室内楽的な纏まりの良さと見晴らしの良さ、それに息遣いまで聞こえてきそうな想いも載せた演奏に感動しました。
ならチェンバーは、奈良市が市制90周年を記念して結成した団体で、アンサンブル編成を主とした室内楽コンサート。 そしてそれを拡大した室内オーケストラ編成でのコンサートと、2通りの形態で演奏会活動を続けています。 そして今回が第73回の定期演奏会であり、かつ20周年記念特別演奏とのこと、これは聴き逃すわけにはいきません。
ところでこの団体を始めて聴いたのが、2000年6月17日の第54回定期演奏会。 本日と同じく今村能さん指揮による演奏会でした。 しかも、パーセル、ディーリアス、ウォーロック、エルガー、そしてブリテンという、英国音楽フリークには垂涎のプログラム。 おまけに低価格(1,000円)ですからね、以来、出来る限り聴くようにしていますが、当初は年4回あった演奏会も数が減り、前回は1年前、年1回のペースにまで落ちてしまっています。 財政難とはいえ淋しい限りですが、演奏はそんな逆境を跳ね返すような、素晴らしい演奏でした。

そして2曲目、オーディションで選ばれた若井亜妃子さんをソリストに据えたモーツァルトのピアノ協奏曲第23番。 こちたも想いのよく載った演奏に目を見張りました。 岩井さん、京都市立芸術大学4年在学中とのことですが、しなやかなタッチはモーツァルトにぴったりで、また演奏している姿は内田光子さんを思い出させるような入魂の演奏。 ただし内田さんのような鬼気迫るような怖さはなく、若い女性らしい想いを込めた演奏で会場を魅了していました。 演奏終了後の初々しさと、演奏中の想いの深さ、そのギャップもまた魅力的。 素晴らしい才能にも酔わされた演奏でもありました。
メインは友の会メンバーのアンケートによって選らばれたベートーヴェンの交響曲第7番。 自分も友の会メンバーですが(投票はしていませんが結構批判的な気持ちを持っていますけれど)、のだめブームを受けての選曲となっていますね。 しかし演奏は、そんなこととは全く無関係にキリッと引き締まったストイックな演奏でした。 管楽器奏者の方々は、関西を中心にした腕達者なフリーランスの方々、巧いのは当たり前ですが、自主性を保ちながらも、きちんと全体を纏めた指揮者の今村さんの力量によって、熱い演奏を堪能しました。
とくに終楽章のフィナーレ。 室内楽の延長のように熱く響き合った音楽を展開。 ぐっと溜め込んで、弾けるような終結もまた感動的でした。 奏者の方々の笑顔も垣間見えるほどの充実した演奏に惜しみない拍手を贈りました。
こんな感動的な演奏を目の当りに聴いていた市長さん、もっと演奏会の回数を増やしてください・・・そんな奏者の方々の想いも伝わったでしょうか。