
冒頭のボロディンの「中央アジアの草原にて」から情感あふれる木管、抑制の効いた金管、そして透明感の高い弦楽器による演奏に心奪われました。 指揮者の井村さんも、オケに全幅の信頼を寄せているのでしょうね、出を指示する程度で曲を進めてゆきました。 中央アジアの草原を渡る風を感じた演奏でした。
ブラームスのセレナーデ第2番、ずいぶん以前、大阪シンフォニカーの定期(T.ザンデルリンク指揮だったかしら)で聴いて以来でしょう。 こちらも爽やかな演奏でしたけど、井村さんの動きは大きくなり、押して引いてとオケを動かしていたようです。 陰影の強い楽章も明るさを感じたのも井村さんの資質によるところ大ではなかったかしら。
メインのシベリウスの交響曲第5番、こちらも緻密に構成された音楽でした。 井村さんの指揮は、より動きをましていましたけど、ダイナミックさよりも細かな指示をよく出ていたようです。 右手を波打たせるようにして表情を付けてゆき、オケも見事にそれを表現してゆきます。 ある種そんな気迫のこもった演奏でもありました。 真摯なシベリウスとでも言えばいいかしら。 そして、タイトで精度度の高いラスト。 バシっと見事に決めました。
しっかしこの地味な勝利といい、充分に解決しないクライマックスといい、どこかスッキリしない、これがシベリウスらしいところなんですよね。