
圧倒的だったのはフランクの交響曲ニ短調。 張りのあるオケの響き、曖昧さのない演奏でした。
キリリッと締めあげられたような感じかな。 もちろん第2楽章など、奈良フィルらしい美感をよく感じさせた演奏でしたけど、ここでも秘めた熱気を感じましたね。
そして終楽章、しかもフィナーレに近くなるにしたがって横島さんの動きがシャープになります。 おまけに左手をぐるっと廻して力を込め、ヴァイオリンから響きを絞り出し、奈良フィルから凄まじい迫力を引きずり出しました。
力感たっぷりな演奏が凄かったですね。 ブラボーも多数かかったのも頷けます。 とにかく熱演でした。
フォーレのレクィエムもまた熱い情熱を秘めたストイックな演奏でした。
この曲がこんなにも熱く響くとは、さすが横島さん、とも言えますね。
なお設立5年、奈良フィル合唱団が初めて奈良フィル定期への出演を果たしました。 最初はやや緊張気味だったようで、各声部の響きが交じり合わないなどの面も見られましたけど、Sanctusでは美しさも見え、Agnus Deiになると横島さんの熱気の影響もあり、柔らかくかつ熱い声がオケの響きともよく調和して曲を盛り上げていました。
この演奏で何より素晴らしかったのはPie Jesuでの大原末子さんの独唱でしょう。 清澄でしかも暖かみを感じさせた祈りの歌にうっとりとさせられました。 素晴らしい歌唱でしたね。 なお田中 純さんの独唱は、しっとりとした響きが特徴的。 少々ロマンティックに歌っていたようでした。
とにかくこの曲、静かに熱く燃えていました。
冒頭のラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、美感のあふれた演奏でした。
もう少し浮揚感など欲しいと感じるほどの直裁的な表現で、曲を前に前にと進めていたようです。 とにかく美しく、判りやすく(聴きやすく)、と言った感じだったでしょうか。 個人的にはこのようなラヴェルは好きですけどね。 解説に書いてあったように、ラヴェル本人なら、シャブリエみたいで好きじゃない、と言うのかな。
ということで、いずれの曲も常に前向き。 色々な面でやる気を感じさせた演奏ばかりでした。
これに弱音での洗練された表現があれば・・・と思わなくもありませんが、横島さん、アグレッシヴに攻めるのが信条のようですし、これはこれで良かったと思います。
大いに演奏を楽しみました。