボン」作品36-1
     「母親の自慢話」作品43-2
     「私は花束を編みたかった」作品68-2
(アンコール) 不明
   シマノフスキ/交響曲第2番 変ロ長調
(アンコール) 赤トンボ

独唱:片山美穂 (*)
ゲストコンサートマスター:井上隆平

指揮:松永健司郎

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20世紀初頭の音楽を集めた演奏会、しかも団内指揮者による演奏会。 「達成感・感動・充実感」の共有を目的として活動されているフォルツァらしい集中力の高い意欲的な演奏会でした。

ただ、生憎当方の体調がすぐれず、知らない曲のオンパレードにイマイチ乗り切れなかったのが残念。 しかしそんな中にあって、絢爛なオケの響きと片山さんの艶やかな声はいかにも R.シュトラウス。 演奏で疲れた身体を癒してくれた R.シュトラウスの歌曲がいずれも秀逸でした。 言葉の理解はできないけれども、曲の表情を歌い分けていたのもよく感じられました。

また歌曲のアンコール曲、終演後のロビーで掲示を探したけれども見つけらませんでしたが、ゲストコンサートマスターの艶やかなヴァイオリンの響きにハープも加わり、片山さんの艶やのある落ち着いた声とよく絡んで素適でした。 片山さん、まだ京都市立芸術大学3年在学中とのこと、豊かな才能が花開く予感を感じました。

オーケストラはコントラバスを舞台中央奥に横1列に並べるウィーンフィルのムジークフェライン流でしたが、見た目の効果はあっても特にバルトークでは低弦の響きの薄さが少々気になりました。 あえてこの演奏は薄くさっぱりとした演奏を目指していたのかもしれませんが。

山田耕筰の交響詩「曼陀羅の華」、気迫のこもった集中力の高い演奏。 R.ショトラウスの影響があるとプログラムに書かれたように官能的な響きで雄大に歌い上げていました。 日本人が1913年にこんな曲を作曲していたという驚きも感じました。

シマノフスキーの交響曲第2番、当方の疲れが出ていたのでしょうね、聴きやすい曲やな、R.シュトラウスに似て絢爛な響きやなとも感じつつ、全奏ではわっ〜と演って音がダンゴ状態? 分奏が聞き分けられず、聴き手としての体力知力の限界であったのでしょう。 部分的に変な音が出たとか、事故ったとかは感じなかったのですけどね。 いまいち印象散漫で申し訳ありません。

アンコールは、松永さんが、知らない曲のオンパレードだったので多分知っている曲を、と言われてから演奏されたのは「赤トンボ」。 チェロのソロが印象的でした。 しかし全般的にロマンティックなアレンジによる「赤トンボ」は、たっぷりとしていて、これでもかといった感じにも思え・・・やはり聴き手として体調万全ではなかったことを思ったしだい。 すみません。 知らない曲を知る楽しみを持っているはずなんですが、今回は聴き手として体調万全でなく、乗り切れませんでした。 次回リンベンジしたいと思います。


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2014年04月26日

奈良女子大学管弦楽団 2014スプリングコンサート

日時:2014年4月20日(日) 13:30開演(12:30開場)
場所:橿原文化会館・大ホール

曲目:シューベルト/交響曲第2番
   イタリアオペラ序曲集
     ヴェルディ/ナブッコ序曲
     ロッシーニ/シンデレラ
     ベッリーニ/カプレーティとモンテッキ序曲
     ヴェルディ/シチリアの晩鐘
(アンコール)日本古謡(H & Y Kurahashi編曲)/さくらさくら

指揮:牧村邦彦

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P4266732 posted by (C)fronte360

イタリア遠征からの凱旋帰国演奏会、ナブッコ序曲冒頭のトロンボーンとチューバの吹奏の響きのなんと素晴らしかったこと。 昨年12月8日、壮行演奏会であった第43回定期演奏会での演奏では縦の線を合わせることと、パワフルな演奏に終始していた感があり、正直気に入らなかったのですけれど、本番までの練習とイタリアでの空気が演奏を一皮も二皮も剥いたようです。 そしてチームワークの良さも特筆しておきたいと思います。 個人的には冒頭に演奏されたシューベルトの交響曲第2番の演奏に感じ入りました。 パート間の連携もさることながら、オケ全体として気持ちのよく乗った演奏として、素晴らしい演奏会でした。

小雨模様のなか橿原文化会館大ホールは8割ほどの入りだったでしょうか。 開演45分前にホールに入ったときでもすでに中央付近はかなりのお客さんで埋まっていて、後ろから8列目、それも左側ブロックの通路側に席を占めました。 どんどんとお客さんが入ってきて開演時にはこの後ろも埋まって、すごい集客力。 5分ほど遅れてオケ・メンバーが整列入場、9-8-8-5-4 の通常配置。

シューベルトの交響曲第2番、ほとんど演奏されない曲ですけれど大変好きな曲。 CDも5種類以上持っており、パンフレットにも書かれた顧問の先生の記事にも登場するムーティ指揮ウィーンフィルの演奏がよく歌っていて一番良いと思います。 これをよく聴いているので、かなりハードルの高い曲でもありますが、冒頭こそ堅さがみられましたけれど、第1楽章中盤でフレーズが繰り返されて油が回ってきたようです。 終わってみれば納得のいくいい演奏でした。 牧村さんの指揮、抑制を効かせつつもオペラ指揮者らしく歌謡性のあるシューベルトらしい旋律を際立たせて親しみやすさを演出していたのではないでしょうか。 オーケストラもよく応えて、木管アンサンブルなど素朴な美しさがあって好感が持てましたし、抑制をよく効かせた金管(トランペットが4本もありましたが)、そして終始軟らかな打音で曲を支えたティムパニも特筆しておきたいと思います。

第1楽章、ゆったりとした序奏、爽やかなヴァイオリンの響きながら手探りのような感じもしてますが、低弦がよく纏まった響きで曲を支えて安定感はあります。 主部に入って軽快に進みますが、まだヴァイオリンに堅さが取れない感じ。 中音弦がしっかりと鳴っているのは好感が持てます。 主題が展開してゆくにつれて気になっていた堅さが取れてきました。 牧村さんもいつもながらの余裕の指揮、判り易く丁寧に振り分けて旋律を浮き上がらせ、ここぞという時に大きく動いて力を入れます。 シューベルトらしい歌が感じられるようになった後半は、けっこうオケもノってきたのでしょう。 終結とともに、会場より大きな拍手。 終ったと勘違いされる方が続出の気合の入った演奏となっていました。

第2楽章、柔らかで明るく瑞々しい響きのヴァイオリン、コントラバスの低音もうまく絡んで進みます。 第2ヴァイオリンが奮闘されていていい響きとなっています。 落ち着いた響きのオーボエそしてフルート、ホルンも加わって、素朴な美しさのあるアンサンブルに好感が持てます。 連携がとてもいいですね。 短調になっての力の入れ具合、その後のクラリネットやファゴットもよかったですよ。 イタリアで同じ釜のメシを食った仲間の連携の良さでしょうか。 牧村さん、ここでも丁寧に振って抑制を効かせつつも、旋律に生気を持たせて響かせるのはオペラ的であるのでしょう。 とにかく終始柔らかなアンサンブルが続いて、この楽章が一番よかったかもしれません。

第3楽章、弾力があってリズミカルに進みます。 コントラバスが曲をしっかりと支えつつも曲を推進させていました。 中間部のオーボエのソロはチャーミングで端正というか可憐な感じだったでしょう。 そしてまたコントラバスの響きが戻ってきて、堂々としながらもしなやかさを持った演奏が見事でした。

終楽章、ふわっとした響きの短い序奏を切って軽快に進みます。 やや速めのテンポだったでしょうか、牧村さん、緩急と強弱をうまくをつけてうきうきとさせる演奏として、時には軽くジャンプもしていました。 オケもよくノった演奏で指揮によく応えて、抑制のよく効いたトランペットやホルンが柔らかく押し出すように響いて、チームワークの良さを強く感じました。 牧村さん、チェロを見て歌わせながら、後ろ手でヴァイオリンを煽ってノリノリの演奏としての堂々のフィナーレ。

冒頭こそ堅さがあってどうなるかと思っていましたけれども、終ってみればすべて良し、でしょう。 素晴しい演奏でした。

15分間の休憩のあとは、イタリアオペラ序曲集。 最初に演奏されたナブッコ序曲冒頭のトロンボーンとチューバの吹奏の響きのなんと素晴らしかったこと。 昨年12月8日、壮行演奏会であった第43回定期演奏会での演奏では縦の線を合わせることと、パワフルな演奏に終始していた感があり、正直気に入らなかったのですけれど、本番までの練習とイタリアでの空気が演奏を一皮も二皮も剥いたようです。

いずれも余裕を持った演奏で、各ソロも気持ちがよくのっていましたし、牧村さんもメリハリをつけて気持ちよく指揮されていたようでした。 簡単に気に入った点を挙げるならば、シンデレラは低弦の響きが柔らかくもよく纏まって響いていたのが印象的。 イタリアでは演奏されなかったというカプレーティとモンテッキ序曲は華やかで聴きやすい曲でしたが全体としてよく纏まって面白く聴かせていました。 シチリアの晩鐘は張りのあるスペクタクルを余裕を持った演奏として明るく陽気なイタリアの風を感じさせる演奏でした。

アンコールは、イタリア演奏会用のアンコール曲として急きょプロに編曲を依頼されたという「さくらさくら」。 和楽器の響きも模したアレンジが随所に見られるもので、御馴染みの密やかなさくらさくらの旋律は弦楽合奏。 今回限りではなく、今後このオケの定番アンコール曲としたら良いと思いました。

とにかく、オケ全体として気持ちのよく乗った演奏が続いた素晴らしい演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。

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2014年03月23日

セント・マーティン・オーケストラ 第10回定期演奏会

日時:2014年3月23日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:箕面メイプルホール

曲目:モーツァルト/交響曲第32番 ト長調 K.318
   芥川也寸志/交響三章
   ブラームス/交響曲第4番 ホ短調 op.98

指揮:河崎 聡

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設立以来取り組んでこられたベートーヴェンの交響曲全曲演奏は前回第9回演奏会で締めくくりましたので、第8回の第1番以来のブラームスの交響曲の連続演奏になったのでしょうか。 その第4番は、プログラムにもあるように晩年のブラームスではなく52歳壮年のブラームスといった感じ。 枯淡の境地とは一線を画したブラームスの演奏でした。

個人的には第3楽章が良かったですね。 深さと重さ、それにキレの良さもあって見事な場面転換。 トライアングルは控えめに鳴っていました。 第4楽章では、音楽を止めながら進めたあと、より熱く主題を戻し、タイトに響かせたエンディングもまた潔い音楽でした。 もっともこの年齢になってしまうと、ちょっと疲れたかな、という感じ。 フレーズの最後にふっとため息をつくような演奏ではなく、しっかりと鳴らしたエキサイティングな演奏でした。

そして今回一番エキサイティングだったのは、芥川也寸志の交響三章でしょう。 1948年8月に完成、23歳の野心作です。 とプログラムにあったとおりの演奏。
第1楽章冒頭のファゴットが奮闘していましたね、クラリネットも素適でした。 そして弦楽アンサンブルもまろやかな響きとなって、覇気もあるけどふくよかな感じ。 ズンチャッチャ・ズンチャッチャのリズムなどさまざまなテーマが出てきますが、いずれもカッコ良い演奏でこなしてゆきました。 ヴィオラが奮闘していたのもよかったですね。 音楽に厚みが出ます。
第2楽章もファゴットが素適でしたね、しかもこのあとも各パートがそれぞれ主張するのですが、全体が良く纏まっていていました。 郷愁をさそうオーボエの長いソロも見事でしたよ。
第3楽章は勢いのある音楽が飛び出しましたが、ルロイ・アンダーソンのような感じもする耳なじみの良い音楽。 柔らかな大太鼓のリズムに乗って走ったあと、ブラスが入って景気付けたりと、そして最後は河崎さんが左拳を突き上げて力強く幕。 面白かったなぁ。

冒頭に演奏されたモーツァルトの交響曲第32番は、音量大きめであって、威勢の良い音楽でした。 弦楽器はノンビブラート、金管楽器も打楽器っぽくパーンパーンを打つような響きだったでしょうか。 快活ではあるけれども、チャーミングじゃないって感じかな。 オーケストラは対向配置で 8-8-5-6-4 の編成。 ホールがいつもと違うせいもあったでしょうか。 フィナーレまでちょっと一本調子で走ったような感じを覚えました。

「エキサイティングで、かつ美しい古典音楽の演奏」を目指されているとのこと。 今回はちょっと前者の趣が強かったのではないかな。 古典ではなかったけど、芥川也寸志の交響三章が素晴しい演奏が聴けたのが大きな収穫となりました。 お疲れさまそして有難うございました。


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「スペイン、ポリフォニー音楽の黄金時代を歌おう」発表会

日時:2014年3月22日(土) 16:00開演(15:30開場)
場所:神戸松蔭女子学院大学・チャペル

曲目:モラレス/「すべて主のおそれ」(6声)
   ゲレーロ/「もしあなたが」(器楽・3声)
   ゲレーロ/「あなたがたのうち、誰が私に罪が」(4声)
   ルジェール/第1旋法による5声のシンフォニア(器楽曲)
   モラレス/サンクトゥス・ベレディクトゥス(器楽)
   モラレス/「おお、大いなる神秘よ」(女声)
   エンシーナ/「おお、三賢王が訪ねてきた」(器楽曲・3声)
   ビクトリア/ミサ「あなたの足はなんと美しい」(4声)

出演:神戸松蔭女子学院大学公開講座・公募の器楽と声楽アンサンブル

指揮:笠原雅仁
指導・コルネット:上野訓子

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神戸松蔭女子学院大学公開講座、バッロック音楽のスペシャリスト笠原雅仁さん、上野訓子さんの講師にて5回のレッスンを経ての公開発表会。 珍しいスペインのポリフォニー音楽がテーマで、日ごろよりバロック以前の宗教曲をよく聴いている当方にとっては、実際にそれらが耳にできる稀有の機会となり、とても興味深く良い経験となった1時間でした。

合唱は女性11名、男性9名ですが、うち1名はカウンターテナーだったでしょうか。 器楽はツィンク(コルネット)3名(うち1名はリュート持ち替え)、サックバット1名、トラヴェルソ1名、リュート2名、ヴィオラ・ダ・ガンバ1名にポジティーフオルガン1名の9名による合奏、16時になって天井のステンドグラスに陽が斜めに差し込む時間より合唱団が入場して演奏会は始まりました。

モラレスの6声による器楽伴奏つきの「すべて主のおそれ」、オルガンによる前奏が控えめにが始まり、こちらの期待も高まりましたが、器楽伴奏による合唱に移ると・・・響きが溶け合わず、女声が聞こえてこなくて焦りました。 前から4列目という場所の選択を誤ったのか、とも思いましたけれど徐々に女声も聞こえてくるようになって、終わりの方では全体の響きも纏まってきたので、安堵。 。

指揮者の笠原さんによる解説、ここで解ったのですが、わずか5回の練習で本番に臨まれているとのこと、いきなりの6声、皆さんも緊張されていたのでしょうね。 大航海時代のスペインの立ち居地の話、ゲレーロのことなどの解説があって、2曲続けての演奏となりました。

まずは器楽のみによるゲレーロの「もしあなたが」、上野訓子さんが太鼓を担当。 この柔らかな太鼓のリズムに乗って、左右に配置されたツィンクとサックバットによる演奏。 途中よりリュートやトラベルソも加わって音量も上がりますが、終始太鼓のリズムが印象的な面白い馴染み易いいい曲いい演奏でした。

オルガンに導入で始まったゲレーロの「あなたがたのうち、誰が私に罪が」、まず女声そして男声もテノール、バスと順に加わって声の響きが溶け合って美しかったですね。 器楽奏者の方も歌える方は歌っておられるようでした。 人間の声っていいなぁ、って思えました。

笠原さんの解説が入って、モラレスの紹介。 ほとんど宗教曲しか作曲されなかった方とか。 事前の知識ではビクトリアも1曲の世俗曲も書かなかったというのは持っていましたが、モラレスもそうなのですね。

まずは、器楽のみによるルジェールの「第1旋法による5声のシンフォニア」、ともするとツィンクやサックバットの金管が前に出てくるのきらいがあるのですが、ここでは柔らかな合奏となって、尺八にようなトラベルソの響きも楽しみました。

続くモラレスの「サンクトゥス・ベレディクトゥス」も器楽による演奏ですが、ビオラ・ダ・ガンバをギターのように抱いてピチカート演奏するのですね。 始めて見ました。 ポン・ポンという柔らかなガンバの響き、それがちょっとリズムに乗り遅れ気味になるところなど、実演の妙ともいえていい感じに聞こえました。 なおここではリュートが3本となっていました。

モラレスの女声合唱による「おお、大いなる神秘よ」、リュートがそっと絡みながら進み、最初はちょっと硬い声質であるように感じましたけれど、徐々に清んだ響きとなって、そっと消え入るように終わりました。 なおオルガン脇の男性1名も歌われていてカウンターテナーの方なのだな、と発見できました。

笠原さんの解説、ビクトリアとパレストリーナのことなど。 ビクトリアについては少々知識もあったのでうんうんと納得しながら、そうビクトリアっていいんだよなぁ、と共感しておりました。

まずはエンシーナの「おお、三賢王が訪ねてきた」、指揮者の笠原さんが太鼓も担当されて、多彩な響きを楽しみました。 ツィンクの渋い響きで朗々と旋律が吹かれていて、サックバットとの掛け合いなど、ジャズのノリではないのですがジャムセッションのような感じも受けて楽しみました。

そしてメインのビクトリアのミサ曲「あなたの足はなんと美しい」、熱気のこもった合唱と器楽演奏が素晴しかった。 またグロリアとクレドの冒頭には笠原さんの素晴しくいい声で導入が歌われて合唱へ、これも素適でした。

オルガンのちょっと長めの前奏、このあと「キリエ」は女声の清んで柔らかな響きと男声の力強くも角のとれた柔らかな響きがかけあっていましたね。
「グロリア」は笠原さんの導入のあと女声そして男声と進み、女声とツィンク、男声とサックバット、通奏低音のオルガンの支えに乗って、合唱にも熱気があって素晴しい演奏となりました。
「クレド」もまた笠原さんの導入、ここはまずは男声より女声が加わっての合唱。 柔らかな女声・弾力ある男声、そこにサックバット、そのあとツィンクも重なって多彩な響きとなって音楽も高まります。 合唱では特に男声陣、楽譜をにらむように見て懸命にうたってらっしゃって、熱気がびんびんと伝わってきました。
「サンクトゥス」では弾けるように入った男声、それに続いて女声へと続きます。 トラベルソの響きも素適。 フーガでしょうか、歌い継がれてちょっとワクワクもしました。
「ベネディクトゥス」オルガンの伴奏に静かな男声合唱、カウンターテナーと思われる方も歌ってらっしゃいましたが、女声も加わると響きが華やかにになりましたね。
「アニュス・デイ」オルガンの響きとともに女声合唱が柔らかくAgnus deiと歌い始めるおごそかな開始。 ツィンク、サックバットが加わって音量は上がって合唱も熱くなりました。 そしてそのまま力強く締めた終結。

少々遅れての拍手がホールに満ちると、演奏者の方の満足そうな笑顔がこぼれた素敵な演奏会でした。 冒頭の6声では正直どうなるか、と思いましたけれど、終ってみればいろいろとあっても所詮生身の人間。 頑張って神の領域に近づこうとしていることの証にようにも思えました。 珍しい楽曲・楽器なども含めて貴重な体験をさせていただきました。 有難うございました。

posted by fronte360 at 09:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 14-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする