一筋縄ではいかないショスターコヴィチの交響曲第9番、いつもながらの新谷さんの意欲的な指揮に、オケも余裕を感じさせる集中力で応えた素晴らしい演奏でした。
ショスターコーヴィチの交響曲第9番。 第2次世界大戦の戦勝と、ベートーヴェンの第9のなぞられてショスタコーヴィチの第9と期待された音楽が、簡素でおどけたような音楽だったため、スターリンを揶揄したとも受け止めらた問題作です。 あまり一般には演奏されることのない曲でしょうが、個人的には好きな曲で、プロオケで2度ほど聴いた記憶もありますが、いずれも10年程前でした。 久しぶりに聴きたくて、吹田に足を伸ばしました。
指揮者の新谷さん、大きな動きでいつもながらの意欲的な指揮。 オケもこの指揮によく応えて、聴きやすいこの音楽の底に裏が一枚も二枚もありそうな感じをよく表現していたように思います。 金管の重量感もさることながら、木管楽器が大健闘。 深い音色のクラリネット、渋い響きのフルートも良かったし、最後はファゴットの響きが素晴らしかった。
弦楽器も、第1楽章のヴァイオリンのソロもやわらかな響き。 第2楽章では低弦のピチカートが深遠さもよく出していました。 素晴らしい集中力。 重心のある弦楽器の響きがベースになっているので、この曲の深遠さもよく表現できたのではないか、と思います。 だから、小馬鹿にしたような軽妙なソロも引立っていたように感じました。 とにかく、十二分に満足しました。
なおこれに先立って演奏されたフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲と、モーツァルトの交響曲第39番は、米山さんの指揮のもと、ちょっと落としたテンポで丁寧に繋ぐ演奏でした。 ともにやわらかなホルンの響きに、モーツァルトではタイミングよく打つトランペット、そして軽やかなティムパニの好演が光っていました。 正直、モーツァルトでの高音弦は少々生煮えのような感じで、やはり難しいなぁ、と思っていましたけれど。
でもショスタコーヴィチの素晴らしい演奏に、練習量の違いではないかと認識しました。 終わりよければすべて良し。 そんな演奏会でした(個人的に)。
-----
吹田市交響楽団 第69回定期演奏会
2010年9月18日(土) 18:00 吹田市文化会館メイシアター・大ホール
フンパーディンク: 「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲 (*)
モーツァルト: 交響曲第39番変ホ長調 (*)
ショスタコーヴィチ: 交響曲第9番変変ホ長調 op.70
(アンコール)ショスタコーヴィチ: 「ジャズ組曲」より第2ワルツ
指揮: 米山 信(*)、新谷 武
.