2015年08月04日

近畿フィルハーモニー管弦楽団 第30回記念定期演奏会

日時:2015年8月2日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール

曲目:芥川也寸志/交響管弦楽のための音楽
   ビゼー/「アルルの女」第2組曲
   ショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ短調作品47「革命」
(アンコール)ドリーブ/「コッペリア」より「チャルダッシュ」

指揮:岡田良機(常任指揮・音楽監督)

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30周年の記念演奏会、シンフォニーホールがほぼ満杯になったなか、エキストラさんを入れていつもより大きな編成となっていたようですが、声高になることなどなく、自らの音楽を演じきった爽やかな演奏会でした。 更に10年、20年と活動が続くことを望みます。

多数のお客さんが詰めかけたこともあってか5分ほど遅れての開演となりました。 オケの編成は 14-14-12-9-7 の通常配置。 いつもの演奏会場であるいずみホールのステージには乗り切らないサイズなので、ホールにあわせてエキストラさんを入れた編成でしょうが、常任指揮者・芸術監督である岡田さんの指示・配慮がよく行き届いた演奏でした。

特に冒頭の芥川也寸志の交響管弦楽のための音楽が良かった。 軽快ながら弾力のあるリズムに乗り、抑制のよく効いた金管と暖かな響きの弦楽アンサンブル。 緻密に仕組まれた音楽としていた第1楽章。 第2楽章ではパワフルな音楽としながらも、余裕を持って進めて見事。 弦の分奏も良く、金管は突出せず、打楽器も落ち着いた打音なのも好ましく、オケが一丸となってリズミカルに進めて、この曲の良さ・面白さがよく伝わってきました。 フィナーレも、ぐっと引きつけてからの爆発。 カッコ良い幕切れでした。

いずれも演奏もそうでしたが、各パートの纏まりが良いのに、声高に主張するパートはなく、全奏になって音量が上っても刺激的な音はありません。 響きの角を綺麗に落として肌触りの良い響きでした。 特に「アルルの女」第2組曲「メヌエット」でのフルート・ソロ、会場より注視されるなか堂々としたソロでしたけれど、木肌のぬくもりを感じる落ち着いた音色は、このオケ全体に通じるものであったと思いました。

第1曲「パストラール」、ゆったりとしたテンポで柔らかな木管の響きが印象的、コントラバスのピチカートもまろやかでした。
第2曲「間奏曲」、たっぷりとした響きながら底力が感じられる肌触りの良い響きが特徴的。 アルトサックスの音色も柔らかくオケにとてもマッチしていました。
第3曲「メヌエット」、フルートとハープによる落着いた美しい音楽が白眉。 でも何よりオケ全体の音色が統一されていて、朴訥でしみじみと聴かせた素晴らしい演奏でした。
第4曲「ファランドール」、まとまりの良さが光りました。 どのパートも真摯ですが、どこかのパートや旋律にスポットライトが当たるようなことはなく、全ての楽器が等価に鳴っていた、そんな感じでしょうか。

全ての楽器が等価に鳴っている、ちょっと古いたとえで恐縮ですがオーマンディがフィラデルフィア管弦楽団を振ったフィラデルフィア・サウンドにも通じる響き方、そんな気がしました。 あくまでも、気がした、ということですけれど、正攻法な音楽造りには違いなく、好感を持って聴いていました。

休憩を挟んでメイン・プロのショスタコーヴィッチの第5番。 この演奏もまたこれまで同様。 各パートがしっかりと纏まっていて、受渡しも良く、きちっと盛り上がってゆくのですけれど、エッジの効いた響きや、見栄を切るような節回しやフレーズはありません。 また少々遅いテンポとして演奏していた部分もあったようで(オケの力量のためでしょうか)、「革命」と題されるように、この曲に旧来からのエキセントリックな曲想を求めておられた向きには、かなり物足りなかったかもしれませんね。

ヴォルコフの「証言」にあるように、友人・親類たちが次々に逮捕・処刑されてゆく悲愴的な立場にたってこの演奏を聴くならば、なかなかに興味深い演奏であったと感じました。

第1楽章、冒頭のコントラバス、張りのある響きで切れ込むようでありながら、鋭いエッジでエキセントリックさは感じられませんでした。 緻密で重層的な響きで常に不安気な様相を呈した音楽としていたのは指揮者の思惑通りでしょう。 頂点もなだらかに迎えてオケ全体のヴォリュームが上ってゆくような感じでした。
第2楽章、力強くも深みのある響きで開始。 ホルンも勇壮ながら全体の響きによくマッチしていました。 岡田さん、オケの力量を考えているのか、面白味は少ないけれどまとまりのよい音楽としていたようですね。
第3楽章、想いのこもった弦楽アンサンブルの美しさが良かったですね。 しみじみとした木管のソロ、丁寧で丹精込めた響きとして進行。 ピークも切り込んでゆくのではなく全体の音量を上げるようでなだらかでしたね。
終楽章。力強いティムパニの響きはやや明るめの打音。テンポもやや遅かったかな、快速ではありませんでした。それでもこれまでにはあまり感じなかった粗野な雰囲気も出していたようですが、興に乗るようなことはなく、ちょっと淡々と進めていたよう。
スネアが入りましたが、やや音量は抑えめで、ゆったりとしたクラリネット、なだらかに主題を奏してピークを迎えますが、粘着質で薄暗い音楽とし、しかも淡々と演奏されているようで、勝利の雰囲気ではありませんね。 そして最後のティムパニと大太鼓の打音もまた、大きく響かせていましたが粘り気を含んだ響きに聴こえてきたのは気のせいだったかしら。

とにかく、記念演奏会とした気張って声高になったりすることなく、常任指揮・音楽監督のもと、音色を合わせてオーケストラが一丸となり、自分たちの音楽をひたすらに演奏していたと感じました。 そんな爽やかさを感じた演奏会でした。
皆さんお疲れさまでした。 更に10年、20年と活動が続くことを強く望みます。



posted by fronte360 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 15-演奏会にて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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