ですが… リアルタイムではレコード盤を買う小遣いの余裕などなく、ラジオやテレビで接することが主でしたけれど、高校を出たあたりより、中古レコードでの収集を始め、それから集めたものが主にになっています。 そして、この「20才」のアルバムも日本橋のワルツ堂で買求めたものだと記憶しています。
南沙織さまは、1971年に「17才」でデビュー、1978年の「グッバイガール」で引退。 わずか8年の現役生活でした。 しかし単なるアイドルとして8年で終わったのではなく、8年間の成長を垣間見せつつ、人生の次のステップに卒業されていった、そんな彼女の奇蹟に惹かれるものを今でも持っています。
彼女のアルバムを追いかけてゆくと、デビュー盤の「17才」から、1974年の9作目「夏の感情」までがアイドル路線でしょう。 1973年の「傷つく時代」や1974年の「夏の感情」ではバックに細野晴臣率いるティン・パン・アレーの起用などサウンド面でのテコ入れもありました。
この「20才」のアルバム、これまでの作詞:有馬三恵子、作曲:筒美京平から離れ、作詞に松本隆も起用した転換点のアルバム。 この後、単身アメリカのロス・アンジェルスに渡って録音した「Cynthia Street」(当時ロス録音などニューミュージック系もやってません)からアイドルとは距離を置いたシンガーになっていったと思っています。
さてこのアルバムに戻ると、冒頭の「田園交響楽」からこれまでのアルバムと雰囲気が違います。 この曲は名曲ですね。 つづく「フラワー・ショップ」もいい歌ですが、シングルカットされた有馬・筒美コンビの「夜霧の街」。 これは有名でいい曲ですけれど、忘れていけないのはシングルB面となった同コンビによる「青春が終わる日」がまた素晴らしい。 今思うと、これらはアイドル路線からの決別の歌かもしれません。
アルバムB面には、このまでのアルバム同様にアイドルの持ち歌補充用用のカバー曲「誰も知らない」「さらば恋人」「あなたならどうする」「夏しぐれ」が入っていますが、しかしこれとてシンガーとして見事に歌いこなして、これまでのアイドルの片手間仕事の域ではありません。
またこのアルバムが発売された 1974年12月10日のあとの12月21日、シングル盤として発売され後のアルバムには収録されなかった名曲「女性」「人のあいだ」も発売されています。 まさしく転換点だったように思わざるを得ません。

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side A
田園交響楽
作詞:松本隆、作曲・編曲:馬飼野康二
休日の午後
作詞:さいとう大三、作曲・編曲:萩田光雄
卒業
作詞:松本隆、作曲・編曲:馬飼野康二
青春が終る日
作詞:有馬三恵子、作曲・編曲:筒美京平
フラワー・ショップ
作詞:さいとう大三、作曲・編曲:萩田光雄
夜霧の街
作詞:有馬三恵子、作曲・編曲:筒美京平
side B
粉雪の慕情
作詞:ちあき哲也、作曲・編曲:水谷公生
冬の星座
作詞:ちあき哲也、作曲・編曲:水谷公生
誰も知らない
作詞:岩谷時子、作曲:筒美京平、編曲:あかのたちお
さらば恋人
作詞:北山修、作曲:筒美京平、編曲:あかのたちお
あなたならどうする
作詞:なかにし礼、作曲:筒美京平、編曲:あかのたちお
夏しぐれ
作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:あかのたちお
なお、このアルバムの以下の曲の前に南沙織さまのナレーションがついています。 これがまたジーンとくるんです。
■ 田園交響楽
20才(はたち)になったと人は言うけれど、私は私、
今まで生きて来たように、生きていくしかないし・・・・・
でも、ちょっぴり変わったとしたら、ひとりぼっちが辛いことね。
■ 卒業
振り向いて生きちゃだめね、いくつか悔いは残るけど、
これが私のせいいっぱいの青春なの。
■ 夜霧の街
20才(はたち)の駅に立ち、果てしない線路を見つめています。
どんな旅が始まるのでしょう。
もうここからは、ぬきさしならないほんとうの人生という感じです。