2020年06月07日

トムシック&ナヌート、ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番

新型コロナの緊急事態宣言、全国で解除されましたが、お家で良い音楽を♪

CD棚をひっくり返していたら、懐かしいPILZのCDもわんさかと出てきました。 「PILZ俗悪2枚組」の「掃きだめに鶴」クリスティアーネ・ジャコッテさんをピックアップしたので、ナヌートさんを外すわけにはいかないと、色々と聴き進めました。

ベートーヴェンの交響曲や、ショスタコーヴィッチの交響曲第7番、ブラームスのピアノ協奏曲などなど、素晴らしい演奏ですけれど、既にブログなどで採り上げているので、ネタとしてはお手軽でいいけどなぁ、どうしたものか・・・と。 そう思いつつも聴き進めているうちに琴線に触れたのが、これ。 ナヌートさんとトムシックさんが組んだ、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番。 風格を持ったしっかりとした伴奏を背景に、軽快かつ深みも備えて演じっきったトムシックさんのピアノが爽快です。

トムシック&ナヌートのベートーヴェンでは、第3番と第5番の協奏曲も持っていて、こちらも聴きなおしました。 いずれも奇をてらったところのない、作品そのものに語らせるような演奏で、いずれもしっかりとしたものですが、この第1番で聴かせる衒いのない喜遊感、覇気も感じさせて、若いベートーヴェン(24才ころの作曲)によく似合っているのではないかな、と思ったしだいです。

第1楽章、長い序奏を堂々たる風格を備えて進めるナヌートさん。 明朗な打鍵でモーツァルトのように割って入ってくるトムシックさんですが、しっかりとした構成感も備えた対比がいいですね。 素晴らしいのは終楽章、明快な強いタッチで弾むように入ってきて速いテンポで進めます。 高音(右手)と低音(左手)の対比、受け渡し、掛け合いなど、リズムに載せて目まぐるしく、ぐいぐいと惹き込まれてゆきます。 オケもまたそれに併せて明朗な木管をちりばめてドライブ感を持ってサポート。 途中、トムシックさんの左手でガッツポーヅをとるかのようにフレーズの最後に力を込める場面も。 高揚感を伴って駆け抜けて爽快です。 この演奏は NAXOS MUSIC LIBRALY で聴くことができます。

比較試聴として内田光子さん(伴奏クルト・ザンデルリング)も聴きましたが、まずトムシックさんの録音の方がピアノがオンマイクで収録されているので打鍵が明快です。 収録時間も内田光子(18:11,10:45,9:26)に比して、トムシック(17:42,11:57,8:51)と、2楽章を遅めにして終楽章を快速で飛ばしているのが解りますね。 演奏もまた内田さんのはじっくりと弾き込む感じ、終楽章の高音と低音の受け渡しも強調することなく歌い繋ぐ感じです。 オケもまた巧くて良い演奏だと思いますが、個人的にはトムシックさんのドライブ感のある演奏により惹かれるものを感じます。

ところでこれまでダブラフカ・トムシックと読んでいましたが、Wikipedia では「ドゥブラフカ・トムシッチ・スレボトニャク」と表記されています。 スレボトニャクは、ご主人の姓ですね。

経歴は、1940年スロベニア生れ。 クラウディオ・アラウに見い出されて12才で米国に渡ってジュリアードで学び、キャサリン・ベーコンに師事したが短期間ウニンスキーにも指導を受けた。 卒業後はルービンシュタインが「完璧で奇跡的ピアニスト」と絶賛、1959年までルービンシュタインの薫陶を受けました。 1967年からリュブリャーナ音楽院(現スロベニア音楽院)で教鞭をとり、1975年に教授に昇格。 現在はリュブリャーナ市の名誉市民だそうです。 なお、2015年「幻のピアニスト」として初来日しておりました。

ちなみにアントン・ナヌートさん、2009年に紀尾井シンフォニエッタの指揮者として初来日。 繊細かつ骨太な「運命」演奏で実在を示し、2013年、2014年と3度の来日を果たしましたが、惜しくも2017年に永眠されました。

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op. 15
ベートーヴェン/序曲「シュテファン王」
   ダブラフカ・トムシック(p)
    アントン・ナヌート指揮 リュブリャナ・ラジオ・シンフォニー・オーケストラ

posted by fronte360 at 01:00| Comment(0) | 20-LP/CD音楽(Classical) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする