日時:2018年5月27日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:枚方市市民会館・大ホール
曲目:ベルディ/序曲「ナブッコ」
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
(アンコール)シベリウス/春の夕べ
ベートヴェン/交響曲第3番「英雄」(*)
(アンコール)J.S.バッハ/主よ、人の望みの喜びを」
独奏:馬渕清香(vn)
指揮:生島 靖、寺坂隆夫(*)
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今回の演奏会の白眉は、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。
この曲、けっこう体力勝負的な面もあって、力技でゴリゴリと弾き飛ばす演奏もあるなか、馬渕さんは刺激的な響きを抑え、しなやかに弾ききっていたのがとても印象的でした。 女性的というと語弊があるかもしれませんが、慈しむように弾き進める馬渕清香さん、艶やかでしっとりした響きで全曲が彩られていました。 2年前、京都フィロムジカとの演奏会において初稿版を弾いておられましたが、この時はカデンツァが2つもある第1楽章で当方があれあれっと迷子になってしまい、結局はとても珍しいものを聴かせてもらった、そんな感想でしかありませんでしたけれど、今回は生島さん率いる枚方フィルの粘り強い好サポートもあって、堪能するほどたっぷりとこの曲そのものの良さを味わせてもらいました。
第1楽章、艶やかでしっとりとした馬渕さんのソロ、じっくりと腰を据えて歌い込むように進めてゆきます。 オケもしっかりとサポート。 深い響きを湛えたカデンツァより終結部にかけて、パワフルな演奏を期待した人にはちょっと物足りないかな、とも感じましたが、決して線が細いわけではなく、一音一音をとても慈しんで弾いておられたように感じました。 深い演奏でしたね。 生島さん、そんな馬渕を引き立てるべく粘り強い伴奏をしていました。 終盤では中低弦がゴリゴリっと鳴る熱さも醸し出し、キレの良いティムパニがまたカッコ良かったですね。
第2楽章、より深い呼吸でじっくりと曲と対峙する馬渕さん。 スケール感よりも美観や奥行を意識されていたのかな。 この曲の美しさに魅了されました。
第3楽章、速いパッセージをしっとりと、かつ深みを感じさせる響きで弾き進めました。 これに対峙するオケは雄弁、馬渕さんとともに曲を次第に盛り上げてゆきます。 ソロとオケの会話もうまく決めつつ、ティムパニの硬い打音とトランペットの煌めく響きがハイライトとなって圧巻。 聴き応え十分な熱い演奏として全曲を閉じました。
15分間の休憩のあとのメイン・プログラムは、寺坂さんの指揮によるベートーヴェンの英雄交響曲。 オケの中を見ると、先ほどまで独奏をされていた馬渕さんが黒いドレスに着替えて1stヴァイオリンのトップサイドで参加されてました。 だから、ということではありませんが、10-10-10-8-5 の小さな弦楽編成の特質を生かして、軽快でまとまりの良い音楽となりました。
失礼ながら、冒頭より野太い和音を叩き付ける(古臭い)感じで来るのかなぁ、などと予想していたのは良い意味で完全に裏切られました。 やや早めのテンポ設定、キレ良く弾力ある響きでもって推進力を持って進めてゆく(現代的な)好みの演奏となってました。 良かったぁ。 寺坂さんらしくきちっとした曲造りながら、時おり膝を軽く屈伸させてオケの響きに粘りを注入、また要所では左手で拳を作って気合も注入。 若々しい音楽がとても魅力的な第1楽章をわくわくして聴かせてもらいました。 第2楽章は葬送行進曲、逆にここはちょっとテンポ遅めだったかな、しっとりと歌う木管と粘りつくような弦アンサンブルによるちょっと濃厚な味付け。 途中リズムが硬直したのでしょうか、冗長な感じにも思えたのが惜しかったかな(偉そうですみません)。 第3楽章はホルンが大健闘。 明るくしなやかなトリオでしたね。 終楽章はコントラバスの方を向いて振り出した寺坂さん、中低弦を軸にして曲を進めますが、見晴らしの良い演奏です。 冒頭の楽章と同じく要所で力を込めつつも、しっとりと良く歌う木管もまたチャーミング。 ある種室内楽的な演奏としていたのは最近の流行かな。 現代的なベートーヴェンを面白く聴かせていただきました。
なお演奏会冒頭はベルディの「ナブッコ」序曲、にぎにぎしく演奏会の幕開けを告げるかのような演奏でした。 こちらは生島さんの指揮、枚方フィルらしい実直で生真面目な感じが出ていた開始。 しかし演奏が進むにつれて、どこかしらほっこりとさせる温度感を孕んできました。 そして終盤の盛り上がりでは、演奏温度が上昇してホールの空気を十分に暖めた感じでした。
いつもながら枚方フィルの演奏会には笑顔があふれているというか、小難しく音楽を論じるのではなく、音楽を純粋に楽しもうとする方が多くいらっしゃるようです。 楽章間の拍手も客席より頻繁に沸きますけれど、それも「よかったよ」という率直な暖かな気持ちの表れと感じます。 そして、たぶん演奏される方もそうなのでしょうね、独奏されていた馬渕さんのアンコール曲も「一人では寂しいので」とおっしゃって弦楽合奏との曲となりましたし、また英雄交響曲ではトップサイドでも弾いてもおられました。 皆と演奏することが楽しいオーケストラなのでしょうね。 巧い演奏を聴く、珍しい演奏を聴く、そんな目的も勿論ありますが、音楽を楽しむ、基本は外したくないなぁ、などと考えながら帰路としました。 いつもありがとうございます。
2018年05月30日
この記事へのコメント
演奏会評有難うございます。私は、草津チェンバーの本番と重なって、聴きに行けなかったのですが、今回も交野フィルコンミスの方や、メンバーが重複して、枚方にも出演していたので、この演奏会評のアドレスを、送付させていただきました。これからも、詳細で、優しいまなざしの演奏会評を、お願いします。交野フィルでもお待ちしています。チケットに関しては、ご連絡いただければ、窓口にご用意させていただきます。私は、10日蔵野先生の振る、けいはんな定演を聴きに行く予定です。12月には、京教大オケで、藏野先生の振る、同じチャイ5を演奏する予定です。
Posted by raku at 2018年06月06日 20:17
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