日時:2020年11月14日(土) 18:00開演(17:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール
曲目:ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調「英雄」
ショスタコーヴィチ/交響曲第9番変ホ長調
チャイコフスキー/序曲「1812年」
指揮:牧村邦彦
コロナ禍となって初めての演奏会。 月並みながら、やっぱ生の音はええなぁ。 さっそうとした開始のエロイカ・シンフォニーは、曲が進むにつれて恰幅の良さを増し、円熟味を増した牧村さんと市民管による音のドラマを堪能しました。
コロナ対策を徹底した演奏会。 指定席の引き換え後、チケットに名前・住所・電話番号を記載、入場前の体温チェックと手の消毒のあと、チケットを自分でもぎって名前などを書いた長片を投函します。 ホール定員を半分とし、1席づつ開けた座席指定。 しかもステージ前の3列は空席として距離を保ってました。 アナウンスでは空調により10分で空気が入れ替わる、オゾンによる抗ウィルスなどとうたってました。 そんなホールに一番乗り、座席は2階バルコニー LD-1。 第1ヴァイオリンの真上、指揮者の牧村さんの表情がよく見える席ですね。
プログラムは簡潔に書かれていて、曲紹介など最小限。 演奏曲目は上記のように書かれているのみ(どこで休憩に入るかの記載もなし)。 この順番でするの? 普通逆やけど・・・と思ってステージを見るも、ステージ後方にはティムパニ1台のみ。 トップは、やっぱりエロイカ・シンフォニーやろな、と想像。 なお弦楽器奏者の譜面台は1人1台。 管楽器の方の座席もやや広めの間隔でしょうね。 そして三々五々団員の方がステージに集まってきて定刻となりました。 弦楽器の編成は、通常配置で 7-9-7-9-7。 第1ヴァイオリンが少ないですね。 弦楽奏者と打楽器奏者の方はマスク着用、牧村さんはマウスガードを着用しての登場です。
エロイカ・シンフォニー、軽快な打音で颯爽とした開始。 引き締まった楽器の生音がホールに響きます。 やっぱ生はええなぁ。 コントバスは正面がこちらに向いていますので、いい感じで低音が絡んでいて、牧村さんが颯爽と曲を進めてゆきます。 主題を繰り返し、展開部に入る頃より音楽が次第に熱くなってきたようです。 牧村さんらしくカッコ良い音楽造りなんですが、腕の動きは少なく、要所を締めているのですが、徐々に恰幅の良さ出て、流れる音楽にドラマが感じられるようになりました。 オペラ指揮者としての円熟の味でしょうね。 第2楽章の葬送行進曲も同様に、軽めにスタートして徐々に厚く熱くしていたようです。 濃厚で充実の楽章でした。 第3楽章スケルツォは最初から熱い音楽、木管奏者の好演もありますが、ホルンのトリオも充実。 目の前、左から右にホルンの音が飛んでゆくのが判るようでした。 そしてインターヴァルを少な目にとって熱い終楽章に突入。 各パートがよく揃って充実した変奏曲、オーボエはここでも好演。 終結部でのティムパニの打ち込みが気持ち良かったな。 そして牧村さん、アッチェランドなどかけることなく、常に冷静にオケをコントールしながらも十分に熱く充実した音楽を終えました。 曲の流れにドラマ性を感じさせた聴き応えのある素晴らしい演奏でした。
20分間の休憩のあと、ステージ上には打楽器が増え、コントラバスも1本追加されたようです。 弦楽器は 8-8-7-9-8 の編成、第1ヴァイオリンも増強されました。
ショスタコの第九、こちらは恰幅の良い堂々たる音楽でしたね。 総力戦の様相。 増強されたコントラバスの影響でしょうか。 ビンビンと響いてきました。 しかし個人的には、この曲はもうちょっとアイロニカルで洒脱な雰囲気での演奏が好みなので、ちょっと違和感をもった次第。 増強されましたが、第1ヴァイオリンの響きが薄く感じて、コンミスによるソロもちょっと遠い感じ、座席の影響からかもしれませんね(第1ヴァイリンの後方でしたし)。 しかし、演奏は低音金管楽器軍の健闘、ファゴットもシブイいい音でしたね。 音楽としては、とてもよく纏まっていたいい演奏だと思いました。
最後(トリ)は、チャイコの1812年。 冒頭、9本のチェロと4本のヴィオラによるロシア正教会の讃美歌が豊饒な響きで素敵でした。 うっとり。 掴みはバッチリで、この後も充実した演奏が展開されました。 そしてタイトでスピード感のある戦闘シーン、トランペットのソロも艶やかで素晴らしかった。 小康状態となり、ここをたっぷりと唄わせようと牧村さんも力が入ります。 2回目の小康状態だったかな、第1ヴァイオリンに向かって、ラ〜ラ〜♪ と思わず大声で唄って(唸って)ました。 入魂の演奏。 オケもまたそんな牧村さんによく反応して素晴らしい。 最後の戦闘シーン、大太鼓による大砲も見事でタイトで思い切りよく引き締まった打音。 ド迫力ありました。 カリヨンの鐘が打ち鳴らされ(第1ヴァイオリンの後方だったので自席からは見えませんがホールに響き渡って)祝典感満載(コロナ禍に打ち勝ったかのよう)な大団円。 聴き応え充分、満足した演奏でした。
コロナ禍のためか(練習時間がとれなく本番曲に集中?、演奏時間を短く?)アンコールはなし。 練習も大変だったことでしょう。 久々に聴いた生演奏ですが、そのことだけでなくよく練習されてよく纏まった演奏はやっぱり良いものですね。 特にエロイカ・シンフォニー、ドラマ性を感じた演奏に接することが出来たのは大きな収穫でした。 十分に満足した演奏会でした。 幾多の困難のなか、演奏者および演奏会に関わられたすべての関係者の皆さんありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。