籾山和明さんのリードのもと、いずれの演奏もスマートでお洒落な演奏でしたけれど、サン=サーンスのオルガン交響曲では、熱気を伴ってしなっていましたね。 圧倒的なパワーで押し切るのではなく、華やかさを散りばめて、しなやかに演じきった上質な演奏に酔いました。
シンフォニーホールは超満員。 開演30分前に到着したのに、座席を引き換えたら、なんと補助席でしかも1階席後方で後ろから3列目。 1階の後方には立ち見の方も鈴なりとなり、開演が定刻よりも15分ちょっと遅れるというハプニングも。 立ち見はオケ関係者でしょうね、若い人が多くて熱気が渦巻いていました。
演奏は、そんな熱気ももちろん孕んでいますけれど、スマートで上品な響き、という印象のほうが強かったですね。 冒頭のドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、コンパクトに振って進める籾山さんの指揮のもと、軽やかで活き活きとした旋律が滑るように流れてゆきました。 しかもどの楽器も柔らかく響きます。 中盤のコンミスのソロも静謐な感じで見事でした。 このあたり、素敵な響きが醸し出されて、ほんと素敵だったなぁ。 そしてフィナーレ、ここでは低音金管楽器の艶のある響きをシャープに畳み掛けてお洒落でカッコよく決めた着地。 うん、と唸りました。
そして中プロのフォーレの組曲「マスクとベルガマスク」、フランス音楽のエスプリが漂うしなやかな演奏は、とても馴染みやすい演奏でもありました。 正直、フランス音楽って苦手なのですけれど、推進力もあって、実に分かりやすくて、すっ〜と身体に入ってくるよう。 ちゃんとツボを抑えているので集中力が途切れないのでしょうね。 これも指揮者の籾山さんによるところ大でしょう。 上体のみをしなやかに使ってコンパクトに振る棒は、素人が見ていてもとても分かりやすい感じがします。 当然、オケもこれにしっかりと応えていて、軽やかな響きを連綿と連ね、お洒落で素敵な演奏として応えていました。 素敵な時間が流れていました。
休憩を挟み、いよいよメインのサン=サーンスのオルガン交響曲。 息を飲むような清楚な序奏に続き、さっと振って入った主題はしなるよう。 そして強弱の響きをフェードさせて進める演奏は、これまでと同じくスマートなのですが、熱気を多く孕んでいますが、横に拡がるような上品な響きは最後まで失われません。 丁寧に振って進める籾山さん、クライマックスになってもオルガンとオケの響きを見事に調和させ、落ち着いた色彩感による華やかさも散りばめ、祝祭ムードを醸し出します。 力で強引に押し切るようなところは微塵もなく、最後の最後まで手綱をしっかりと保ち、オケをしなやかに歌わせた演奏。 響きの隙間を綺麗に埋めた演奏は、とても上品で美しいものでした。 素敵でした。