2020年06月21日

武満 徹/系図 ― 若い人たちのための音楽詩 ―

新型コロナウィルス感染拡大防止のために外出を控えて、お家で良い音楽を♪

時おり、現代音楽を聴きたくなりませんか? そんなに現代音楽の録音を持っているわけではありませんが、図書館などで時たま借り出してくることがあります。 クラシック音楽の名曲を聴いて心豊かにすることも大切ですが、現代に生きる人間として、現在この時間に生まれた音楽を耳にするのもまた必要なことではないか、そんな気持ちもあったります。 そして何より、新しい音楽を耳にすることによって日頃使っていない脳ミソを刺激すること、それが面白く感じることもあります。 ゲンダイ音楽、などと書かれるようなムズカシイ音楽もありますけれど、意外と美しい音楽もあったりします。

日本を代表する作曲家である武満徹が、ニューヨーク・フィルハーモニックの創立150周年を記念として1992年に委嘱され、1995年にレナード・スラットキン指揮ニューヨーク・フィルで初演された「系図 ― 若い人たちのための音楽詩 ―(Family Tree - Musical Verses for Young People -)」は、とても美しい音楽です。 また何より谷川俊太郎の詩集「はだか」の朗読がいいですね。 武満さんは12歳から15歳の少女による朗読が望ましいと言われています。 大人になる前の子供の透き通るような声質を残し、そしてまだ大人には成熟しきっていない危うさというかストレートさ不安定さ、そんな語りで、決して綺麗事ではない家族の様子が語られます。

最後の「とおく」と題された詩で結ばれますが、そこの一節
 そのときひとりでいいからすきなひとがいるといいな
 そのひとはもうしんでてもいいから
 どうしてもわすれられないおもいでがあるといいな

という言葉には、やはり少女の声でないと伝わらない魅力(魔力)があると思います。
そして最後のフレーズ
 でもわたしはきっとうみよりももっととおくへいける
で結ばれたあとに流れるアコーディオンの旋律もまた涙腺を刺激してなりません。

美しい響きに満たされた音楽、そして現実と転生輪廻でしょうか、遥かなる世界へいざない浄化してゆくのような言葉が胸に響きます。 初演は英語ですが、やはり日本語で聴くのが自然でいいですね(日本人ですから)。

このCDは、アフィニス文化財団が2005年6月に非売品として無料で配布していた「Affinis Sound Report」の No.30 。 これに 2004年9月30日、第5回 現代日本オーケストラ名曲の夕べ(日本オーケストラ連盟)の実況録音として「系図」が収録されています。 そしてここで朗読されている太田麻華さんのまだ少女の声、そして語りも巧くて心に響きます。

NAXOS MUSIC LIBRALY では、山田和樹指揮、日本フィルハーモニー交響楽団(朗読:上白石萌歌)による2016年1月30日渋谷東急Bunkamura オーチャードホールでのライブ録音が聴けます。 上白石萌歌の朗読は、太田麻華さんよりもちょっと落ち着いた感じ柔らかな感じですね。
小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラ(朗読:小澤征良)も NAXOS MUSIC LIBRALY にありますが、こちらは英語版ですね。

なお YouTube では、1997年6月18日 NHKホールでのシャルル・デュトワ指揮、NHK交響楽団(朗読:遠野凪子)がありますね。 遠野凪子さん、この曲の日本初演者で、武満徹のご指名だったそうです。 画像がちょっと悪いですけど。 さすがデュトワらしい色彩感のある演奏、遠野さんの朗読も不安気な気持ちが入ってます。
あと YouTube では、2016年4月22・23日、NHKホールでのレナード・スラットキン指揮、NHK交響楽団(朗読:山口まゆ)があります。 スラットキンは上述のとおり世界初演者です。 落ち着いた演奏ですね。 山口さんの朗読もちょっと大人しい良い子の感じ。

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武満 徹/系図 ― 若い人たちのための音楽詩 ―
   沼尻竜典指揮 オール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラ
   朗読:太田麻華 、アコーディオン:大田智美
    録音:2004年9月30日、愛知県芸術劇場コンサートホール


posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 20-LP/CD音楽(Classical) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする