日曜日(10/27)、「そして父になる」を観てきました。
カンヌ映画祭審査員賞受賞、との触れ込みで、確かによく撮られていて、
裸も暴力も出てこないのに、まったく飽きさせることはなかった映画でしたが、
映像がなんとも地味(滋味)な映画でしたね。
日本ってこんな殺風景なんだと逆に思い知らされたような気もしました。
あと気になったのは、劇中に使われていた、下手クソなピアノの音楽・・・
ゴールドベルク変奏曲のアリアが象徴的に流れていたことですね。
主人公でもある取り違えられた子供の慶多くんがピアノを習わされているけど、
ちっとも上手くなく、また向上心もなく、父親の福山雅治をイラつかせる・・・
そんな伏線もあったでしょう、慶多くんはゴールドベルクを弾いてませんが。
この演奏、グレン・グールドが1982年に録音したゴールドベルク変奏曲、
このアリアの部分でした。
PA285338 posted by (C)fronte360
下手なんで、この映画のための録音か、と不覚にも思っていたのですけれど、
エンドロールで気付いて吃驚しました。
ゴールドベルク変奏曲は好きで、グレン・グールドの演奏も好きなんですが、
いつも1955年録音のデビュー盤、スピード感溢れるのをよく聴いていて、
こちらを先に聴いた、ということもありますが、ほんと不覚でした。
ちょっと反省したしだい。
そんなこともあるかもしれませんが、映画を観終わったあとも、
ついついこのアリアのフレーズで口に出てきております。
2013年10月28日
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1982年の盤のアリアは、初めのは生命の誕生を、最後のは静かな死を感じるのは私だけでしょうか。
グールドにはこのほかに、1959年のザルツブルグのライブがありますね。さらに小生は1954年のカナダのラジオのための録音も持っていて、時々取り出して聞いています。
ちなみに小生、こんなかわいそうな感じの映画は見るのも嫌で近寄りません。直截的にハラハラドキドキするのが、もうたまりませんから。
そんなにドキドキするような映画ではなったですよ、ある意味、淡々と話が流れてゆきました。
何事も無かった日常より、波風が立ち始めて右往左往するけれども、また日常に戻ってゆく・・・
小津安二郎みたく日本映画の王道って感じでしょうが、それにしては映像がリアルな日常すぎたように感じましたね。 それを狙っていたのですしょうけど、裏返すとほとんどお金をかけていない、感じでした。
ゴールドベルク変奏曲、グールドの演奏は1955年盤
が好きですが、ちょっと特異な演奏なんで日常聴きにはあまり登場せず、同じCBSソニーより、1000円盤として出ていたチャールズ・ローゼンによるピアノ演奏がお気に入りだったりします。
今回、グールドの1982年盤も聴き直してみました。時おり入るグールドの歌声がちょっとコソばゆく感じられましたが、おっしゃるとおり最後のアリア、消え入るようで、思っていた印象とちょっと違っていて、しんみりとしてしまいました。
結局のところあまりよく聴けていなかったし、記憶って曖昧なんだな、ということですね。