日時:2019年12月15日(日) 14:00開演(13:15開場)
場所:天理市民会館・やまのべホール
曲目:第1部
フォーレ/ラシーヌ讃歌
モリコーネ/Nella Fantasia
ストゥループ/Homeland
第2部
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」
(アンコール)蛍の光
独唱:内藤里美(S)、堀内優子(Ms)、柏原保典(T)、松岡剛宏(Br)
合唱:天理第九合唱団
管弦楽:天理シティオーケストラ
指揮:河ア 聡(第1部)、安野英之(第2部)
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天理の年末の風物詩といっても過言ではない「天理の第九」演奏会も、天理市の財政見直しにともない、今年度より天理市やライオンズクラブからの補助金がなくなって自主運営となったとのこと。 それでも、天理市長が挨拶をし合唱団にも加わり、ライオンズクラブの皆さんも受付や誘導などの対応をされており、みんなで盛り上げていこう、そんな姿勢は全く変わらない演奏会でした。 そして肝心の演奏も、自主運営となって良い演奏で盛り上げいこう、そんな団員さんの想いでしょうか、例年よりもさらにストイックな感じがし、気持ちが前向きに出ていたように感じました。 もちろん天理小学校や二階堂高校の学生も加わった合唱団も、世代を超えて一体となった熱い歌声がホールに響き渡っていました。 いい演奏会でした。
やまのべホールに到着。 いつもならばホール入口の横に受付があり、そこで座席指定を受け、しかも右側か左側か、座席はホールの前か後か、細かく振り分けて座席指定を受けていましたが、今回は前売り指定席以外は自由席でした。 他の演奏会と同じく受付でパンフレットを頂いて即入場となりました。 アンコール曲「蛍の光」で手に持って振っていたルミカライトの配布はなし。 アレっと思いましたが、パンフレットを読んで納得です。 今年から天理市やライオンズクラブからの補助金がなくなり、演奏会が自主運営となったとのことでした。 そういえば、昨年そのようなことが書かれていたのも思い出しました。
前半のプログラムは、天理第九合唱団を指導されている河崎さんの指揮によりフォーレの「ラシーヌ讃歌」、エンリオ・モリコーネの「Nella Fantasia」、ストゥループの「Homeland」が続けて演奏されました。 「ラシーヌ賛歌」以外は初めて聴く曲と思いますが、いずれの懐かしい感じのする曲でしたね。 指揮棒を持たない河崎さん、やわらかく丁寧に曲を進めて、落ち着いた男声と暖かな女声が交錯し響きあって素敵な時間となりました。
「ラシーヌ讃歌」では低弦の響きが基調となり、この上にヴィオラがうまく乗って合唱を支え包み込むようでもありました。
「Nella Fantasia」でも豊かに響く弦アンサンブルが好調でしたが、オブリガート風に吹いていたオーボエの凛とした響きと男声がとっても素敵でした。
「Homeland」は金管ファンファーレが落ち着いていながらも明るく晴れやか、合唱もまたうまく力が抜けていて郷愁を誘います。 アカペラのあと、金管も含めた全奏となっても上品さを損なわない演奏で全体を締めました。
20分間の休憩のあとメインの第九。 コンマス席にはミストレスの相原さんが今年も座り、セカンド・トップに栄島さん、ビオラ・トップには上田さんという布陣は昨年と同じ。 この布陣、落ち着いて進められる相原さんに対し、栄嶋さんと上田さんのコンビがアグレッシブに弾かれて、弦楽器編成は小型の 8-7-6-6-5 の対抗配置ですが、中音弦の厚みがぐっと増して聴きごたえ十分。 けっこう気に入ってます。 合唱団には制服を着た天理小学校と二階堂高校の学生も加わり、男声を凹型に囲むように女声が布陣していました。
第1楽章、集中力の高い開始、キリッとした表情で始まりました。 安野さんらしく手堅く曲を進めますが、フレーズをやや短かめに切ってタイトな音楽造りだったようですね。 栄嶋さんと上田さんのコンビでザクザクと切り込んでいったのが印象に残りました。
第2楽章もまたストイックでしたね。 ティムパニの強烈な打音、迫力ありました。 弦楽器、冷たい響きだと「時計仕掛けのオレンジ」になるのでしょうが、底光りのする熱い音楽でした。
第3楽章の前に独唱者とパーカッションが入場。 全員揃いました。 ここは豊かな響きの弦楽器としっとりとした管楽器が寄り添う有機的なアンサンブル。 とくに第1ヴァイオリンが雄弁でしたね。 存分に楽しみました。
終楽章、タイトな開始のあと、深くえぐるような低弦の響き。 安野さん、重厚な響きをスパスパっと切り捨てるかのように進めます。 ストイックな音楽が全開。 オケも気合入れて前に前にと進めてゆく感じかな。 独唱ではバリトン、声量もあって豊かな響きがが素晴らしかったですね。
力強い響きの合唱団、学生さんの声が混ざり合って多彩で立体的な響きなんですが、例年以上に纏まっていたかなぁ、昨年など「パワー一辺倒ではない素晴しい合唱を」などと書きましたが、今年はさらにパワーアップして奥行きがある合唱を堪能しました。
フィナーレ、ピッコロやトランペットなどが突き抜けてくる華麗な響きは例年どおりで熱くなります。 ピッコロは今年も艶やかでいい音色でしたね。 そして合唱とオーケストラが一丸となった圧巻の演奏での幕切れ。 今年は例年より真摯で前向きな演奏であったように感じました。
今年は緑色のルミカライトを振りながら歌う「蛍の光」ではなく、ちょっと手持無沙汰な感じもしましたが、「蛍の光」を歌ってのお開き。 今年も素晴らしい演奏会にお招きいただき、有難うございました。